第351話 ヤタガラスの救援!?

351


「紗雨姫と学友がピンチだ。奮い立て!」

「我々で盾になる」

「せめて牽制だけでもっ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたと冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟が、七罪ななつみ業夢ぎょうむ率いるテロリスト団体、〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟によって窮地に陥ったとき――。

 前髪の長い細身の女隊長、葉桜はざくら千隼ちはやをはじめとする異世界クマ国の防諜部隊ヤタガラスが、敬愛する主君の娘である建速紗雨とその友人を庇うため、勇敢にも悪鬼達の前へ立ちはだかった。


「たとえ世界の違う異世界人。地球人であっても、紗雨姫を大事に思う心は同じ!」

「「葉桜隊長の言う通りだ。クマ防諜部隊ヤタガラスの意地を見せるぞ」」


 千隼達は、先ほどの桃太達との戦いで疲労して術も使えず、破けた法衣に折れた錫杖といったボロボロになった装備ながらも、勇猛果敢に〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟の特殊部隊〝吸血眷属モロイ〟へ白兵戦を挑んだ。


「葉桜さんっ」

「サメーっ。ありがとサメーッ」


 桃太も、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速たけはや紗雨さあめも感極まった声をあげ……


「わたし達を守ってくれるのですか。総員後退して、隊列を組み直します」

「あいつら、おれ達のためにっ」

「恩にきるっ」


 焔学園二年一組の担任教師である矢上遥花は、クラスの生徒達を率いて辛くも死地を逃れた。


「殴り合ったらライバルだって、そんな理屈知るかよお。多少殴られたところで、影の使役術シャドーサーバントで奪えば、問題ないって寸法よお」

「弱い者が青臭いことを。そんなだから、簡単に騙されるのですよ。敵の力を奪い、自らの力を強くする。これぞ兵法というものでしょう!」

「「き、効かないだって?」」


 しかし、天狗達の猛攻は、索井靖貧や郅屋豊輔らにわずかな手傷を負わせたものの、影の剣を受けるや、瞬く間に回復されてしまう。

 そればかりか、若返るにとどまらず筋肉が膨れ上がった悪鬼達が振るう影の武器によって、頑丈な錫杖ばかりか、手足すらバキバキと音を立てて折られ、背の翼を引きちぎられ、踏みつけにされた。


「ギャハハ、よりどりみどりだ。異界の鳥でも血はうめえなあ」

「フフフ、鍛え上げた技術と全盛期の肉体に加え、業夢様からいただいた力があれば、クマ国の防諜部隊とて敵ではないっ!」

「「うわあああ」」

 

 七罪業夢より与えられた怪力と、赤黒く染まった人間離れした肉体で鴉天狗を蹴散らす様は、確かに〝吸血眷属モロイ〟の役名に相応しいだろう。


「くそっ。このままじゃ葉桜さん達が全滅してしまう。乂、忍者への変身はできないのか?」

「ダァムイット(ちくしょう)。業夢の〝死を呼ぶ鐘ストリゴイ・ベル〟との気持ち悪い音と、郅屋しつやとかいう吸血眷属モロイがばら撒く霜に邪魔されてるのか、このポンコツ短剣が応じてくれないんだ。オレはこんなに弱かったのか?」

 

 桃太と乂すら弱音を吐くまさに絶対絶命の窮地――。


「アハハ、出雲桃太も五馬乂も情けないのお。セグンダに負けて以来、負け癖でもついたのか?」


 そんな中、たった一人だけ高笑いをあげる者がいた。


「カムロの部下であるカラスどもが痛めつけられるのは小気味よいが、今のわらわは焔学園二年一組の一員。光栄に思えよ、この伊吹いぶき賈南かなんがクマ国に手を貸してやる」


――――――――――

あとがき

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