来ちゃった♡なんてストーカーに言われても...

キーンコーンーカンーコーンーと音が鳴る。いつも通りの放課後タイム。授業なんてあっという間に終わるのさ。受けた記憶は全くないけど。

 いつも通り、生徒会室に向かう。いつも通りとは言ったが行くのは一週間ぶりだ。

「お〜すっ」

適当に挨拶をして入室する。

「お〜すっすっ...じゃないよ!」

向こうは一回増やして返してくる。ちゃんと乗っかってくれるいい先輩だ。

「何で先週も来なかったのかい?」

「用事が立て込んでて。アハハハハ...」

怒筋を描きながら俺を睨む綾華さん。目線を逸らしながら頭を掻く俺。

「誤魔化しの笑い方下手過ぎだよ。心配になるくらい...」

来なかった事よりも笑い方の方で先に心配された。

「いつも来てないじゃないですか〜」

「副会長なんだから毎日来なさい!」

副会長って言われてもな〜この生徒会二人しかいない訳だし。繰り上げ副会長なんだよな俺。信頼度もなければ仕事が出来るわけでもない。

「生徒会の人増やしましょうよ〜」

話題を変えてその場を凌ぐ。

「今年は一人増えるよ〜」

「わ〜い増えるぞ〜」

「増えちゃうぞ〜」

パチン!両手で仲良くハイタッチ。後輩が出来るのか〜楽しみだな〜。

「...マジ?」

「マジ卍!」

古の呪文の効果は笑顔になる事らしい。

 綾華さんが生徒会長になってから俺以外一人も増えていない。

 綾華さんは俺のお母さんが亡くなってしばらくの間、無気力だった俺に生徒会一緒にやらない?と誘ってくれた。部活も入らずただボーッと日々を過ごしていたから変わるチャンスだと思い生徒会の一員となった。その時から誰も居ない。聞いたら他の子は居たけど来なくなったと言っていた。

 その後色んな人に聞いてみると、生徒会の仕事を一人で全てこなしている人が居て存在意義を失った人達がみんなバックれたらしい。その生徒会の人は今もなお生徒会で働いていると言っていた。

 スーパーウーマンだから他の人が要らないって訳だ。

 そんな人が新しい子を連れて来ると言っているの事に驚きが隠せない。

「どんな子が来るんですか?」

「それはね〜」

「それは〜?」

 トントントン、ガチャ。いいタイミングだったのに珍しく人が入ってくる。

「失礼します。...げっ、ペットが居る...」

俺の顔を見るなり汚物でも見るような顔になる女子生徒。

「彼はペットじゃないさ。私の可愛い後輩さ」

「綾華さん...」

カッコイイっす!綾華さん!流石は我が校の生徒会長だ。

「先日の件でお話があるですけど...」

「生徒会選挙の事だね?さあ座ってくれ」

二人でいる時はフランクな話し方なのだが他の人が居ると声が少し低くなりこれぞ生徒会長!みたいな雰囲気に変わる。綾華さんも切り替えが凄く早い。アルテミス達みたいだな。実はイリスの言っていた他の神様って綾華さんだったりして。苗字が稲荷だし。そんな感じの神様がいた気がする。

「何でペットも居るんだよ...」

「...」

「...」

 流石俺、綾華さんとは違い悪い噂ばかり広まっている。自分が悪いものもあるが嘘のが広まっている方が多い。入学の最初の方に色々あったからな。悪だったとかでは無く入学早々無気力状態。そんな中学校内のと揉め事に絡まれたり、生徒会の件があったりして一部の人達に嫌な目をされる。

 綾華さんは俺とは違い学園で一の者人気者。そんな人と俺が関わっているのは面白くないとらしい。

 そんな時、いつも綾華さんが庇ってくれるからペットって呼ばれるようになった。人として恥ずかしいな。

「俺、用事あるんで先に帰りますね...」

そっと立ち上がり近くに置いた鞄を持って生徒会室に出る。

「わかった。気をつけて帰るんだよ?」

「はい...」

 どんな顔されているか気になったが振り返る事はしない。こっちの顔も見られるから。今、恥ずかしい顔をしてるだろうな。

 上を向かず下を向いて廊下を歩く。急にポケットから振動がする。携帯を確認すると一つのメールが確認できる。「今日、買い物行くでしょ?一緒に行ってもいい?」アルテミスからだ。グッドタイミングだ。「いいよ。今から帰るから待ってて」っと。あれ以降何とか前のように話す事が出来るようになった。全てイリスのおかげだけど。携帯から振動が再びした為、確認すると何とも言えない表情で舌をだら〜んとだして二足歩行の犬のスタンプが送られている。

「いつ使うんだよこのスタンプ...」

 面白く奴だな。少し元気が貰えた気がする。

 待たせるのは悪いと思い早足で昇降口に向かう。アルテミスとの初めての買い物は少し楽しみだ。そう思うと憂鬱な気分が少し減る。

 靴を履き昇降口を出るといつもより少し騒がしい。校門の方に人が集まっているのが見える。何で人が集まってんだよと思いながらも正門に向かう。

「お姉さんは誰かを待っているんですか?」

キランっと効果音を付け足している先輩が誰かに話しかけているらしい。俺には関係ない。そう思いながら横を通ると声を掛けられている人が反応する。

「さっきけら言ってるでしょ?待ってる人が居るって」

声を掛けられている人はちょっとばかり面倒臭そうに返事をしている。

 その声は最近、久しぶりに聞いた声。

 その匂いは最近、久しぶりに嗅いだ少しだけ甘い匂い。

「あ!いたいた!こっちを向け〜向いてくれ〜」

そう言いながら声を掛けられていた人がこちらに向かってくる。

「...って何でいるんだよ!」

 後ろを振り向くとポスンっと音がする。下を見ると金色の頭が一つ。そしてその頭が動き出す。こちらに向ける顔は満面の笑み。見ているこっちが恥ずかしくなるほどだ。

「アレ〜?心臓の音が速くなってるぞ〜?」

 その笑みから珍しく悪戯好きの少女の顔に変化する。

「「「えーーー!?」」」

 その場にいる生徒全員が驚きの声を上げる。それもそのはず、俺に抱きついているのは美少女なのだから。

「来ちゃった♡」

「来ちゃった♡じゃねえよ。家で待ってろ!」

「近くいるんだし、帰るよりすぐ合流出来て楽じゃん?」

「...」

 そういえばコイツ、俺のストーカーだったな。ストーカーである事を再認識させてくれる出来事だった。

 明日から色々と大変そうだ。特に自称シスターとか自称シスターとか自称シスターとか。

 


 




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