イオニア海海戦
マルタ沖にイタリア艦隊が出現したとの報告を受けた地中海艦隊はアレキサンドリアを出港。
本国からの増援が持って来た対水上レーダーを無傷な艦へ設置する工事や21日にイラストリアスで起きた火災事故の復旧を優先した為、結局ウォースパイトの復帰は叶わなかった。
しかし暗いニュースばかりではない。
増援は上記の水上レーダー以外にも米国産の100オクタン燃料、新型のフルマー戦闘機を載せてやって来たのだ。
フルマーは二人乗りの為グラディエーターより重く、遅く運動性も悪かったが急降下速度に優れていた。
マッキ200には及ばないが燃料の質向上と併せてCR42に対抗出来ると思われる機体が到着したのである。
敵戦力もP.108は本国の空襲に掛かり切りで護衛戦力と共に抜けており、ヴィットリオ・ヴェネト級以外には砲力で勝っていた。
最悪カラブリア沖海戦で撃破したジュリオ・チェザーレが復帰したとしても、ジブラルタルが復旧すればイタリア〜リビア間をより優勢な艦隊で遮断可能であると地中海艦隊司令官、アンドルー・カニンガム中将は判断したのである。
参戦以来砲爆撃に怯える住民の為にも敵を叩かねばならなかった。
万一の備えとして母港の防空能力を高める為アレキサンドリアに防空巡カルカッタを残し、艦隊防空にはコヴェントリーとイラストリアスを随伴させる事にした。
陣容は、
第一艦隊(マルタ救援部隊)
戦艦マレーヤ
空母イラストリアス
重巡ベリック
軽巡オライオン、ネプチューン、グロスター
駆逐ヌビアン、モホーク
第二艦隊(対イタリア艦隊)
戦艦ヴァリアント、バーラム
重巡ヨーク
軽巡コヴェントリー、シドニー、エイジャックス、グラスゴー
駆逐アイレックス、ハイペリオン、ヒーロー、ハヴォック、ヘイスティ
上記艦隊が出撃した事を知ったエジプト国王ファールーク1世は護衛のムハンマド・ナギーブ少佐にイタリアへの通報を命じた。
彼等は反英的で、少佐は英語の他にイタリア、ドイツ、フランス語を習得していたのである。
夕方、イラストリアスから発艦したフルマー戦闘機が戦艦二隻を含む敵艦隊を発見。
マレーヤに座乗していたカニンガム中将は予定通り本隊より北寄りを航行中の第二艦隊に敵の位置を通報すると共に敵艦隊への変針を命じた。
晩秋の日暮れは早い。
夜の帳が下りたイオニア海を第二艦隊は疾走していた。
21時を回った頃、方位3-0-1、3万5千ヤード(約32km)の地点に発砲炎を視認。
1分程経った頃ヴァリアントの左舷側に巨大な水柱が立った。
視認後敵方に変針していた為遠弾となり、命中こそしなかったが艦隊はパニックに陥った。
装備したばかりの対水上レーダーは10海里までしか探知出来ず、マルコーニは亡くTV放送を行っていないイタリアが自国を超えるレーダーを開発出来るとは思わなかった為、首脳陣は独仏からの技術提供を疑った。
イタリアはカラブリア沖海戦以後、戦艦であれば35km先から探知出来る水上レーダーと対空は双発の単機を55km、対水上目標は20km先から探知出来る両用レーダーの二種類を自己開発、戦艦に搭載し始めていたのである。
右回頭を済ませ、対航戦となり徐々に接近し始めたがヴィットリオ・ヴェネトの4射目が夾叉。
3万2千ヤード(約29km)を切ろうかという時に5射目がヴァリアントの艦首に命中。
火災が発生し前部主砲塔が一時使用不可能になった。
火は直ぐには消えず、後退すべく変針し被弾面積が増加。
側面を掩護していた駆逐艦ヒーローが間に入りヴァリアントは難を逃れた。
だが火災を背に浮かび上がったヒーローは砲撃を浴び轟沈。
その間にヴァリアントはT字に持ち込んだが先手を取られた事、発射門数、レーダーの性能、射程、速力で劣る事から頭を押さえられ、更に運の悪い事にレーダーが主砲発砲時の爆風で破損、使用不能となった。
水柱から射程を把握され、距離を保ったヴィットリオからの滅多打ちは続き、上部構造はスクラップとなり司令部は壊滅。
機関部への貫通も許し、速力の低下したヴァリアントの命運は尽きた。
後続していたバーラムもリットリオと砲戦を行っていたが遠く、有効弾を与えられないうちにヴァリアントが沈没し撤退。
イタリア海軍も空軍の支援が受けられない東方に進出を嫌い追撃しなかった。
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