第6話 歓迎会

 歓迎会は賑やかに始まった。目の前に広がる豪華な料理の数々。サラダからシチューまで、どれもこれも美味しそうだ。



 この料理は町で栽培されている物を使っている。味付けは非常にシンプルだ。急に歓迎会をすることになったが馴染みの客は五人ほど集まった。



「それでは、改めまして。ロイさん。ようこそ、茨ヶ丘いばらがおかへ。新しい仲間に乾杯」



「「「乾杯!!」」」



 全員でグラスを合わせる。今の時代お酒はかなり希少だが、茨ヶ丘では伝統的な地酒として作られている。



 それが地ビール『日陰』。味はとても濃厚で深みがあり、喉越しが良く、後味が良い。まるでワインのような風味だ。



「こんな若い子がこんな田舎に来るなんて世の中面白ぇもんだ」



 そう話しかけてきた好々爺は身長が180センチを超え、全身を義体サイバネ化している老人。腰には刀らしきものを帯刀している。マスター以上に只者ではない物々しい雰囲気を纏っている。



「彼は井下 茂樹さん。みんなはシゲさんって呼んでいるよ」



「よろしくお願いします」



「そんなかしこまらなくていい。わしはただの隠居老人だ」



「ははは……」



 見た目は70歳くらいに見える。マスターの話では、60年前の大戦の時には前線で戦っていたらしく、当時は大佐だったらしい。



 今でも現役バリバリらしいと言っているが。流石にそれは誇張してるだろう。



「まあお爺さんが何言っているの」


 

 そう横から話に入ってきたのは井下彩さん。見た目は20歳ほどで若々しい。



 シゲさんのお孫さんかと思ったのだが、まさかの妻という事だ。驚きのあまり年齢を聞いてしまった。どの時代も女性に年齢を聞くのは失礼だから小突かれた。



 なんとシゲさんより年上らしい。彩さんは軍の実験で老化が止まっているそうだ。他にも様々な能力を持っているらしいが怖いので詳細は聞かなかった。



「あらあら、まあまあ!貴方、私のこと知りたいの?なら私がたっぷり教えてあげるわ!まず、私の身体の構造は……」



「夫の前でそんなことしないでくれよ」



「あらあら、私はあなたが一番よ」


 

 そう言ってシゲさんの頬にキスをする。なんともお熱いことで……



 クロエさんと彩さんが二人仲良くキッチンにいる、今どき料理が出来るのは一部のレストランの料理人達くらいだ。



「お待たせしました!!!」



 勢いよく扉が開く。



「仕事が立て込んでてすみません!!あ、この人が私と『町おこし』をしてくれるんですか!!!」



 そこにいたのは傾国の美女。という形容が正しいような綺麗な人だった。髪はサラリとした黒髪ロングで、目は大きく、肌も透き通るように白い。モデルのような体つきをしている。一気に距離を詰められ手を握られる。



「初めまして。狭間ロイと申します」



「私は茨ヶ丘 雫と言います」




 心が高鳴っているのを隠し、冷静な振る舞いで挨拶をする。



「どうぞよろしくお願いします」



 彼女は丁寧にお辞儀をして微笑む。



「はい!こちらこそよろしくお願いします」



 満面の笑みで握手を求める彼女。可愛い。この笑顔を見ただけでこの町に引っ越してきて良かったと思える。



「ロイさん。この子はこの辺りで一番の美形と言われていてね。市長の娘さんだからあまりメディアには出ないけどね」



 マスターが小声で話しかけてくる。確かに……かなりレベルが高い。vuで見た芸能人や女優にも引けを取らない。いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。



「それでは改めて乾杯!」



 マスターの音頭で再び乾杯し、歓迎会は盛り上がる。



◆◆◆◆



「それじゃ、ロイ君。今日はゆっくり休んで明日からよろしく頼むよ」



 シゲさん達を見送った後、部屋のベッドにダイブし、これからの事を考える。



(まさかvu繋がりから、こんないい人達と出会えるとはな)



 そんな事を考えているうちに旅の疲れからか、すぐに眠りについてしまった。



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