第ⅩⅣ寝〜何もかもから逃げる卑怯者、いつか代償を払う日が来るんだろうな〜オマケのメグミ視点あり

 気付けば立っているサラに抱きついていた。

 俺はサラに逃げたのだろうか?

 それとも心からシアを諦めたのか?

 結局、シアの事を知ろうにも方法が無い。

 連絡手段を持とうとしなかった俺に問題があるのか…そもそも今更、他に本当に男が出来たのか確認するのに連絡を取ろうとするのはどうなんだろうか?


『俺以外の男と付き合うなら何か理由がある筈だ』


 そんな理由で?無茶苦茶だ、矛盾している。

 何もかも…何もかもだ…本当に自分が嫌になる。


 サラは言う、シアを忘れられなくても構わないと。

 仮で良いから、新しい道を、シアという偶像から2人でいつか抜け出そうと言う。

 偶像…だったのかなぁ…シアは…



 それからたった1週間…いや、2週間か…人は楽な方に流れるんだなと思った。

 特に何か変わったわけではない。同じ毎日…だけど、なるべくサラの事を考える様になり、気付けばシアの事を考えなくなった…と、思う。

 多分、そっちの方が疲れないからだ。

 あれだけシアシア言っていた俺の脳はあっさり裏切りサラを好きになろうとしている。

 ひでぇもんだ。



 登校で、そして昼休みまでは蘭子やメグミと一緒だがその後はバイト先で、ずっと一緒のサラと2人きり。

 まぁたまに鬼頭先輩もいるけども。


「ほーら、先輩!先輩を参考に作ったタタロ君!スマホゲームのキャラクターになりましたよ!やってみて下さい!そしてタタロ君を育てて下さい!レアはド最低の雑魚らしいですが(笑)」


 バイト先で、俺を参考にしたという鋲の付いた丸いモヒカンの恐竜?のキャラクター…色んなカラーがいて、全員小生意気な顔をしている。

 何十匹と種類がいるが全部ただの色違いというキャラのデザインを担当したらしい。

 ネットで見るとゲーム上の合成の養分として使われるらしい。何だかリアルと被っているようで辛いぜ…


「でも着実に仕事が大きくなってるな…一躍有名人になるかもな。この古本屋はともかく、鬼頭君とこもバイクと犬の中間みたいなキャラクターの看板、大事にしないとな」


「べ、別に有名になってもあれぐらい書き直しますよぉ!ここのバイトだって続けたいですし…ここのカウンターが1番描けるんですよ!この店だってお客さん来てたら潰さないんですよね?」


 ちなみにこの古本屋、戌原いはら書店という。

 サラが狂ったように「戌のつく書店に犬山さんが働く犬の書店…犬…犬…」と犬のキャラクターを作りまくった。


 そんなサラ、実は入学から外見は変わっていない。

 長めの黒髪に黒縁眼鏡、ちょっと陰気な感じでまとまっている。

 入学前の緑髪にガッツリ化粧、まるでシアが安い派手なロッカーみたいにしてるアレは何だったのかと思ったが、実はデザイン事務所の仮の宣材写真らしい。

 

「私は元々家族の中でも特に人見知りで、人と会う様な事はしたくありませんからね。事務所の人ぐらいしか会いたくないです。もしなんか写真が必要なら、あれだけ変えとけば気付かないと思いますし」


 シアを見て学んだらしい…シアは皆が皆、上手くいくように…そもそも人と敵対する様な性格ではないが、基本的に考えて話すのが好きではない…つまり社交的ではなかった。

 それが杭として出てしまった…そして打たれるのではなく、皆で引っこ抜こうとした。

 で、あれば杭として出なければ良い…自分はこの古本屋で、紙や液タブに描き続けられればそれで構わないと。

 関わるのは少ない信頼出来る人だけで良い、それ以上望めば絶対に後悔するとシアを見て思ったそうだ。


 まぁさらに言えば…サラは知らないがシアはもっと直接的に動いていた。

 蘭子と揉めたシア派の女に言うには『シアは何故、芸能活動に力を入れないの?』と聞いたところ『太郎君がやめろって言うなら芸能活動はいつでもやめようと思ってるから』と正直に言ったそうだ。

