第41話 冒険者組合本部、陥落?

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 西暦二〇X一年一一月七日に、勇者パーティ改めテロリスト団体〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟がクーデターを宣言してから二週間あまり……。

 日本国は警察機動隊を主戦力として鎮圧を図ったものの、空中から前触れもなく落下する大岩に潰され、あるいは進路を阻まれて劣勢にあった。

 一方の〝C・H・O〟も、国会議事堂や首相官邸、羽田・成田空港といった重要拠点の制圧に失敗。

 街中で意味もなく放火や略奪りゃくだつを繰り返す暴徒となって、戦況は停滞していた。

 しかし、それは副代表たる両腕義腕の剣鬼、鷹舟たかふね俊忠としただの意図通りだ。


「俺サマ達が目指すはただ一点。英雄、獅子央ししおうほむらが東京湾に築いた人工島、東京二四区〝楽陽らくよう区〟の冒険者組合本部にいる、獅子央ししおう賈南かなんの首だ!」


 西暦二〇X一年一一月二五日。

 奇しくも、桃太達が初陣を迎えた日の正午――。

 鷹舟は地上構成員の大半を東京都と、東の千葉県で暴れさせることで、政府の目を引き付けた。

 そして自らは精鋭部隊を率い、東京湾を挟んで反対側にある、西側の神奈川県へと渡ったのだ。

 秘密裏に同盟を結んだ七罪ななつみ家の協力もあり、鷹舟率いる決死隊は唯一の連絡橋を突破し、関西国際空港に匹敵する広さの、一〇万平方メートルを越える巨大人工島へ潜入を果たした。


「勝手知ったる他人の庭。いや、今後は俺サマ達の庭だ。事務員など敵にもならん」

「こ、降伏する。助けてくれえ」


 灰色髪の剣鬼と二〇人の部下は、警備の冒険者を蹴散らして、冒険者組合本部を制圧。最奥に建てられた獅子央家私邸に踏み入った。

 しかし、鷹舟一党は玄関先でとんでもないものを目撃することになる。


「た、孝恵たかよし代表。なんて姿に!?」


 獅子央焔の一人息子。冒険者組合の長たる獅子央孝恵が、恐怖に歪んだ顔で石化していたのだ。


「ここはもう、魔女の棲家すみかだ。総員警戒しろ」


 鷹舟が叫んだものの、すでに遅い。


「くくく。夫婦水入らずの寝室に集団で押し込むとは、末世よなあ」

「ぎやああああ」


 左目尻に傷の目立つ美しくも恐ろしい風貌の、黒いイブニングドレスをまとった女が寝室から飛び出すや、身の丈ほどもある金棒を振り回し……。

 鎧兜に身を固めた高レベル冒険者二〇人を目線だけで石化させ、あたかも粘土細工の如く真っ二つにたち割った。


邪眼じゃがんに耐えたのは鷹舟だけか。わらわの細腕で潰れる軟弱さで、勇者パーティを名乗るなど思い上がったものよ」

獅子央賈南ししおうかなん!」


 石化した死体が撒き散らされた寝室で、ただ一人生き残った鷹舟は、怒りに任せて吠え猛る。


「ケジメをつけに来たぞ、諸悪の根源め。貴様という魔女から日本国と凛音を解放し、俺サマは革命を成し遂げる!」


 鷹舟は機械仕掛けの義腕が生み出す、人外の剛力で刀を大上段から振り下ろすも、賈南は薄笑いを浮かべて金棒で受け止め、互いの武器から火花が散った。


「不思議なことを言う。今日に責任があるとすれば、お前たちに他ならん。獅子央ししおうほむらという英雄に甘え、奴なら正しく導いてくれる、奴なら間違っても許してくれると、あらゆる選択と責任を担わせた。だからこそ、口先だけの詐欺師さぎし弘農こうのう楊駿たけはやの如き無能にしてやられたのよ」


――――――――

あとがき

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