File029.指名以来

 「おお、来たな。」

 今日からザナックさんの所でお仕事です。一応冒険者ギルド経由の指名依頼とはなってますが、内容は荷物持ちなのですけどね・・・さすがに商売の荷物は持ちませんよ。そんなことをすれば、私がザナックさんの所の従業員みたいじゃないですか・・・

 荷物持ちと言っても、野営の道具ですとか食料なんかです。その分ザナックさんは商品が積めるということです。私が商品を運んでいるのと同じではあるのですが、建前ですね・・・

 「はい、今日からお願いします。」

 「そこに置いてあるのが食料品とかだ、大事に持って行ってくれよ。」

 「わかりました、ではいったん預かりますね。」

 「それにしてもお姉様のアイテムボックスはたくさん入りますね・・・羨ましいです・・・」

 まぁ、アイテムボックスは便利ですからね・・・ザナックさんも支店を1つまかせてもいいからうちに来ないかとしきりに誘ってきますからね・・・将来的にはいいのかもしれませんが、やっぱり冒険者ですからね。商人じゃありませんよ。



 「アリスちゃん、温泉はどうだった?」

 キティさんでしたっけ・・・イリスに温泉を教えたのはどうやらキティさんだったようですね・・・

 「はい、とても良かったです。イリスに教えてくれたのはキティさんだったんですね。」

 「ええ、女性冒険者には結構知られているのよ。」

 「そうなんですか・・・」

 確かに少し高いとは思いましたが、冒険者であれば出せない額ではないですからね・・・それもランクの高い冒険者であればそのくらい大したことはないのでしょう。


 マーキスさん達はザナックさんの所の専属なのでしょうか?この間も護衛をしてましたよね?

 「マーキスさん達はザナックさんの所の専属の護衛をしているんですか?」

 「いや、ちょうど移動の時期と重なっただけさ。ただ移動するより護衛をしながらの方がいいだろ?金も貯まるしな。」

 確かにそうですね・・・自分たちで移動すると出費だけですからね。もう少しして自分達だけで護衛が受けられるようになったらそう言ったことも気をつけましょう。

 「そう言う嬢ちゃん達はザナックさんところの専属になるんじゃないのか?」

 「いえ、まだ実力も何もありませんから、しばらくは荷物持ちとして帯同させて貰うだけです。」

 「何言ってるの、2人だけでオークが倒せるのに実力がないなんて・・・」

 「なんだ、嬢ちゃん達オークが倒せるのか?なら十分に一人前じゃないか。」

 オークを倒せると一人前なのですか?知りませんでしたよ・・・イリスはどうでしょう?首を振ってますね・・・知らないようです・・・

 「オークってそんなに強いんですか・・・」

 「そうだな・・・そこまで強いわけではないが、1つの登竜門といったところか?」

 どうやら、図体の割に素早く体力もあって力も強い。冒険者の力を見るのにちょうどいい魔物って事らしいです。



 「そろそろ出発するみたいだ。嬢ちゃん達も準備しな。」

 「「はい。」」


 今回も馬に2人乗りです。馬車に乗っていってもいいとは言われましたが、せっかくお父様に馬をもらったのですから使いたいですよね。

 隣の町までは馬車で5日かかるそうです。途中に村がないそうなので、道中は野宿ですね・・・

 一応、私達も夜間の見張りに立ちますよ。マーキスさんには子供は寝てろって言われましたが、こういった安全なときにこそ練習ですよ。

 「そうだな、基本は俺たちが見張っているから大丈夫だしな。嬢ちゃん達にはいい練習になるか。」

 「はい。勉強させてもらいます。」

 「いい娘達ね。ねぇやっぱり・・・」

 「なりませんよ・・・」

 エマさんはどうしても私達を妹にしたいようですね・・・まぁ、エマさんはいい人ですけど、妹とかちょっと違うと思うんです・・・


 「お姉様はお姉様だけでいいです。」

 イリスもマイペースですね・・・

 夜間は3交代で見張りを立てるということですので、イリスは最初の組に、私は朝方の最後の組で見張りに立つことにしました。一応朝の食事の用意もしないといけませんからね・・・材料を持っているのは私ですから、取り出さないといけませんからね。




 「アリスちゃん、そろそろ時間よ。」

 「あ、はい・・・」

 ちょっと眠いです・・・見張りはキティさんと一緒です。エマさんとじゃなくて一安心です。

 「姉さんが色々言ってごめんね。」

 「いえ、エマさんはすごくいい人ですし・・・」

 「ありがと、でもアリスちゃんやイリスちゃんだったら本当に妹に欲しいと思っちゃうわよね。」

 そうなんですか・・・

 「それじゃあ、妹にはなれませんけど、キティお姉ちゃんって呼んだ方がいいですか?」

 「えっ・・・それ、いいわね・・・うん、これからキティお姉ちゃんって呼んで。」

 半分冗談交じりで行ってみたのですが、すごく喜んじゃいました・・・今更冗談ですとは言えませんね・・・自業自得ですね・・・これからはキティお姉ちゃんと呼びましょう。必然的にエマお姉ちゃんと呼ぶことになるのでしょうね・・・


 その後、朝まで何度もお姉ちゃんと呼ばされました。もちろん後ろから抱っこされたままです・・・これで見張りは出来てるのでしょうか・・・

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