File051.スコープ

 今日はエマお姉ちゃんに催促されてのライフルのテストです。私としてもワイバーンと対峙する前に試射しておきたいところですから・・・


 「アリスちゃん、獲物は何がいいんだ?」

 「ええ、正直なんでもいいのですがこの辺りだと何が出ますか?」

 「この辺りだと、オークかボアだな・・・」

 「ではオークを狙いましょうか。」

 オークは脂がのっていて美味しいですからね。しっかり仕留めましょう。

 「ねぇ、アリスちゃん。そのらいふるだっけ・・・どの位離れた的に当たるの?」

 「そうですね・・・弓の6倍くらいの距離でしょうか?」

 「嘘でしょ?とんでもない距離ね・・・そんなのに狙われたらたまらないわ・・・」


 そうでしょうね、弓の6倍、魔法の5倍と言ったところでしょうか・・・まぁ、当てられればと言うところなのですが・・・今度スコープも作っておいた方がいいですね。



 イリスとロッドお兄ちゃんでオーク探しですか・・・イリスは索敵魔法があるはずですし、ロッドお兄ちゃんに至ってはなぜか見つけるという天性のものですからすごいと思いますよ。

 「お姉様、だいぶ向こうでオークを見つけましたよ。」

 イリスが帰ってきましたね。とりあえず方角だけ聞いて位置取りをしましょう。なるべく視界の開けたところがいいです。こっちから向こうが見えないといけませんからね。

 私の索敵魔法にも引っかかりましたね。確かにずいぶん向こうです。距離にして200メートルほどでしょうか・・・

 普段なら近寄るところですが、今日はここから狙いましょう。

 いま、ちらっとオークの影が見えましたね・・・場所は分かりました。まずは1発撃ってみましょう・・・まぁ、当たらないと思いますけど、どんな感じかはつかめますからね。


 あれ?狙ったところに行きませんね・・・なぜでしょうか?私がヘタだからですか・・・それもあるでしょう・・・でも2発目3発目と撃ってみましたが集弾しませんね。ひょっとして・・・ライフリングですね、切ってませんよ・・・バレル作った時に前と同じようにと考えてましたからね・・・直さないと使い物になりません。オークがだいぶ近づいてきました。仕方ありません、今回はショットガンで仕留めておきましょう。


 「アリスちゃん・・・どうだったの?」

 「エマお姉ちゃん・・・失敗みたいです。直さないと使い物になりません・・・」

 「そうなの?直せば使えるって事なのかな?」

 「まぁ、そう言うことになりますね。」

 集弾性が悪いのはライフリングが切ってないためですが、当たらないのは私の腕が悪いせいでしょうね・・・


 その後は、馬車の中でライフリングを切りました。もちろんスキルを使ってです。時間もありますし、魔力にもまだ余裕があります。スコープを作っておきましょう。ワイバーンは的が大きいので必要ないでしょうが、やはりその他の獲物を狙うときには必要になると思うのです。


 スコープは6-24でいいですね。その位あれば結構狙えると思うのです。ライフルのオーソドックスなスコープです。それ以上が必要なのはどこかの暗殺者くらいですよ・・・私には必要ありません。

 スコープが出来上がるのに2日かかりました。構造が簡単ですからね、そこそこ早くできるのでしょう。


 スコープも出来上がりましたし、もう1度テストです。

 「それが遠くでもよく見える筒なのね。」

 「ええ、スコープと言うんです。これがあると遠くのモノに当てやすくなるし狙いやすいんです。」

 「ふーん・・・」

 なんか、反応が薄いですね・・・いつものエマお姉ちゃんならもっと食いついてくると思うのですが。

 「エマお姉ちゃん、どうかしたんですか?」

 「うん・・・そのスコープって言うのだけど、遠見の魔法じゃダメなのかなって思っただけよ。」

 「えっ、遠見の魔法なんてあるんですか?」

 「あら、知らなかったの?遠見の魔法、鷹の目、色々言い方は違うけど、遠くの物を見るための魔法よ。」

 それって、そのままスコープの代わりになるじゃないですか・・・そもそも、レンズなんか無くても単なる筒に魔法付与で遠見の魔法をかけておけばいいのですよ・・・

 「エマお姉ちゃん・・・どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか・・・」

 「だって、アリスちゃんが何を作っているか分からなかったんだもの、仕方ないと思わない?」

 はい、エマお姉ちゃんの言うとおりですよ、何も言わずに作っていましたし、何を作っているか聞かれたときも内緒ですって言った気がします。

 「そうですね・・・それで、その遠見の魔法ですけど、教えて貰う事は出来ますか?」

 「そうね、私に抱きついて上目遣いで「エマお姉ちゃん、遠見の魔法を教えてください」って言ってくれたらおしえてあげるわ。」

 注文が細かいですね・・・でもそのくらいで教えてくれるのならやりますよ。

 「エマお姉ちゃん、遠見の魔法を教えてください。お願いします。」

 言われたとおりにギュッと抱きついて上目遣いで目をうるうるさせながらお願いしましたよ。さすがにちょっと恥ずかしかったのですが、これだけのことで教えて貰えるのです。やらないはずがないじゃないですか。

 「うっ・・・わかったわ・・・教えてあげる。だからもう少しこのままね。」

 しばらくギュッと抱きしめられたままでした。その後は約束通り魔法を教えてもらいましたよ。さて、テストをしましょう。スコープですか?せっかく作ったのですから使いますよ。






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カクヨムのコンテスト用に書き下ろした作品です。


人形の館 ~人材派遣って人形を貸してもいいですよね?~


カクヨム

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