第五章 鬼神具の脅威

第44話 C・H・Oの作戦と秘密

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 西暦西暦二〇X一年、一一月二五日。

 元勇者パーティ〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の副代表、鷹舟たかふね俊忠としただが、冒険者組合を牛耳る魔女、獅子央ししおう賈南かなん暗殺に失敗した日――。

 出雲いずも桃太とうた達は、ダンスで〝鬼の力〟をはらい、冒険者育成学校の同窓生達にかけられた洗脳を解いていた。


桃太とうた君、林魚はやしうお君達が教えてくれたカクリヨ内部の惨状と、クマ国で見た地上の戦禍を考えてみると、〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の作戦がわかってきたわ」

「遥花先生、それは本当ですか?」


 遥花は深く息を吸い込み、彼女自身を鼓舞するように、桃太を腕の中に抱きしめた。


「幹部の黒山くろやま犬斗けんとが率いる別働隊が異界兵器〝千曳ちびきの岩〟に生贄いけにえを捧げ――、

 凛音様がたくわえられた〝鬼の力〟で東京を砲撃して、政府の目を引きつけ――、

 その間に、鷹舟副代表が人工島〝楽陽らくよう区〟に乗り込んで、獅子央ししおう賈南かなん様を討つ――きっと、これが作戦の全貌ぜんぼうよ」

「「な、なんてことをっ!?」」


 遥花の生々しくも説得力のある推理を聞いて、柔らかな膨らみを前にした桃太も、自慢のリーゼントが解けたままの林魚ら研修生達も、一斉に悲鳴をあげた。

 

「遥花先生の推理が当たっているなら、〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の作戦には重大な欠点がある。リッキーを殺したアイツ、黒山くろやま犬斗けんとが、暴走しても止められない」

「そう、桃太君の言う通り。凛音様はきっと〝千曳ちびきの岩〟から動けないし、鷹舟副代表は地上よ。だから黒山が、お二人に代わって事実上のリーダーになってしまう」


 その時、ダーンという甲高い銃声が、真相到達を遮るかのように響き渡った。


「あーあ。せっかく俺と黒山サンの思い通りに操っていたのに、台無しにしやがって。劣等生ってやつはまるで腐ったミカンだな。カビが広がる前に皆殺しにしないとなあ!」

「この声は、伏胤ふせたねか?」


 新たな刺客、伏胤ふせたね健造けんぞうが追いついてきたのだ。


「発砲音!? 姿勢を低くするんだ!」

やなぎさん、祖平そひらちゃん、他の皆もわたしの後ろに隠れて!」


 桃太とうたは、耳をつん裂く高音が響くと同時に、恩師を抱いて青い葉の舞い散る山道に伏せ、遥花は守られつつも、フリルワンピースから無数のリボンを伸ばして生徒たちを守る盾を作った。

 サイドポニーの少女、やなぎ心紺ここん黒鬼術士ソーサラーも、〝鬼の力〟が生み出す氷や土で防壁を作って銃弾を阻み……。

 ショートボブの少女、祖平そひら遠亜とあ白鬼術士ヒーラーは、運悪く銃弾がかすめた負傷者に治療の光を当てた。


「サメっ!? クマ国と異界迷宮カクリヨじゃ、鉄砲みたいな精密機械は使えないはずサメ?」

「えーっと、凛音のパーティなら理由があったような。ああ、思い出せないっ」


 銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速たけはや紗雨さあめと、金髪の不良少年、五馬いつま乂は無事だったものの……、銃撃にショックを受けたのか、それぞれ白銀のサメと黄金の蛇に変身してしまう。

 されど、桃太は既に〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の反則とも言える謎の正体を突き止めていた。


「紗雨ちゃん、乂。きっと八岐大蛇やまたのおろちの呪いには、例外があるんだ。義手や義足のような、〝肉体の一部と認識される状態〟なら精密機械であっても動くんだよ」

「なるほど。だがよ、相棒。例外というより、八岐大蛇がわざと作った〝抜け穴〟じゃないか? 伏胤って奴、〝鬼の力〟に塗りつぶされて、もう人間とは呼べないぜ!」


――――――――

あとがき

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