後輩ストーカーは愛を知らない?

「なんで、ゴールデンウィークなのに学校に登校しないといけないんですか......」

「なんでって、大事な話があるからよ」

「ゴールデンウィーク、一緒に出掛けるんじゃないかったんですか......」

「私だってそのつもりだったわよ!」


 じゃあ残りの日に行けばいいじゃんと思ったそこのあなた!

 今日がゴールデンウィーク最終日です。

 しょうがないよ、綾華さんが立て続けに外せない用事が急に来たらしい。


「まあ、今度行きましょう!今度!」

「そうね、断る勇気も必要よね......」

「話聞いてます!?」

「あれでしょ?鯉に恋焦がれてた話でしょ?」

「違うから!そんな寂しい話してないから!」


 しっかりしてくださいよ綺華さん。


「で、なんで呼び出したんですか?わざわざ学校に?」

「家でもよかったんだけどね。こっちの方が雰囲気出るかな~って」

「答えになってないっす......」

「そろそろ来るわよ。新入りが」

「マジっすか!」

「大マジよ」

 

 おお~楽しみだな~。どんな子かな~。やっぱり仕事がめちゃくちゃできるとか?

 いや、子犬系後輩かもしれない。超マッチョな超人青年かも。実は未来人でもいいな~。


「いや、うちの学校には未来人なんていないわよ」

「ちょっとぐらい夢見たっていいじゃないですか~」

 

 神様が居るわけなんだから、未来人の一人ぐらい居たっていいだろ。

 この世界の中心なれば未来人とか超能力者が集まってくるのかな?神様が集まってるわけだし。

 正直、期待はあんまりしてないけどね。なんで、またこんな時期に後輩を連れてくるんだ?

 そこが、一番の不思議ポイントだな。


「来ないっすね......新入りちゃん」

「おかしいわね......集合時間にとっくに過ぎてるんだけれど......」


 時間にルーズとはけしからん。来たら注意してやろう。


「そう思うなら、しっかり来なさいよ」

「すんません......」


 にしても遅いな~来るぞって言われてからかれこれ30分は過ぎている。

 そう思っていた矢先、生徒会室の扉が開かれる。


「顔合わせ初日になにやって......」

「遅れてしまってすみません!」


 振り向けば、きれいな90度を作っている。

 びっくりした~。だって、後ろ振り向いたら頭があるんだぞ。ぶつかってしまったら大変だ。


「いいわよ全然。さあ、座って」

「すみません......」


 えへへと言いながら空いている席に座る。


「ほら、アテナ。勇凛くんに挨拶しなさい」

「アテナ!あの有名な!」

「静かにしなさいな」


 いやだってあの有名なアテナの見た目が小学生だぞ!


「初めまして!神島アテナです!勇凛先輩の事はよく、綾華先輩やイリスさんからいっぱい聞いてますよ?これからよろしくお願いします!」


 おー!ついに来ましたよ!先輩呼び!いいね~謎の優越感があるよ。

 神島アテナちゃん。身長が低く童顔な為か高校生ってよりは、まだ中学生って感じがする。といっても、高校生になったばかりだからそんなものか。

 特徴的な部分で言えば、くりっとした目と美しい青色の短いツインテールだろう。いや、これはおさげって言えばいいのか?男の俺にはそこら辺はよく分からん。

 毎度恒例のアレは朱奈といい勝負だ。アテナちゃんの将来が楽しみだよ。朱奈は知らん。


「一応、こっちも自己紹介しとくか。初めまして。夏目勇凛です。これからよろしくね?」

「はい!よろしくお願いします!」


 うんうん。元気でなんて健気なんだ。可愛い後輩が持てて、おじさんは嬉しいです。


「何、一人で頷いてるのよ」

「いや~可愛い後輩が出来て嬉しいな~って」

「可愛いですか!私が!」

「そうだよ~アテナちゃんは見てて癒されるよ」

「そんな///」


 う~照れてる照れてる。あ~あ、どこぞの神様たちもこんだけ素直だったらな~

 アイツらには可愛げなんてものはない。


「そんな事無いですよ!私は先輩の方が可愛いと思いますよ?先輩の食べてる姿とか小動物みたいで可愛いですし、綾華先輩の為に重いものを無理して運んでる時の先輩の顔見てると、あっこの人凄く頑張ってるなって応援したくなるような顔してるし、照れ隠ししてる時の顔なんてもう、たまったものじゃないですよ!それと......」

「......綾華さん......ヘルプ......」

「この子、愛を知らないのよ」

「急に重いな!」


 うへー。また、変わり種をよこして来ましたよ。

 なんだよ、愛を知らないって。なんかの歌詞かよ。


「あの子の親ね、とてもスパルタ教育なのよ。もう、生まれた時から誰にも正しい愛を教えて貰ってないの」

「予想以上に重いな!」


 覚悟していた以上のものが来てしまった。


「いつもは自分を抑えれてるけど、私が居るせいか、本性出てきちゃったぽい」

「そうなんですね......」


 こんな健気な子にも、辛い過去があったんだな。

 可愛さだけは隠せてないから内容だけ聞こえなければ大丈夫そうだ。


「でも一つ、先輩に許せないとこがあります!」

「どっちの先輩かしら?」

「勇凛先輩です!」


 わーお名指しと来ましたか。話の流れ的に俺なのは分かっているが。


「イリスさんから聞いたんですけど、先輩の好みの女性は胸の......」

「あー!やめろ!ここは学校だ!健全であるべき場所なんだ!」

「うーん!うっうっ!」

 

 なんでアイツはそういう事をばらす!

 帰ったらさすがに怒ろうそうしよう。


「安心して。誰も勇凛君の好みを知りたくて知ったわけじゃないから」

「安心してられるか!」


 勝手に個人情報広まってるようなものだぞ。そんなの嫌に決まっている。


「一番ビクックリしたのは......」

「もう喋るな後輩!」

「二人とも、もう仲良しね!」

「そうですかね///」

「照れてんじゃねえ!この後輩ストーカー!」


 あー絶対そうだ。まだ居るって言ってたストーカーは絶対にコイツだ。

 違ったら怖いよ。合ってても怖いけど。

 

「綾華さんに言わなければならないことがあります」

「どうしたのよ?急に?」


 最後に一つ言わせてもらおう。先輩だからな。ここはバシッと言ってやろう。


「この子!愛を知らないじゃなくて!常識がないだけじゃないですか!」

「ひどいです!勇凛先輩!」

「それは私も思っていたけど、あえて言わなかったのよ......でも愛を知らないのも事実よ」

「綾華先輩もひどいです!」


 なんというか、ハチャメチャなファーストコンタクトだったな。

 アテナには少しづつ常識と愛を知ってもらおう。

 ところで、愛を教えるってなんだ?哲学過ぎて、バカな俺にはわかんないや。

 少しわかることは、親からの愛を貰えなかった者と親からの愛を貰えきれなかった者は少し似ていて遠いものだと思う。

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