母親公認ストーカーと一緒に暮らす事になりました

「なんてっ、いいっ、話しっ、なのっ、かしらっ」


 彼女—アルテミスが僕が産まれる前の事を泣きながら話してくれた。


「確かに良い話しでした」


 予想以上の話しの内容に少し目元を潤す。


「それで、これからどうするんですか」

「もちろん、一緒に住むつもりよ。頼まれた事だもの」


 アルテミスが真剣な表情で答える。切り替え早いなこの人。いや、この神。


「いやーこれからの新婚生活楽しみね、ダージリン?」

「僕はダージリンでもダーリンでもないです!」


 この神は一々ボケて話の腰を折る。


「一応聞いておくけど、一緒に住むの嫌?拒否権は無いけど」


 かと思えば本題に入る。神様の気持ちはまだ分からないみたいだ。


「嫌と言うよりまだ混乱してるって感じです。即決するのは難しいです」


 拒否権は無いが抵抗してみる。


「お姉ちゃんサービスするよ?何と今なら毎日一緒にお風呂に入ってあげるよ?裸で。」


...何て魅力的なんだ。僕の理性戻ってこーい。

 そう思いながらも彼女の身体全体を見てしまう。平均より高い身長であり出ている所はしっかり出ていて、引っ込む所は引っ込んでいる。世の女性が憧れるであろう体型だ。


「何?そんな見ちゃって。いやらし〜。でも勇凛君は男の子だもんね。仕方ないよ、女の子の身体に夢中に事なんて。」


 立ち上がり、アルテミスの思うセクシーなポーズをとる。彼女自身がいわゆる美女な為、少し映えているのが妙に腹立つ。


「とにかく、直ぐには決めれません。もう少し時間を下さい。」

「良いよー。どうせ一緒に住むわけだし。何処の部屋使って良いの〜?」

「人の話しを聞け!」


 神様って皆んな自由奔放な性格なのかな。一つの事例だけで判断するのは良く無いか。

 しかし、悩むな。この家には一人しかいないし。正直、一人で寂しさを覚える事がある。

 突然、家族が居なくなるとポッカリと穴が空いてしまい、その穴は中々塞がらない。

 それに、今はいない母の願いとなると断り辛くもある。

 ...拒否権は無いもんな。この現状を受け入れよう。そう思い立ち上がり、アルテミスに決断を伝えようとすると、彼女は仏壇の前に座り、リンを軽く鳴らし合掌をする。その姿からは悲しみと後は任せてくださいと言わんばかりの力強さが伝わってくる。

 少し時間が経つと、アルテミスはこちら向き


「どうしたの?」


 と、優しい声音で聞いてくる。久しぶりに、聞く女性の優しい声。何か感情が湧き上がってきたがそれを抑え込み、さっき決めた事を伝える。


「一緒に住む事にするよ。母の最期の願いだっただろうし。それに、実は一人で暮らすのは寂しいんだよね。」


頬を赤らめながらも素直に伝える。そんな自分の姿は自分らしくないなと思う。


「ありがとう。お母さん、これから頑張るからね。」

「僕の母は一人だけです。」


 泣きながらボケるアルテミスに今度はこちら側が優しい声音でツッコミを入れる。

 やっぱり、今の自分はおかしいな。そう思いながらアルテミスと向かい合い、これからの生活について話し合う。

 一周忌である事を忘れて話し合っている僕達を見て母はどう思っているだろうか。

 構ってさんだった母の事だからきっと嫉妬してハンカチを口に咥え引っ張っているかもしれない。

 それでも、優しく見守ってくれるのが僕の母だ。だから母の優しさに甘えて、アルテミスと一緒に話した。

 時間が有限である事を忘れて。


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