File054.急襲

 「ねぇ、アリスちゃん・・・本当に入るの?」

 「多分入ると思いますよ。」

 ワイバーンを私のアイテムボックスに入れる所なんですけど、入るかどうかが不安なようです。本来なら解体して高く入れる部分だけ持ち帰る予定だったそうです。まぁ、普通そうですよね・・・

 「ねぇ、マーキス・・・1匹丸々持って帰ったりしたらどの位の値段がつくのかしら?」

 「俺も考えてたんだが、とんでもない値段になるぞ。」

 そんなに価格に違いが出るのでしょうか・・・

 「やっぱり残していく部分にも高く売れるところが多いって事ですか?」

 「それもあるが、1匹全部って所が大きいんだよ。」

 なるほど、ボアの革でも一枚物とつぎはぎでは値段が違うという所でしょうか?えっ、そんな簡単な物じゃないって?研究資料として価値がとんでもないことになると言うことですか。なるほど・・・


 「入りましたよ。」

 「マジで入っちまったんかよ・・・すごいな、アリスちゃんのアイテムボックスは。」

 「それで、アリスちゃんのアイテムボックスだけど、まだ入りそう?」

 「入ると思いますよ。」

 いえ、絶対に入りますけど。

 「マーキス、どうする?もう少し探す、それとも早めに帰る?」

 「そうだな、もう2日ほど探してそれで見つからなければ帰ることにするか。」

 「そうね、報奨金が下がるのも嫌だしね。」


 なんてことを話しながら、周囲を索敵しながら移動してたのですけれども、早めに帰ればよかったとみんな思ってますよ。

 いきなり2匹に急襲されたんですから。発見したときにはかなり近づかれた後でしたね。山沿いに低空で侵入してきたようです。かなり賢いようですね。誰ですか、そこそこ賢いだなんて言ってたのは。カラスってかなり賢いのですよ。



 「アリスちゃん、1匹頼めるか?エマはもう1匹の牽制を頼む。2匹同時はきつい。」

 「わかったわ。ロッドも弓撃ってね、当たらないと思うけど。」

 「もう撃ってるよ!それに一言余分だ。」

 私も何とか1匹落とさないといけませんね。狙って撃つなんて悠長なことは言ってられないようです。1発当たれば落ちるんでしょうから、バラ撒きましょう。

 「イリス、援護お願い。弾を入れてるとき無防備になるから。」

 「わかりました!お姉様が頼ってくれた・・・お姉様が・・・」

 何を言ってるんですか、今は大変なときなんですよ。


 1発足にかすりましたが、上空に逃げられましたね。しかも私のライフルの射程まで覚えられましたよ。あれだけ上空じゃ当たりません。そのくせ急降下攻撃はしてくるのですからたちが悪いです。

 1匹が離れていきますね。これで1匹を相手にすればいいのですが、その1匹が遙か上空ですか。なんか待っているみたいでいやですね・・・


 あっ・・・待ってたんですね。さっき離れていった1匹が岩をつかんで帰ってきました。これってきっと上から落とすんでしょうね。上空に昇っていきますのでそのつもりですね。

 「マーキスお兄ちゃん・・・」

 「ちょっとまずいな、馬車は放棄して散開するぞ。」

 マーキスお兄ちゃんの言葉と同時に馬車から飛び降りましたけど、危機一髪だったようですね。馬には悪いことをしましたが馬車は岩の下敷きです。代わりに私もそのワイバーンに1発当てましたけどね。岩の上にワイバーンが落ちてますよ。脳しんとうでも起こしてるのでしょうか?動きませんね、足をピクピクさせてます。


 「お姉様、もう1匹が逃げてくみたいです。」

 離れていきますね、なんか逃げていくようには見えないのですが・・・

 「マーキスお兄ちゃん、とりあえずあのワイバーンだけでも仕留めますか?」

 「ああ、今のうちだからな。エマ、念の為だもう1発魔法を打ち込んでおいてくれ。」

 「ええ、分かったわ。」

 アイススピアを撃ち込みましたね、首元にしっかり刺さってます。絶対死んでますよね。マーキスお兄ちゃんが渋い顔してワイバーンの所に行きますね。落ちてからでないと剣士は役に立ちませんからね。

 でも、エマお姉ちゃんに頼んだのはマーキスお兄ちゃんですからね。



 「お姉様、ワイバーンが戻ってきます。その・・・おっきな岩を持って。」

 待ってください、さっきより大きな岩じゃないですか。岩は役に立つと学んだんでしょうか。とりあえずワイバーンをしまってしまいましょう。


 「とりあえず散開するぞ、お互いに巻き込まれないように注意しろよ。」

 「わかったわ。」

 「おう!」

 「なるべく遠くに逃げるわ。」

 「「はい。」」

 それぞれ別の方向に散っていきましたね。イリス・・・なぜあなたは私についてくるんですか?散り散りに逃げないとダメでしょ。

 「イリス、別の方に逃げないとダメでしょ。」

 「私はいつもお姉様と一緒ですよ。」

 2人一緒だと的になるじゃないですか。『死ぬときは一緒よ。』なんて私はいやですよ。






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カクヨムのコンテスト用に書き下ろした作品です。


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カクヨム

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