初心者狩りはゲーマーの特権だろ?
「......勇凛先輩」
「......なんだいアテナくん」
「......ゲームってこんなに恐ろしいものなんですか?」
「違うからね!全然違うからね!」
「うわーん!イリスのバカー!」
「うっさいわねさっきから。もう少し静かにできないの!」
「ゆーくん!イリスがー!」
「はいはい。イリス。もう少し手加減してやれ」
「......何言ってるの勇ちゃん?」
「だから手を抜けって......」
「初心者狩りはゲーマーの特権でしょ!」
「お前はゲームなんかやめちまえ!」
ここからはさっきまでどんなことが起きていたのかお話ししよう。
「ねえ勇凛君。このアイテムってどんなことが起きるの?」
「そのアイテムは動く回数を決める時のサイコロの数を一個増やすアイテムです」
「なるほど。いっぱい進みたいときに使えばいいって事ね」
「そういう感じです」
「勇凛先輩。ここのマスに進んだら何が起こるんですか?」
「えっとそこはね......」
ゲームがスタートしてから二十分くらいたった。最初のミニゲームは意外にもアルテミスが一番だった。初めての割には上出来の操作だったから少し驚いた。
それ以上にイリスの奴手加減してるところが驚きポイントなんだけどな。
「やったまた6だ!」
「運いいなアルテミス」
「まあ!日頃の行いがいいからね!」
「嘘ばっかり。アンタみたいな奴は最初だけ絶好調なのよ」
「負け組の声なんて聞こえませーん!」
「3人はあーゆう大人になっちゃだめだからね」
「「「......そうですね」」」
まあ、アンタみたいな大人にもなりたくはないけどね。
「次は私の番か......えい!」
「やーいイリス全然ダメじゃん!」
「......うるさいわね」
こういうパーティーゲームって序盤よりも中盤ぐらいからの罰ゲームとかのマイナス部分の結果で勝敗が左右されやすい気がする。
「ミニゲームはAボタンとBボタンを交互に押す......なんだか大変そうなゲームですね」
「単純だけど運要素が少ないからね」
「あれ?意外と早く交互に押すって難しいわね」
「てかイリス早くない?」
「これが実力差って奴ですよアルテミス」
「みっともない大人たちだよまったく......」
「"わからせて"あげないと後輩が調子に乗っちゃうからね」
「そんなにアンタと私じゃ差はないでしょ」
「お前ら一応同期だもんな」
「そうよ。他の同期は大体辞めていったけど」
「厳しい仕事だからしょうがないね~まあ大体足切りって感じだったけど」
「生々しい界隈事情は話さなくていいわ!」
「ギリシャ神話ってやっぱり大変ですね......」
「そうね......日本神話の方でまだよかったわ」
怖いね神様事情って。日本の社会とどっちがブラックなんだろう?多分、神様の方がブラックだろうけど。
その後は何もなく平和な時間が過ぎていった。イリスとアルテミスの言い合いみたいなものはあったが事は大きくなることはなく、アテナや綾華先輩もなんやかんや楽しくプレイ出来ていた。
そんな均衡は急にそして簡単に壊れてしまった。
「勇凛先輩。このアイテムってどういう事なんですか?」
「そのアイテムはね、他のプレイヤーから一人選んでそのプレイヤーのポイントを減らすことができるアイテムだよ」
「......なんだか性格の悪いアイテムですね」
「まあ、勝つためにはこういう逆転できる要素がないと面白くないしね。使い方としては一番ポイントの高い人に使うのがセオリーだね」
「使うとしたらアルテミスさんですか?」
「セオリー通りならね」
「えー!やめてよアテナちゃん!」
「こんなアイテムはよくないですね。私は使わないでおきます」
なんていい子なんだろうこの子は!こんな子がいるなんてまだまだ世の中捨てたもんじゃないな。
いや、ゲーム的には使った方が盛り上がるだろうけど。
そういう考え方はなかったなー。どちらかというと俺は一番ポイントない奴とか反応が面白い奴にこういう嫌がらせアイテム使ってたっけ。
「本当にいいのアテナ?そのアイテム使わないのアテナは勝てないよ?」
「確かにそうですね」
アテナは順位的には最下位。一位はアルテミス。二位は綾華先輩。イリスは三位だ。
なんか引っ掛かるんだよな~イリスの奴が手加減なんかするはずないし、運が悪かったといえどミニゲームだったら余裕で一番を取れてるだろうし。
う~んやっぱり何かが引っ掛かる。
「アテナちゃんやめようよ~争いからは何も生まれないよ~」
「そこまで深刻な事ではないだろ......」
「だって使われたら負けに近づいちゃうじゃん」
「そういうアイテムだしな」
「やっぱりそういうのはよくないと私は思うわけですよ」
「でもお前だって負けてたら使うだろ?」
「......」
「おい」
そこで黙るな。都合がよすぎではありませんかね?
