File065.夜襲

 今回の依頼は調査及び討伐とのことです。基本は調査で良いのですが、あまりに数が多かったり、ロードなどの上位種が確認された場合は、即討伐に移ってほしいとのことです。

 めぼしいパーティがいないので依頼が同時進行されるのは仕方ない事ですね。普段なら、一旦報告に帰るのだそうです。


 「それじゃあ、出発するぞ。」

 マーキスお兄ちゃんの号令のもと、町を出発です。

 「今回はイリスちゃんに期待してるからね。」

 「はい、エマお姉さん。ゴブリンなんかまとめて灰にしてやります。」

 イリス、炎系の極大呪文はやめてくださいね。あなたの魔力量で、極大呪文なんか撃ったらきっと辺り一面焼け野原でしょうから。どうせ威力の調整とかできないんですよね? 

 「イリス、ちゃんと制御できる呪文だけ使うんですよ。」

 「お姉様、どの呪文も暴発したりしませんから大丈夫です。」

 暴発しない事イコール制御できているではないのですよ?その辺りをわかっていますか?

 「エマお姉ちゃん、イリスはこんなんだからあまり期待しないでくださいね。」

 「お姉様、酷いです・・・」

 「大丈夫よ、ゴブリンなんてドカーンと思い切りやっちゃっていいんだから。」

 エマお姉ちゃん、その一言を後で後悔しないでくださいね。イリスは本当に焼け野原にしますよ。

 「はい、エマお姉さん。ドカーンとやっちゃいますね。」

 みんな微笑ましく笑っていますが、イリスの呪文を見た後でもその微笑みが保てるのでしょうか?私は無理ですね。ちゃんと止めましたからね、あとは知りませんよ。



 「まだ、町からそんなに離れていないのに結構ゴブリンが出ますね。」

 「そうだな、ちょっと多い気がするな。それにしっかりと統率が取れている。」

 「それって、ゴブリンロードがいるって事ですか?」

 「いる可能性が高くなってきたな。アリスちゃんの銃が結構役に立ちそうだな。」

 ライフルのことでしょうか?あれは基本弓と同じですから、移動しながらの攻撃は苦手ですよ?

 「見つけたら、すぐ攻撃しちゃっていいんですか?」

 「ああ、あんまり近づけたくないからな。」

 「マーキスお兄ちゃん達の活躍の場が無くなっちゃいますよ?」

 「みんなの安全の方が大切だからな。近寄らせないようにできるならそれに越したことはない。それに今回は俺も弓を持ってきているしな。」

 やたらと大きな弓ですね。ワイバーン討伐用に用意した弓ですか。今回は徹底して遠距離で倒すつもりなのですね。

 それならば私もライフルを使うことにしましょう。




 「マーキスお兄ちゃん、起きてください。ゴブリンが出ました。」

 ゴブリンに夜襲をかけられました。私とロッドお兄ちゃんの見張りの時です。ロッドお兄ちゃんはもう迎撃に向かっていますので、私はみんなを起こす役回りです。

 「恒久の光よ、闇夜を照らせ。ライト!」

 早速エマお姉ちゃんがライトの呪文をかけてくれました。さすがですね。これで周囲が見やすくなりました。

 イリス、あなたの方が早く起きてきましたよね?なぜライトをかけてくれなかったのですか?まだ思い出していないですか・・・後でエマお姉ちゃんに教えてもらっておいてください。私も一緒に習うことにしましょう。イリス任せだと危なっかしいですから。


 「ロッド、何匹位いる?」

 「今2匹目を倒したところ、向こうに3匹行ったのは確認してる」

 マーキスお兄ちゃんが3匹の方に走って行きましたね。私は周囲の索敵をしましょう。

 まだその辺にいるかもしれません。

 「キティお姉ちゃん、後ろから2匹来ます。気をつけてください。」

 「ええ、わかったわ。」

 エマお姉ちゃんがフォローに入ってくれています。結局全部で9匹もいたのですか、結構な数でしたね。

 「みんな、大丈夫か?」

 「マーキス、こっちは大丈夫よ。」

 「俺の方はかすり傷程度なんで大丈夫だ。」

 ロッドお兄ちゃんが怪我をしたんですか。大したことはなさそうですけど、治しておいた方がいいですよね?

 「ロッドお兄ちゃん、私が治しましょうか?」

 「このくらいの怪我、治癒魔法をかけることもないぞ!」

 「でも、この後何かあるといけないのでかけておきますね。」

 さくっと、治癒魔法をかけておきましょう。初級治癒魔法でいいですね、本当に大した怪我ではないようですし。

 「アリスちゃん・・・今、治癒魔法をかけたの?」

 「ええ、かけましたけど何かおかしかったですか?」

 また、キティお姉ちゃんですね。普通に治癒魔法をかけただけだと思うんですけど、またキティお姉ちゃんから見るとおかしなことでもあったんでしょうか?

 「呪文は?」

 「えっ?」

 「呪文の詠唱は?」

 あっ、なんとなくやらかした気がしてきました。魔法って詠唱がいるんでしたね。私、詠唱忘れてましたよ、これってまずいやつでしょうか?

 「てへっ、忘れてました。」

 これで誤魔化せないでしょうか?

 「アリスちゃん、朝まで時間はあるし、ゆっくりお話ししない?」

 「そうね、そのお話には私も混ぜてほしいかな?」

 えっ、エマお姉ちゃんまでですか?

 「お姉様、私も混ぜてもらっていいですか?色々聞きたいです。」

 イリスもですか?あなた大賢者なんでしょ?無詠唱くらいできないのですか?普通は詠唱省略ですか、無詠唱というのは聞いたことがないのですか。それはまずいですね。

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