第三部/第二章 八大勇者パーティの興亡と刺客

第205話 臨時授業 八大勇者パーティの誕生

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遥花はるか先生。俺はリッキーの、親友の仇を討つために、テロリスト団体となった〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟と戦ったことにも、啓介さんを止めて、リウちゃんを助け出すために〝S・E・Iセイクリッド・エターナル・インフィニティ〟を倒したことにも、後悔はありません。六辻ろくつじうたさんのお家騒動は、また悲劇に繋がるかも知れない。だから、受け身になっちゃ駄目なんだ。八大勇者パーティは今、いったいどうなっているのですか?」

紗雨さあめ桃太とうたおにーさんについてくサメエ。だから一緒に教えて欲しいサメエ」


 気絶した赤髪の少女、六辻ろくつじうたを背負う少年、出雲いずも桃太と、彼の傍に立つ銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速たけはや紗雨さあめの真剣な態度に押され、担任教師の矢上やがみ遥花はるかは栗色の髪をリボンで結び直した。


「わかりました。キャンプ地に着くまで、八大勇者パーティの現状について臨時授業を行います。まずは軽く復習から」


 全ては、半世紀以上前。地球が冷戦と呼ばれる緊張状態のただ中にあった頃……。

 北の軍事国家が、新型爆弾実験で異世界へ繋がる門を開けたことから始まった。

 冷戦時代、俗に〝東側諸国〟に分類された国々は、異界迷宮カクリヨとの接触を機に内紛ないふんを起こして滅亡し、滅んだ国々の大地は、悪鬼羅刹あっきらせつの如きモンスターがうごめく魔境と化した。

 残された米国や日本といった西側諸国は、元東側国家と異世界から攻め寄せる怪物から国土を守るべく、熾烈しれつな戦いを繰り広げた。


「知っての通り、異界迷宮カクリヨにむモンスターには、銃や爆弾といった現代兵器が一切通用しません。人類は、剣や槍といった原始的な武器で怪物との交戦を余儀よぎなくされました」


 旧西側諸国は、膨大ぼうだいな人命をすりつぶしながら研究を続け、やがて異界迷宮カクリヨという、〝異世界から得られる資源〟を用いることで、超常的な力を得ることに成功する。それこそが〝鬼の力〟だ。


「人類が〝鬼の力〟によるモンスターへの対抗策を確立した事で、近代兵器の使えない軍隊に代わり、迷宮探索を生業なりわいとする冒険者が、国土防衛と資源確保の主流となりました。日本の場合、その第一人者となったのが、孝恵たかよし校長の父君である英雄、獅子央ししおうほむら様です」


 獅子央焔は迷宮探索を進め、日本に高度経済成長をもたらすと同時に、同胞達の生命を守り、地位を向上させることを目的に、冒険者組合を立ち上げた。

 やがて焔が現役を離れ、組織運営に注力し始めた頃、彼の偉業を継ぐべく、親類や戦友達が組織した八つの大規模パーティを、八大勇者パーティという。


「焔様は、自分の後を継ぐ八つのパーティに、それぞれ強力な〝鬼神具〟を分け与え、特別仲の悪かった四鳴しめい家を除いて、〝勇者の秘奥ひおう〟という特殊な技術を伝えました」

「えっと、確か……、

 一葉いちは家には、モンスターを呪符じゅふに変えて使役する〝式鬼しきおに術〟と、時空間を隔てる〝結界けっかい術〟。

 二河にかわ家は、肉体の一部、あるいは全部を獣などに変える〝変身術〟。

 三縞みしま家は、義手や義足に埋め込むことで、迷宮内部でも機械を作動させる〝サイボーグ技術〟。

 五馬いつま家は、〝風を操る武術〟が〝勇者の秘奥ひおう〟と呼ばれているんですよね?」

「サメエ。カムロのジイチャンも色々悩んでいるけど、強い力はちゃんと管理しないと危ないサメエ。焔さんは、戦力をまとめるために、あえて勇者パーティを特別扱いしたんだサメエ?」


 桃太と紗雨の質問に、遥花は頷いた。


「その通りです。獅子央ししおうほむら様の期待に応え、八大勇者パーティは約二〇年にわたって日本の冒険者の中心となり、国土を守って繁栄を支えました。しかし、時の流れは彼らを変質させた」


 人の心を狂わせる〝鬼の力〟に飲まれたか、それとも身に過ぎた野心に焼かれたか……。

 やがて八大勇者パーティの大半が国益でなく、各々の身勝手な私欲を満たすために利益の独占をはかり、あるいは独裁政権の樹立じゅりつを目論む事になる。


――――――――――

あとがき

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