「......背に腹は代えられません。使います!ごめんなさいアルテミスさん!」
「あーポイントが!」
「それでも一位なんだしいいじゃん」
「そうだけどさ......」
「次、私の番か」
「そういえば綾華先輩も持ってましたよね?アテナと同じアイテム」
「ええ。私もよく分かってなかったのよね。使った方がいいかしら?」
「アルテミスに使えば一位になれますし。選択肢の1つとしてはありだと思いますよ?」
「なるほどね~こういうのって使うタイミング逃しちゃうと使わないだろうし使っちゃおうかしら」
「先輩ちゃんも使うの!イリスにしようよ!イリス!アイツいつも先輩ちゃん困らせてるし」
「なんで私なのよ!ゲーム関係ないし!」
「......そういう選択肢ってありなの?」
「......別に選ぶプレイヤーは自由なわけですし。日頃の軽い仕返しみたいなのもあってもいいと思いますよ」
「......なるほどね」
「なーんでこっちの顔見るのさ綾華!」
「いや~なんでもないですよイリスさん」
「怖いってなんか怖いよその顔!」
「そんなに怖いかしら勇凛君?」
「......結構怖いっス」
顔が笑ってないタイプの怒り方って怖いよな。されてるイリス本人の方はもっと怖いだろうけど。
「......まあ、今回は勝ちたいのでアルテミスさんにします」
「よし!」
「えー!イリスにしよ!イリスに!」
「......次は覚えておいてくださいね?」
「......うっす」
結局アルテミスが選ばれ綾華先輩が一位に。意外といい勝負してるのかもな。
「みんなひどいよ......」
「ゲームなんてそんなもんだよ」
「うぅ......」
不満下というか今にも泣きだしそうというかなんというか。とりあえずそんな顔をしているアルテミス。
一方、この中で一名ほどこの場面に目を光らせたものがいた。
「ああ!またポイントが減っちゃった!」
「あらら。運が悪いなアルテミス」
「下がりっぱなしだよ......」
「まだ逆転できるような時間だし大丈夫だろ」
「そうだね......前向きにとらえるべきだね」
全然顔が前向きではないんですが。
「よーし!ついに来たわよ!私のターンが!」
「でもお前、アイテムとか持ってないだろ?」
「ふっふっふ!甘いよ勇ちゃんこれを見よ!」
「なんでお前もマイナスアイテム持ってるんだよ!」
「実は序盤の方でゲットしていたのだ!」
「でも、そんな素振りなかったわよね?」
「あまり大人をなめちゃあかんのですよ」
「......まさか!」
「どういうことですか勇凛先輩!」
「お前タイミング見計らってたな!」
「そうよ!勇ちゃんが話してるときに高速プレイって訳よ!」
そうすれば俺がゲーム全体を理解せずに進んでいく!いや、だから何だって話なんだが。
ん?タイミングを見計らう?
......そういう事か!
「そうよ勇ちゃん!私の真の目的ってのはねこういう事よ!」
「あ!また私のポイントが!」
「やっぱりどういうことなのか分からないわ」
「......イリスは俺たち、いや綾華先輩とアテナをハメたんです」
「私たちはイリスさんの手の上だったってことですか!」
「くそ!どこかおかしいと思ってたんだ!」
ほんと、だからなんだって話なんだよな。だって俺はゲームに参加してるわけじゃないし。
「あっ......あっ......あっ!」
「勇凛君アルテミスさんが壊れちゃったわよ!」
「大丈夫ですかアルテミスさん!」
「やりやがったな!このくそ悪魔!」
「ハメられたアンタたちが悪いのよ!」
ここでイリスがやったことを簡単に解説しよう。
まずイリスはプレイしていく中で最初の方でマイナスアイテムを手に入れた。そこでイリスはこう考えたわけだ。「アテナと綾華ちゃんがマイナスアイテム使ったタイミングで使おう」と思ったわけだ。そして幸運なことに綾華先輩もまた早い段階でマイナスアイテムを入手したのだ。ここでさらにイリスはこう考えたわけだ。「意外にもアルテミスの順位が高いからアイツを1位にして最下位まで落としてやろう」と思いついた。そこからはさっき言ったようにタイミングを見計らったり高速プレイをすることによってアイテムを持っていると勘付かれないようにプレイする。そして、アテナがアイテムをゲットした次のターンに俺にアイテムの内容を聞く。そのタイミングでアイテムを使うことを促して使わせる。それを綾華先輩にも行いアルテミスのポイントを下げ、とどめをイリスが指すという作戦だ。
でも、アルテミスが一位になる可能性は低いのでは?と思うだろう。でも、アテナと綾華先輩は初心者なので操作がうまく出来ず順位はミニゲームのあまり高くならない。しかし、アルテミスは初心者だが、他の2人に比べれば操作はでき、最初のミニゲームの段階で一位と二位がイリスかアルテミスになると予想ができたわけだ。そしたら後は簡単。適度にアルテミスに一位を取らせポイント調整をすれば意外にもアルテミスが一位という構図を作り出せるというわけだ。
......悪知恵だけは働くよなイリスの奴。
「いい気味だわアルテミス!」
「うわーん!イリスのバカー!」
「そんな言葉私には効かん!」
「イリスのアホー!」
「悪口がガキなんだよお前は......」
と、こんなことがあり、現在に至るというわけです。さあここからどうしましょうか。
神様の扱いは慎重に。みんな覚えておいてね。
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