第24話

 車を走らせてしばらく、山を下りて舗装された道路に出る。日が昇り、俺たちの目を刺す。そのまま、市街地に入りさらに1時間、牧場につく。砂利の上に駐車しようとした所で、デカい影が見える。


 熊の死体だ。ドローンで送られてきたんだろう。車を降りたシゲさんが下のシートごと引きずって運ぶ。門から入ってすぐの建物は研究所であり、それ以外は草が広がっている。上を見ると巨大なドームの内部にいることがわかる。


「お疲れ様」

 シゲさんに労われる。


「いえ、こちらこそ助かりました。」

「気にすることはないさ。ところで熊はどこに置けば良いかな」

「そうですね。裏手にお願いします」

「わかった」

「愛しのダーリン。熊はいつ頃食べられるようになるのかしら」

「そうだなぁ。あと1時間くらいかかるんじゃないかな。今日は少しだけにしておいて捌いて冷凍しておこう」

「わかりましたわ」

「雫ちゃんも手伝ってくれるかい」

「もちろんです」

「ありがとう。それでは行こうか」


 熊を解体していく。リンパ腺は腫れていないので恐らく病気などは持っていないだろう。まずは皮を剥ぐ。その後、内臓を取り出す。心臓や肝臓などだ。


 次に肉を切り分けるのだが、これがまた大変な作業なのだ。なんせ4メートル級、マタギ衆に手伝って貰えば良かったんじゃないかなと思いつつ、シゲさんと一緒に解体していく。骨付き肉が出来上がる。


「うむ。見事だ」

「そう言って頂けると嬉しいです」

「しかし、よくこんな大きな熊を前にして死ななかったよな」

「運が良かったんですよ」

「そうか。後で本当の事を教えてくれよ」

 シゲさんはそれ以上聞かなかった。


「よし、これで終わりだな。」

「ありがとうございました。」

「いや、こっちもいい運動になったよ。」

「そうですか...改めてありがとうございました」


 その後、6回に分けて研究室の冷蔵庫に熊肉をしまう。大量の肉を往復して運ぶ。


「さあ、これからどう調理するかね」


 シゲさんが呟く。


「ハンバーグなんてどうかしら、香草はマタギの人たちに貰っているから、それで味を整えればきっと美味しいと思うのだけれど」


 彩さんが提案してくれる。ハンバーグか。vuでも熊肉は滅多に口にしない。どのような出来上がりになるかは、未知数だが他に良いアイデアがないのでハンバーグにするのはありかもしれない。


「それはいい考えだね。早速作ろうか」

「えぇ」

「私達も手伝います」

 雫さんが申し出る。


「あら、嬉しいわ。じゃあ一緒に作りましょう」


 俺達は事務所に併設されている厨房に向かうのだった。

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