第4話
次にスクリーンに出てきたは男の顔。私が一番嫌いだった職員の男の人が見えた。なんでこいつなんだろう。大嫌いだった。若い男の人で、すごい強い香水つけてるの。なんかちゃらちゃらしてて、こいつ私たちをバカにしてた。すごい色々話しかけてくるの。みんなえらいね、こんな規則正しい生活を毎日送れるなんて。習い事いけなくて残念だね。俺でよかったら勉強教えてあげようか。あれで言葉のとげを隠したつもりか。「親がいなくてかわいそうだね」暗にそういっていることがわからないほど、私たちはバカじゃない。むしろ、誰よりも敏感にそれを感じるのに。早く話を終わらせたくて、私はただニコニコしていた。匂いを吸いたくなくて、呼吸を止めないといけなかったから大変。時々長くなって口で呼吸したら、匂いにも味があるんじゃないかってくらいムアッと口の中に広がる香りに吐き気がした。
話が終わったら走って離れた。息が荒かったから、美香が
またあの下水に捕まったんだ?
って言われた。下水、ってあだ名で呼んでた。臭いから。そういう時は私は美香に抱きついた。美香が
ちょっと、匂いが移ってる!臭い!
って逃げるから楽しくて。
美香いい匂い
って言ったら、
うちらは同じ匂いでしょう。同じとこ住んでるんだから
っていうの。そして二人でふふって笑うの。美香に抱きつくとあったかさが気持ちよかった。時々悔しくて仕方のない時は、何も言わずにぎゅっと美香に抱きついた。そんな日の後は、美香と下水が口喧嘩していた。私、何言ってるかわからなくてぽかんとしていたな。下水は割とすぐいなくなった。
街に平和が訪れた
って美香と笑った。美香に抱きついた記憶、下水と口喧嘩してくれた時、最後に美香と笑った時、そのすべての欠片がキラキラと出てきた。
ありがとう。美香。本当に。それを美香に言ったことはあったかな。美香とは大事な部分を共有できている気がしていた。きっと言っても「何、急に気持ち悪い。」って言うよね。そうだよね?
答えが知りたい。
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