第25話

 用意するのは熊肉、純バイオ油分1類オリーブオイル、マタギから頂いた鶏卵、小麦顆粒パン粉、合成乳、ニンニク、玉ねぎ、ナツメグ、ハーブ。食用植物やさいはこの田舎ならではで少量流通しているので意外にも種類が使える。ナツメグは滅茶苦茶高い。


「では始めよう」


「はい」「よろしく頼むわね」


 まずは熊肉をミンチにする。そしてつなぎのパン粉を入れながら混ぜ合わせる。熊の肉は臭みが強いため、生姜などの薬味を加える必要があるが香草で代用する。


 さらに混ぜ合わせ、空気を抜き丸めていく。ロイは苦戦しているが、料理に慣れている三人は器用にハンバーグを形成していく。


「よし。出来たぞ」


 シゲが四つの肉塊をサランラップに乗せる。


「じゃあ後は焼くわね」


「わかった」


 彩がフライパンに脂を引いて、丸めた肉を乗せる。


 ジュワァと音を立てて焼けていき、香ばしい匂いが立ち込める。


「良い匂い……」


「やはりジビエは最高だ」


中まで火を通したら完成だ。


「出来上がりました」


 皿に盛り付けて食卓に並べる。


「いただきます」と声を上げて食べ始める。


「ん?これは美味い。大味になると思ったが野生本来の旨味が出ている」


 シゲさんが感心したように言う。俺も覚悟を決めて、一口。




 ハンバーグからは肉汁が溢れ、ジュワっと口の中で旨味が広がる。ブラックペッパーも薫り高く、香草の独特の鼻にツンとくる香りとマッチしている。




「初めて食べる味だ……」


「えぇ、とてもおいしいわ」


「美味しいですね」


 食事を終え食器を流しに置いていく。洗い物をこなしていく。今後もこのキッチンは使っていくかもしれないな。ふとそんなことを考えているとシゲさんが話しかけてくる。


「いやぁ、それでコケモモは捌けそうかい?もし無理そうならこちらでも考えるが」


「そうですね。でも何とかなると思います。」


「おお!それはよかった。」


 シゲさんは大げさに喜ぶ。


「お礼と言っては何ですが、今日は夕食を作っていきたいのですが、何が良いでしょうか?」


「うーん。そうねぇ。ステーキとかお願いできるかしら」


「わかりました。シゲさんは何かリクエストありますか」


「じゃあ俺も熊肉のステーキが良いかな……。お前さん、護衛料金がチャラになると思ってやしねえか?」


 ギクッ!!


「バレてました?」


「ああ、簡単にバレてるぞ」


「……あの!ロイさん!仕事の一環での事故ですし、こちらで払いましょうか?」


「いや。それには及ばないよ。俺が先走っちゃったし、どうにかして払うよ」


「そうですか……」


 雫さんに心配をかけてしまっている。頑張れ俺!!今後は借金の返済も考えるんだぞ!!

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