第16話

 研究所を出た後、雫と別れたロイは喫茶店に帰る。


「ただいまー」


「おかえりなさい」


 クロエとが出迎えてくれる。マスターは恐らく自室でvuで仕事してるだろう。カウンターに座りタブレットを開く。コケモモの経過観察のデータを確認している。明日の昼には孵化しそうだな。


「今日はお疲れ様でした。何か食べますか?」


 クロエが問いかけてくる。


「いや大丈夫。なんかお腹いっぱいなんだよね。珈琲貰えるかな」


「かしこまりました」


「今日は雫さんとお出かけしてたんですか?」


「うん。温泉行ってきたんだ」


「いいなぁ。私も行きたいです」


「また今度連れて行ってあげるよ」


「わぁ!嬉しい!……お待たせしました」


「ありがとう」


 カウンターに珈琲が置かれる。芳ばしい香りが広がる。


「そういえばさっきから気になってたんですけど、そのタブレットで何を見ているんですか」


「ああ、コケモモの様子を見てたんだよ」


「へぇ。凄いですね。植物育てるアプリなんてあるんですね」


「違うよ。これキメラの生育状況を管理してるんだ」


「え?」


 クロエは目を丸くする。ロイは今日のことをざっくりと説明する。


「なるほど、コケモモですか。鶏肉ってあまり食べたことないですね」


 少し興味深そうに聞いている。


「基本的な培養肉より脂っぽいかな」


 ついでにレモンを品種改良した旨を話すと、 クロエは驚きの表情を見せる。ロイはタブレットを操作し、 スクリーンショットしたものを彼女に見せる。


「これは……レモンですか。初めて見たんですけど、こんなに大きなサイズでしたっけ。……美味しいんですか?」


「甘くて本当に美味しいよ。今度持ってこようか?」


「いいんですか!?楽しみにしてます」


「あ、もう10時か。そろそろ寝るね。お休み」


 そう言ってロイは自分の部屋に戻る。扉を開けベッドに倒れ込むとそのまま深い眠りに落ちていった。



———次の日 いつものように目覚める。窓から光が差し込み、鳥の鳴き声が聞こえる。ベッドから起き上がりカーテンを開ける。


「vuにでも行くか~~」


 そういってベットに潜りvuにログインする。意識が遠ざかり、体が浮上するような感覚に陥る。気づくと真っ白な空間にいる。


 いつも通りの手順で「黒の輪」に飛ぶ。


「ロイっち~~~遅いよ~~~~」


「エミリさん。どうも、おはようございます。」


 この赤髪のギャルはエミリ。本名は別にあるのだがエミリを名乗っている。彼女は巷で有名な凄腕の賞金稼バウンティハンターぎだ。顔立ちが整っており、スタイルも良い。


 しかし残念なことに胸が無い。

 本人曰く貧乳はステータスらしい。


 ロイとマスターには気さくだが、それ以外の男には厳しい。


 冗長だが2300年”オタクに優しいギャル”概念は消失している。オタクとは過去の産物であり、ギャルも同様だ。


 服装は黒を基調とした軍服を身に纏っている。黒いブーツに太ももが露出する赤いスカート。ちなみに武器は二丁拳銃である。彼女の愛銃の二つ名は〈魔弾〉。彼女にとって銃は体の一部であり、生活必需品である。彼女もまた実弾至上主義者なのだが、片方の銃は熱線ブラスター系である。彼女が銃口を向けるとどんなものでもハチの巣だ。


 エミリとはとある事件で知り合った。ロイは彼女に恩義を感じている。


 エミリはロイの数少ない友人の一人でもある。エミリ曰く、賞金首を捕まえて大金を手に入れるのが趣味らしい。


 彼女はロイを気に入っており、ロイの人柄と技術を高く評価している。ロイ自身も彼女のことは信頼しており、仕事で必要な情報を提供したりしている。


 モクテルが出される。朝っぱらから電脳酔いはしたくない。


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