いや、下着は選ばないからね?

「あ!この服いいな~でも、こっちもいいな~」

「こっちもいいんじゃない?偶にはいつもと違う雰囲気のも着てみたら?」


 わ~すごいまともな話してる~。いつもはふざけてばかりいるが自分の買い物の時はどこにでもいる女の子。


「勇くんはどっちが好み?」

「えっと...こっち?」


 アルテミスが右手に持っているほうの服を指さす。緑色のワンピース。だが、方が出でいるタイプだ。こういうのをキャミソールって言うんだっけ?イリスが着ているのはロング丈のワンピースだ。


「勇くんが選んでくれた方にしよ!」

「勇ちゃんは冒険しない男だな~俺はあれがいいって言わなきゃ」


 イリスが指さす方を見る。この店の商品ではなく隣の店のものだ。


「って、隣は女性ものの下着の店じゃん!」

「店員にこの店で一番エロいのくれよって言うのだ!」

「絶対に言わないからね!?」

「勇くんが着て欲しいなら...」

「一言も言ってないからね!?」


 そんなこんなで次に来た場所はアルテミスが行きたがっていた服屋。正確には服屋巡りだそうだ。


「そういえば、勇ちゃんって洋服は一人で買ってたの?」

「大体、綺華さんと一緒に行ってた。でも、翔平が暇だったら翔平連れて回ってる。最近は忙しらしいから一緒に遊ぶことすらできてないけど」


 最近は甲子園が近づいてきて更に練習が忙しいそうだ。自分は来年が本番だけど、先輩の為にもっと頑張んなきゃと言っていた。アイツの一つのことに対する姿勢は見習っていかなきゃな。


「翔平ってあの身長高い野球少年?」

「そうそう、アイツ」

「雰囲気は野球ってより、サッカーとかバスケな感じがするな~坊主じゃないし」

「今の時代、野球やってるやつ全員が坊主って訳じゃないぞ?」

「そうよ、今の野球少年ってのはね大体が髪の毛染めてマウンドに立つのよ」

「野球するのは喧嘩の時に金属バットを豪快に振り回す為の練習って事のなのね」

「お前ら全国、いや全世界の野球少年に謝れ!」


 間違った知識しかないのか野球に対して。イリスに関しては絶対ゲームと間違えてるよ。高校生があんな派手な髪の毛だったらもっと騒がれてるだろ。


「じゃあ今日は勇くんの洋服も選んじゃお~!」

「まずはロリータ系かしら?」

「それもいいけど、ギャルとか面白そうじゃない?」

「いや、着ないからね......」


 頼むから男が着るような服を選んでくれ。

 そう思いながら次なる店へ足を運ばせる。

 次はイリスか...

 不安でしかないが、上機嫌なイリスを見ると何故か笑顔が溢れる自分はこの時間を何だかんだで楽しんでいるのだろう。

 この感覚は夜逃げした父と最愛の息子を残したまま去って行った母との一日を思い出す。

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