第48話 悪魔鰐との激闘

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「ああもう、ウゼエ。そうかザエボス、お前も空腹なんだな。もう男も女も関係ない、犯して殺して食らってやるよお。鬼術・三〇連魔団砲サーティ・レギオン!」


 伏胤ふせたね健造けんぞうが変じた悪魔ザエボスは、冠の付いた鬼面を歪めて笑みを作り、鰐皮わにがわに覆われた左半身から伸ばした腕で機械仕掛けの右半身を支え、拳銃から銃弾を嵐のように擊ちだした。


「いけない」

「先生、前へ出すぎです。うわあっ」


 遥花はるかがリボンの防壁を作ったものの弾幕に容赦なく削りとられ、桃太もまた右肩を撃ち抜かれて転倒した。


「そんな、拳銃が何発も発射できるなんておかしいだろ」

遠亜とあっち。わかったよ、銃弾の正体が。〝赤い霧〟と〝黒い雪〟だ」

心紺ここんちゃん。つまり〝鬼の力〟なの? 地球の常識なんて通用しなかったんだ」


 潰れたリーゼント少年の林魚はやしうお旋斧せんぶや、サイドポニー娘のやなぎ心紺ここん、ショートボブ少女の祖平そひら遠亜とあらも、銃弾の雨に飲み込まれた。


「ひょっとして、肉体の一部に取り込むことで性能を発揮するのは――銃器のような精密機械だけじゃないのか? 〝鬼神具きしんぐ〟は、ただ身につけるだけじゃなくて、肉体と融合することで真価を発揮するというのか!」

「桃太君は下がっていて。これ以上は、やらせません。わたしは、今度こそ生徒たちを守るんだ」


 矢上遥花は一足飛びに前へ飛び出し、ザエボスの攻撃から生徒全員をリボンで庇った。

 彼女の薄い緑と藍色のフリルワンピースに象牙色のタイトスカートはズタズタに裂かれ、真っ赤な血の一色に染まっている。


「守るだって? 弱い人間風情がイキがってるンじゃネエエ!」


 遥花の操る赤いリボン〝夜叉ヤクシニー羽衣はごろも〟と、悪魔ザエボスと一体化した〝和邇鮫ワニザメ皮衣かわごろも〟から生じた鞭が激突する。

 どちらも強大な力を宿す〝鬼神具きしんぐ〟だが、道具として使うのと、肉体と一体化するのでは出力に差があるらしく、リボンは鞭に一方的に破られてしまう。


「くううっ」

「ヒヒヒ、先生の肉ハ、美味ソウダア」


 ザエボスは左半身と一体化したワニの顎を開いて、遥花の豊かな胸を食いちぎった。


「先生!?」

「ギャハハハ、アレ?」


 次の瞬間。怪物が噛みついた女の身体が揺らぎ、パシャンと水になって散る。


「驚いたサメ? 紗雨はサメだから、変わり身の術だってお手のものサメエ。偽物のワニサメめ、これが本当のワニサメというものサメ!」

「ワニサメ論争はともかく、そんな術を使えたの!?」


 空飛ぶ白銀のサメが、とっさに本物の女教師をくわえて救出し、水で作ったおとりと入れ替えたのだ。

 

「紗雨ちゃん、助かった!」

「シャシャッ。オレ達の妹分もなかなかやるだろう? リボン女の味方をするのはシャクだが……。相棒、この短剣とオレを使え。〝鬼神具きしんぐ〟には、〝鬼神具きしんぐ〟だ。銃器と一体化だの、鬼の力と一体化だの、そんな腐った力が怖いものか。オレと相棒の友情を重ねて、一気に逆転と行こうじゃないか!」


 更にザエボスの意識が逸れた隙を突いて、黄金色のヘビが額に十字傷を刻まれた少年にびた短剣を手渡していた。

 桃太と乂は、女教師と彼女の生徒達をザエボスの魔手から救うべく疾走する。


「「舞台登場、役名変化チェーンジ――〝忍者〟。ヒアウィゴー!」」


――――――――

あとがき

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