そして日常へ?
「というわけで綾華先輩が生徒会長になれました!それを祝して乾杯!」
グラスの音が弾む。
元気いっぱいのアテナを見ているとやっぱり可愛いなと思うが絶対に口には出さないぞという硬い意思も同時に生まれる。
彼女の扱いは少し大変だ。
「ホント、勇凛先輩が生徒会を辞めるなんて言ったときは焦りましたよ!」
「焦るどころかワンワン泣いてたじゃない」
「そ、そんなことはないです!そのような事で泣くような私ではありません!」
「俺の存在ってやっぱり「そのような」ぐらいの扱いをされるレベルなんだな......」
「そう言うわけじゃないです!ごめんなさい!」
いじりがいのある子だ事。
壇上から戻ってきた時、すごい顔してたっけ。顔を真っ赤にして怒っているのか笑っているのかよく分からない顔をしていた。
「まあ勇凛君も戻ってきてくれたわけだしよかったよかった」
「ホントその節は申し訳ないです......」
「いいわよ別に。私も勇凛君の事可愛がり過ぎちゃったわ」
大切にされていたんだなと最近、改めて感じることが多くなってきた。寂しいと少し思うが前よりも足並みをそろえている感じがして嬉しいと感じるようになってきた。
「私が無事、生徒会長になったわけだし、アレの準備でもそろそろしましょうか!」
「アレってなんですか?」
「アテナ。教えてあげなさい」
「あの......綾華先輩......」
「何かしら?」
「......アレって何ですか?」
「せめてあなたは覚えてなさいよ!」
「ごめんなさい!」
脊髄反射で謝るアテナ。アレって何だろうな?少し気になる。いや、他人事ではないんだがな。
「ほらこの前、帰りに話したじゃない?」
「あー!海ですね!海!勇凛先輩!海行きましょう!」
「お外出たくないでござる」
「これは忍者もビックリするほど隠密人間ですね......」
「決定事項よ。みんなで行くの!」
「いやだ!お外やだ!真夏の友は太陽じゃなくてエアコンなの!」
生粋のアウトドア人間に何を言っても無駄だ。それにこんな事するとか絶対にアイツらにバレるじゃん。
「イリスさんとアルテミスさんも連れてきてあげようか?」
「もっとヤダ!てか、そっちが嫌だから行きたくないの!」
......外から聞き覚えのある鳴き声が聞こえた気がしたが気のせいだろうか?
「とにかく決定事項だからね!アテナ。何処の海行きたい?」
「悩みますね......おいしいお魚が食べたいです!」
「あなたの目的はそっちなのね......」
かみ合わないながらも旅行プランを膨らませる二人。これは大変そうだな。
「勇凛先輩はどんなところがいいですか?」
悩むな。正直、海の違いとかよく分からん。
「とりあえず、治安が悪くなくて美人な姉ちゃんがいっぱいいる海がいい」
「中々ハードルが高い海ですね......」
「あら?勇凛君の部屋にそんな海がたくさんなかったかしら?」
「気のせいじゃないですか?」
視線を大きくそらす俺。アテナよ俺の顔を覗きこまないでくれ。
「もしかして、勇凛先輩はオススメの海を知ってるんですか!」
「純粋だなお前!」
「汚らわしいわね勇凛君」
「やめて!ちくちく言葉はよくないよ!」
ぐさりとナイフが刺さったが気にしないでおこう。
波瀾万丈な生徒会選挙にしてしまったが何とか前のような学校生活に戻ることが出来てよかった。
いや、前のようではないか。今では、他の生徒からの悪意の視線は薄れ普通な学校生活を何とか送れている。
明るく楽しい生徒会が再び戻ってきてくれてよかったよかった。
元気溢れる少年少女の笑い声は今日も絶えない。
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