第353話 伊吹賈南と焔学園二年一組の連携

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「こ、これは空中に、麻痺毒のあるイバラを巻きつけた鉄線を張り詰めているのか?」

「仮にも勇者パーティに向かってなんという暴挙か!」

「アハハ、吸血鬼が何をいう? お前達のような搦手からめて使いを相手に、正面から挑むは骨頂こっちょう。先の戦いでは殺さずに戦えと言われたから加減したが、今回は気遣い無用で行くぞ、出雲いずも桃太とうた!」


 テロリスト団体〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟を統べる当主、七罪ななつみ業夢ぎょうむが〝影の使役術シャドーサーバント〟を用いて攻撃したことで、昆布のように艶のない黒髪の少女、伊吹いぶき賈南かなんと、赤い髪を二つのお団子状ダブルシニョンにまとめた少女、六辻ろくつじうたが〝吸血眷属モロイ〟部隊に仕掛けた罠の正体が明らかになった。


「賈南さんも詠さんも凄い。それに業夢さんも、あの一瞬で光学迷彩だと見抜いたのか。底知れない」

「ぐひゅひゅ、これが年の功というものよ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたは右手に巻きつけた衝撃の刃で、長い舌を振り回す業夢が振るう影の刃と切り結びながら、感嘆の声をあげる。


「おかしいな。この吸血鬼ジジイ、なんで声をあげるだけで、すぐに動かなかった? それとも、〝この場所で戦わなきゃいけない理由〟でもあるのか?」

「……最近は腰が痛くてのう」


 その一方で、桃太の隣で戦う金髪の長身少年、五馬いつまがいは、若返ったはずの業夢が先ほどから同じ場所で自分たちの相手に専念し、全く移動しないことを不審がっていた。


「コケーッ、光で隠していたのがバレてしまいましたわーっ」

「なあに、カラスどもを逃してしまえばこっちのものよ。今さら見つかったところで痛くもかゆくもないわあ!」


 桃太と乂が対照的な反応を示していた頃、詠と賈南もまた、正反対の顔色を浮かべていた。

 年齢にしてはグラマラスな詠がニワトリのような悲鳴をあげる反面、色気のない賈南は余裕たっぷりにほくそ笑む。


「毒には毒をぶつけるのが定石! この谷はキノコやら草花が生い茂っているから、毒の素材も豊富。わらわ祖平そひら遠亜とあの力を合わせれば、まさしく鬼に金棒よっ」

「有るものを組み合わせて、最大の効果を発揮する賈南さんのアイデアは勉強になる」


 賈南は自信満々で言い放ち、白衣を着た少女、祖平そひら遠亜とあも身につけて白衣をひるがえし、分厚い瓶底メガネをキラリと輝かせる。


「こ、小癪こしゃくな真似をっ。〝死を呼ぶ鐘ストリゴイ・ベル〟の音は聞こえているだろうに」

「アハハ、呪いの鈴音など、妾にとっては環境音楽に等しい。うかうかすると眠ってしまいそうじゃ。ほれこの通り……」

「「戦場で寝るなよ」」


 賈南が鼻ちょうちんを作って寝息をたてるや、あまりの傍若無人ぼうじゃくぶじんさに両陣営からツッコミが入る。


「こうまで馬鹿にされては捨ておけん!」

「やろうぶっ殺してやらああ!」


 索井ら、吸血眷属モロイ隊が憎悪こもった視線で賈南を睨みつけ、昆虫のような装甲で強化した肉体が傷つくのもいとわず、力任せに鋼糸を引きちぎって駆け出した。


「おうおうやるのおっ。鬼さんこちら手の鳴る方へっ」


 が賈南が拍手しながら囃し立てた直後、〝吸血眷属モロイ〟達の足元が、熱した砂糖菓子のようにぐしゃりと崩れた。


「があああっ、落とし穴だとおおっ」

「異界迷宮産の果実を使った地雷だけではなく、こんな大掛かりな仕掛けまで、いったいいつ用意したというのです?」

「それは勿論、出雲桃太がカラスどもの竜巻から逃れるために使った穴に、やなぎ心紺ここんの砂型兵装、〝砂丘デューン〟で蓋をしたのさ」

「さっすが賈南ちゃんっ。やったね!」

「BUNOOー!」


 変幻自在の〝砂丘デューン〟を操るサイドポニーの目立つ少女、やなぎ心紺ここんと、彼女を鞍上に乗せた八本足の虎に似た式鬼しきおにブンオーが歓声をあげる。


「アハハ、啜血鬼せつけつきナハツェーラーだか、吸血眷属モロイだか知らんが、欲望に正直なのはともかく、そうも視野狭窄しやきょうさくでは生きていてつまらんだろう。ざーこざこざこ、雑魚吸血鬼!」


――――――――――

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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https://kakuyomu.jp/works/16817139557990913699#reviews%0A

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