第174話 新たなる力、砂丘と胡蝶蘭

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 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうた黒騎士くろきしを、灰色鎧を着たテロリストと赤い式鬼の軍勢から守るべく……。

 サイドポニーが目立つ少女、やなぎ心紺ここんは、蒸気鎧の上に身につけた〝砂丘デューン〟と名付けられた紺色のマントを、砂状のパーツに分解、その名のとおり丘を連想させる程に広げた。


「戦闘機能選択、モード〝剣牙ソードファング〟。ブンオー、デューン、攻めるよ!」

「BUNOOO!」


 心紺がブンオーに乗って岩地の水辺を駆けると、広がった濃紺の砂はより集まって、二〇本の剣を形成。突出していた小隊めがけて飛翔する。


「全方位からの攻撃、受けてみなよ」

「す、砂が武器になっただとおお!?」

 

 心紺が手綱を握る琥珀色の八本足の虎、ブンオーは、面識のある須口すぐち純怜すみれら〝鋼騎士ギガース〟と、彼女達が騎乗する〝八足虎はっそくこ〟の小隊に正面から突進。


「AAA!?」

「GRUU!?」


 ブンオーの爪で正面から切り伏せつつ、砂剣二〇本で無防備な背後や横腹を撃ち抜き、須口すぐち純怜すみれら〝鋼騎士ギガース〟を操る、啓介の糸を断って、戦闘不能に追い込んだ。


「えへへ。今の技は、純怜すみれさん達をアンタの鬼神具、〝百腕鬼ヘカトンケイルの縄〟から解放する為に編み出したんだよ……ってヤバ!?」

「大丈夫。出雲君と黒騎士が守ってくれる」


 ブンオーが着地した瞬間を狙い、別の〝鋼騎士ギガース〟と〝八足虎はっそくこ〟の小隊が斧槍で切りこむものの。


「柳さん、凄いね! こっちの小隊は任せて」

「!!」


 桃太が衝撃波を伸ばした拳で灰色の鬼を叩きのめし、黒騎士がバイクの車体と車輪を使って赤い虎を弾き飛ばす。


「「いえーい!」」


 合流した桃太と心紺、遠亜はハイタッチを交わし、黒騎士は無言で親指を立てた。


「あれが柳の新しい力か」

砂丘デューンは、変幻自在の変形が可能な無人操作兵器ドローンの一種か、よく使いこなしている」

「強力な〝鋼騎士〟と〝式鬼〟がまるで藁人形のようだ。我々も反撃するぞ!」


 活躍に触発された焔学園二年一組の研修生と、勇者パーティ〝N・A・G・Aニュー・アカデミック・グローリー・エイジ〟が、勇気づけられたかのように反攻を開始。


「俺と黒騎士は右から行く。柳さんと祖平さんは左をお願いっ」

「任せて!」


 桃太&黒騎士と、心紺&遠亜&ブンオーも、勢いに乗って攻勢に出た。


「ちいい。偽勇者はともかく、裏切り者とメガネ女が思い上がるな。たかが空飛ぶ剣如き、驚くほどではない!」


 啓介は、比較的弱そうな心紺と遠亜を排除しようと〝鋼騎士ギガース〟を操り、何十本という槍を投げつけた。


「そうくると思った。ブンオー、あっちへジャンプしてターン!!」

「BUNOOO!」


 心紺はブンオーと一緒に跳躍、投げ槍の大半を寄せ付けずにひらりひらりと蝶のように舞う。


「くそがああ、これだけの弾幕だ。避けられるものかよ」

「戦闘機能選択、モード〝盾爪シールドネイル〟。デューンは守って!」


 啓介は執拗に心紺達を追いかけ、〝鋼騎士〟による攻撃を続けたものの、濃紺色の砂剣二〇本は、四本一組で五枚の砂盾を作り上げ、槍の投擲とうてきを受け止めた。

 そうして防衛の役目を終えるや、デューンは再び砂の姿となって、心紺の元へ集いマントに戻る。


「なんだ、そのデタラメな武器はっ。もういい、何人死のうと構わん。式鬼ども、踏み潰せ!」


 啓介は、怒りのあまり青筋を立てながら赤い八本足の虎をけしかけるも……。


「出雲君も言っていたけれど、貴方は短気すぎて、予測が楽なんだ。咲け、胡蝶蘭こちょうらん!」


 心紺の背後に同乗する、分厚い瓶底メガネをかけた少女、祖平そひら遠亜とあが、自分の見せ場とばかりに白いスーツケースを取り出す。

 蘭の花が彫られた蓋があたかも花のように開き、タネを飛ばすようにカヤクバコノミを加工した地雷を周囲に敷き詰めた。


「「GAAAAA!?」」


 啓介が操る赤い八本足の虎。その最前列は、一心不乱に走っていたため避けきれず、地雷の連鎖に巻き込まれ、燃える紙クズとなって消えた。


「き、貴様ああっ。ふざけるなあっ」


――――――

あとがき

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