第10話 踊るサメとヘビ
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追放対象である
「
「うん、
鬼の侵食が軽い一部の生徒は彼を救助しようと治癒の光を当てたものの、血に酔ったクーデター参加者達の大半は敵意を向けており……。
「どけ
「今すぐ首を
「死んだから、もう手足もいらんだろ。八つ裂きにしてやる」
中でもパンチパーマとモヒカンとリーゼントの不良生徒三人は、桃太の反撃で痛い目にあったこともあり、物言わぬ
「止せ!
「「ひ、ひいっ」」
しかし、灰色髪をした着流し姿の剣客、
「矢上の雌狐と出雲の小僧も確保したかったが、まさか縦穴に落ちるとはな。捜索が難儀しそうだ」
「一〇年前に、
凛音がロボットのような義眼をグルグル回転させながら提案すると、鷹舟は機械仕掛けの両腕をギシギシ軋ませて肩をすくめた。
「凛音、買い被りが過ぎるぞ。伝説じゃあ、三千世界を見通し不死の肉体を得るような、とてつもなく凄いもののように語られていたが、実際に戦ってみれば弱っちいものだ。〝鬼の力〟の下位互換なんて、ババ抜きのババは捨てちまえ」
「鷹舟こそ、捨てたカードが切り札に化けたらどうするつもり? 〝
冒険者パーティ〝
「グヒヒ、いまさらクソガキがいったい誰と組むと言うのだ。わしの銃弾は呪毒をこめた特別性だ。ババだのジョーカーだの関係あるか。今頃はガキが狂って女のハラワタに喰らいついているか、その反対だろうよ。ああ、元天才少女の死体なら、加工して抱くってのも悪くないかもなあ」
「「あははは」」
黒山の下品な冗談に、
凛音と鷹舟も、これ以上の討論は時間の浪費と矛をおさめた。
「クーデターを続けましょう。ワタシは迷宮内の部隊を率いて生贄を集め、発掘兵器〝
「わかった」
「グヒヒ、了解だ」
凛音は赤い瞳の羅刹達に向かって、手を差し伸べる。
「これより、無力な日本政府と愚かなる民衆を打倒し、世界を変えましょう。我々は真の勇者となるのです!」
義眼の少女は、洞窟内に歓声が響き渡る中、誰にも聞こえない小さな声で呟いた。
「ワタシは、〝鬼の力〟を広める獅子央賈南を殺せるなら、どんな悪行にも手を染めよう。でも、その後は……。出雲君、もしも貴方が生き延びられたなら、罪深いワタシを殺してくれる?」
◇
一方、縦穴に落下した
「出雲君。大丈夫よ、お姉さんが守るから……」
そんな優しい声を、聞いた気がした。
「はら、減ったなあ」
ぎゅるぎゅると、腹の虫がなる音がして、桃太は薄暗い河川敷で目覚めた。
遥花が介抱してくれたのだろう。傷を負った額と左腕には、赤いリボンが巻きついて穏やかな光を発し、出血は既に止まっていた。
周囲を見渡せば、空になったレトルトパウチが転がり、口の中にはドリンク食の味が残っていた。
「あ、A、AA……」
「矢上先生!?」
一方の遥花は、桃太に食事を譲り、黒山から受けた銃創で発熱しているのか、かすれるような小さな声で呻いていた。
「酷い熱だ。冷やさなきゃ!?」
桃太が地下を流れる川の水を両手ですくい、遥花の手足にかけると白い湯気がたった。
薬や道具を探して装備を点検するも、流されてしまったのか、破れて裂けた服以外の道具が見当たらない。
「GUOOO……」
おまけに、熟れたほおずきのように爛々と輝く赤い瞳が、数百と彼と彼女を囲んでいる。
唸りをあげる犬に似た四足歩行獣に、ジャンプ移動する人より大きなヤドカリ、這うように進む軟体動物と姿は様々だが、首筋が毛羽立つような殺気に手足の震えが止まらない。
「河原じゃ身を隠す場所も無い。モンスターに襲われないよう、先生を安全な場所まで運ばないと」
桃太は、燃えるように熱い遥花の身体を、俗に言うお姫様だっこで抱き上げた。
「GUOOO……」
「GAAAA……」
「SHUUU……」
そうこうしている間にも、二人を取り囲む赤い瞳と、おどろおどろしい唸り声は数を増してゆく。
「シャーシャー」
「サメッサメッー」
遂には野良猫が喧嘩するような、屈託の無い声まで混じり始めた。
(あれ、シャーシャーはともかく、サメサメってどんな鳴き声?)
桃太が思わず声の主を探して、川の向かい側に目をやると――。
「シャーッ!」
「サメェー!」
空飛ぶサメと黄金のヘビが、ひび割れた翡翠の勾玉と錆びて赤茶けた短剣の上で、くるくると踊っていた。
「こ、これは、いったい何のB級映画!?」
――――――――
あとがき
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