File055.撃退
嫌ですね・・・こっちに来ますよ。私が1発当てたのを恨んでるのか、2人でいるからそれを狙ったのか。なんかどっちもって感じもしますが、なんとかしないといけませんね。
「イリス、魔法であの岩をどうにかならない?」
「お姉様じゃないんですから、そんなこと出来ません。」
私なら何とかなるって言ってるんですか?私でもなんともならないことはたくさんありますよ。
「私でもなんともなりません。ほら、イリスは向こう側に逃げて。」
イリスとは逆の方向に逃げましょう。きっと私の方を追ってくるでしょうからね。イリスが助かるならそれでいいでしょう。でも死ぬ気はないですよ、切り札とは最後まで残しておくものです。ただし、成功するかはわからないのですけどね・・・
「お姉様・・・」
イリスが何か言ってますけど、今は少しでもイリスから離れないといけません。ワイバーンも思った通り私を目標にしてますから。 「アリスちゃん、上!」
エマお姉ちゃんの声が聞こえますね、ワイバーンが岩を落としたんですね。
当たりますね、直撃コースです。あのワイバーン、腕がいいですね。えっ、岩をつかんでいたのは足だって?気にしたらダメです。普通、足が良いとは言わないじゃないですか。そもそも、ワイバーンの技量について話をしないですか。ごもっともです。
「アイテムボックス!」
岩をこの中に収納してしまうと言う荒技です。成功するかはわかりませんけどね。やったことないんですから動いているものをアイテムボックスに入れるなんて。出来なければぺしゃんこです。
成功のようですね。ワイバーンがキョトンとしてます。間抜け面ですね。ギリギリ射程内ですね。撃ち落としましょう。
あっ、外しました。2発もです。ワイバーンも正気に戻ったようですね。上昇をはじめました。まずいです、上に逃げられたらライフルの射程外です。
3発目、ギリギリで当たってくれるといいのですが。当たったのは尻尾ですか。でも重みで落ちてきますね、必死で重みに耐えている様子です。
「エマお姉ちゃん、やっちゃってください。」
私はライフルの弾を詰め替えないといけないのですよ。今のが最後の1発でしたからね。
エマお姉ちゃんのアイスジャベリンですか、アイススピアより威力は劣りますが、射程が長いんですよね。さすがエマお姉ちゃんです。魔法の選択が上手いです。これがイリスだと、ファイラーランスの一択でしょうね。
色々魔法を思い出してくださいね。火力至上主義はいけないですよ。器用貧乏でも沢山の魔法を使えた方が私としてはありがたいのですよ。
「落ちてきますね。」
「ええ、お姉様。落ちてきますね。」
イリス、いつから横にいたのですか。そんな悠長なことを言ってる場合じゃないですよ。こっちに向かって落ちてきてるんですから。ワイバーンがこっちを睨んでるのがわかります。私だけでも道連れにでしょうか。
「お姉様がさっきみたいにアイテムボックスに入れてくれますよね?」
「何バカなこと言ってるの。逃げるわよ。」
アイテムボックスには生き物は入らないんですよ。まだあのワイバーンは生きていますからね。無理ですよ。
ワイバーンが落ちたときの衝撃で結構吹っ飛ばされましたね。潰されていないだけましですね。
「イリス、大丈夫ですか?」
「はい、お姉様は。」
「ええ、私は・・・左手が痛いですね。」
「お姉様、左手が変な方に曲がってます。」
えっ、折れてますね、折れてるとわかったら凄く痛くなってきました。色んな事がありすぎて麻痺してたんですね。ダメです、痛すぎます。
「アリスちゃん、気がついた?」
「キティお姉ちゃん。」
「うん、左手はまだ痛い?」
少し痛いですけど、だいぶいいですね。添え木がしてありますね。魔法では直せないのでしょうか?
「だいぶ痛みは引いたみたいです。」
「ごめんね、私がもう一つ上の治癒魔法が使えてたら直してあげられていたのに。」
キティお姉ちゃんの使える治癒魔法では骨折は治せないのですか。段階があるのですね。
「キティお姉ちゃんのおかげで、痛みが引きましたから気にしないでください。」
「よう、アリスちゃん。気がついたか?」
「ロッドお兄ちゃん。」
手に大きな肉の塊を持ってますね。何の肉でしょうか?私の勘が当たっていればワイバーンの肉でしょうね。
「ほら、差し入れだ。食えるなら食っとけよ。栄養付けないと治るもんも直らないぞ。」
「ワイバーンのお肉ですか?」
「ああ、1番美味いところを持ってきてやったぞ。」
イリスじゃないんですからそこまで意地汚くないです。
「そういえば、イリスは?イリスは大丈夫でしたか?」
「向こうでワイバーンの肉食ってるぞ。」
私の心配より、ワイバーンのお肉ですか。さすがイリスです。
「アリスちゃん、イリスちゃんはさっきまでずっと傍で泣いてたんだからね。」
えっ、そうだったんですか。知りませんでした。
「マーキスが、先に食事をしてこいって。さっき連れ出したばかりだよ。」
「そうだったんですね。」
「それと、もう少し体調が戻った後でいいからワイバーンを頼めるか?」
「わかりました、後でしまっちゃいますね。」
「アリスちゃん、大丈夫?心配したのよ。」
エマお姉ちゃん、心配してくれるのは凄く嬉しいのです。嬉しいのですが抱きつかないでください。腕が痛いです。
「お姉ちゃん、アリスちゃんが痛がってるから。」
「あ、ごめんね。でも、石が落ちてきたときは本当に命が縮まったわよ。」
「本当ね、あれってどんな魔法を使ったの?もしよかったらだけど、教えてくれないかしら?」
「魔法なんて使ってませんよ。アイテムボックスにしまったんです。」
「「・・・・・・・・・・」」
「あれっ?エマお姉ちゃん、キティお姉ちゃん?」
「アリスちゃん、もう1度言ってもらえるかしら?」
「アイテムボックスにしまいましたよ?」
「アリスちゃん、アイテムボックスって言うのはね、生き物や動いてる物は入れることが出来ないって知ってた?」
えっ?知りませんでしたよ。そんなの知ってたらあんな事しないでしょう。
「そうだったんですか。」
「知らなかったのね。というか、なんで入るのよ。動いてるものは入るし、あんな大きなものは入るし、規格外もいい所だわ。」
エマお姉ちゃん、あまり大きな声を出さないでください。骨に響きます。
「お姉ちゃん、落ち着いて。アリスちゃんが非常識なのはわかるけど、ちょっと落ち着こうよ。」
キティお姉ちゃん、さらっと酷いこと言いませんでしたか?腕のこともありますからここは流しておきますが、非常識ってちょっと傷つきますよ。
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カクヨムのコンテスト用に書き下ろした作品です。
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カクヨム
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