File030.お姉ちゃん

 朝食の準備です。さほど時間もないので、パンと昨日の残りのスープです。

 「お姉様、やっぱり塩の味がするスープは良いですね。」

 「そうね、ピンクペッパーも良い味が出てるし、買って正解だったね。」

 「もっと稼いで、旅の途中でも美味しいご飯が食べたいですね。」

 イリスは食事中心でしょうか・・・目的があるというのはいいと思います。思うのですが、もう少し上を見てもいいのではないでしょうか・・・



 「アリスちゃん、よかったら今日はこっちの馬車で移動しない?」

 キティさんですか、マーキスさんのパーティは交代で周辺の警護をしてますからね。今はキティさんは馬車の中で休憩中なんですね。

 「キティお姉ちゃん、私も馬車に乗せてもらっていいんでしょうか?」

 「大丈夫よ。もともとあなた達も乗っていいはずなんだから。」

 「アリスちゃん、なんでキティのことだけお姉ちゃんなんて呼んでるの?」

 「えっ・・・昨日の見張りの時にそう約束して・・・」

 「アリスちゃん。エマお姉ちゃんって呼んでみて。」

 「えっ・・・」

 「エマお姉ちゃん。はい、言ってみて。」

 「え、エマお姉ちゃん・・・」

 「これからはそう呼んでね。」

 あっ・・・周辺警護に言ってしまいましたね。最後はとても良い笑顔をしてましたね・・・私にお姉ちゃん呼びされてそこまで嬉しいのでしょうか・・・

 「お姉様・・・何してるんですか・・・」

 「え、ええ・・・ちょっと・・・」

 「イリスちゃんもキティお姉ちゃんと呼んでいいのよ。」

 微笑みながら言っていますが、かなりの圧を感じます。

 「き、キティお姉ちゃん?」

 「いい子ね、今日の見張りは私としましょうね。」

 「は、はい・・・」




 街道沿いなので、魔物が現れるのも稀だそうです。5日間で1回遭遇するかどうかだそうです。それよりも気をつけるのが盗賊なんだそうです。

 せっかくの商品が持って行かれるのですから大変ですね。ただ、盗賊と言っても命までは取らないのだとか・・・盗賊にしてみれば次も獲物になってもらわないといけないからだそうです。獲物になんかなりたくないですよね・・・



 「マーキスさん。道中魔物が出たとき、弱そうな魔物なら私達も戦闘に出てもいいですか?」

 「う~ん・・・今回は遠慮してくれ。お嬢ちゃん達はそう言った契約になっていないだろうからな。見て、勉強してくれ。」


 ちょっと残念ですが、今回の護衛のリーダーはマーキスさんなので、言うことは聞かないといけません。言われたとおり見ることで勉強しましょう。

 「アリスちゃんは魔物と戦いたいの?」

 「いえ、護衛をしながらの戦闘というのを覚えたいだけですね。これから自分達だけで護衛の依頼を受けることも出てくるでしょうから・・・その時の為です。」

 「アリスちゃんは勉強熱心なのね。2人ならすぐにCランクになるわね。」

 「まだ、ついこの間Dランクになったばかりですよ。」

 「でも、ザナックさんの指名依頼って事になってるのよね?」

 「はい、そう言うことになってます。」

 「指名依頼はギルドの貢献度としてものすごく高い物なの。普通の依頼3回分位にはなるわね。」

 そんなにですか・・・ザナックさんと一緒に移動するときは全て指名依頼扱いにして貰ってますから、確かに普通に依頼を受けるより遙かに早いですね・・・



 「そういえば、キティお姉ちゃん達はランクはいくつなんですか?」

 「マーキスはBランクで私達はCランクね。もうすぐ上がると思うけどね。」

 みんなBランクなんですね・・・結構すごいパーティなんですね。

 「ランク昇格にはやらなければいけない依頼とかもあるから、しっかりこなさないといけないわよ。」

 「はい。」

 そのあと、Cランクへ昇格する為に何をすればよいかを色々教えてもらいました。

 その間、イリスがふてくされながら1人で馬に乗っていたのは見て見ぬふりをしました。1人で移動することだってありますよ・・・私がキティさんと話していたからといってふてくされないようにして下さいね。

 キティさんに笑われてしまいました・・・ちょっと恥ずかしいですよ・・・




 今日はめずらしく街道までボアがでてきていたとのことで、ロッドさんが仕留めてきました。夕飯の時に振る舞ってくれるんだそうです。

 「2人とも、分厚いステーキにしてやるからな。楽しみにしてろ。」

 ロッドさんは気さくな人ですね。キティさんと同い年で私達と4歳しか違いませんから。話もしやすいです。

 「ロッドさん。私、厚めのお肉が良いです。」

 イリス・・・恥ずかしいからそんなこと言わないでください・・・いつもあまり食べてないように聞こえるじゃないですか・・・

 「おう、イリスちゃんだったな。しっかり分厚く切ってやるから楽しみにしてろ。」

 「ありがとうございます。」

 「アリスちゃんはどうする?やっぱり分厚いのが良いか?」

 「いえ、私は普通でいいです・・・」

 「子供が遠慮なんかするもんじゃないぞ。」


 いえ、遠慮なんかはしませんが・・・やっぱり恥ずかしいじゃないですか・・・

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