 結果、シアのストッパーは俺だという、誤解と敵意を生み出す。

 シアの恩恵を受けようとした奴らは俺の排除を決定し、シアの狂信者は直接的に嫌がらせをしてきた。

 

 結局人の悪意はどこまでも想像し難く、サラはそこまでは知らないし考えていないだろうが、皆仲良くとはいかないようだ。

 やり方は人それぞれだしな。

 

 それに今の俺は、サラと付き合ってるか…というと微妙な所だ。中途半端な事をしている俺に、他人の事はとやかく言えない。


 でもまぁ噂では学校では頭のおかしい妹がいるグレてる3年生になっているし、頭のおかしい妹に引っ張り回されてる地味な女の子、それがサラのポジションで落ち着いている。


 その頭のおかしいと言われる可愛い妹、メグミに関しては…一つ知ってしまった事がある。

 鬼頭先輩のバイク屋にはちょっとヤバい人達がいる。要は半グレという人達だ。

 ただ、何だろう。知り合いには甘いのか、良くロックンロールとは?と聞いてもいないのに語る洋服くれたりするおっさんが元々街の顔役だったらしく、鬼頭先輩のお父さんと同級生らしい。

 だからそのおっさんがいるバイク屋は基本的に争いがご法度になっている。


 そのおっさんが鬼頭先輩の事を気に入っているせいか、同時に鬼頭先輩のお気に入りの俺も気に入られている。


 そんな溜まり場のバイク屋で、明らかに半グレ感のある20代前半ぐらいの八代さんという人と知り合った。


「犬山ってまさか、犬山恵って親戚いないか?」


「てゆーか妹ですが?メグミが何かやりました?」


 まさかメグミが半グレと付き合いがあるとは思わなかった…どうするよ、俺…


「いやいや、俺は護身グッズのお店で働いてんだけどな。店の常連なんだよ。スゲー綺麗な女の子が親の承諾書持ってスンゴイ威力の買いに来てよ、色々相談されたもんだから覚えてんだよ。一応、そんな物使わなくても柄悪いのに絡まれたら『ハマの武具屋』の知り合いって言えばある程度は効果あるからって伝えてあるけど「はぁ?」みたいな返事だし、危なっかしい感じで…学校で大丈夫かなって。心配でさ」


「なんすか?ハマの武具屋って…危険な匂いしかしないんすけど…学校よりそこに出入りしてる方が危険な気が…ドラッグとか止めてくださいね」


「酷え言い草だな、兄貴も(泣)ドラッグはヤクザのアレだから禁止ってゆーか…まぁ良いや、それより早くタイヤ変えてくれよ…まぁ兄妹共々何かの縁だ、困った事あったら言ってくれや。兄妹のよしみだ、相談くらいは…」

「何か穴兄弟みたいで嫌っす、そういうのは鬼頭君だけで結構です」


 鬼頭君がバイクの下に潜り込んだ状態で不満を口にする。


「は?俺は太郎と穴兄弟じゃねぇが?太郎は蘭子とやってないだろうが?」


「でも学校いる友達のヨウタとは穴兄弟だよね?そんなに穴兄弟がいっぱいいて…『パァンッ』アイタッ!?」


 店に出入りしている蘭子にいきなりプラスチックの棒で殴られた、俺も鬼頭さんも。

 

「いや、事実だけどそうやって改めて言われるとキツいから太郎も鬼頭さんもやめてよ。イジワルだよ…馬鹿にされてるみたいでムカつくから」


「「「スイマセン」」」


 何故か八代さんまで謝っていた。


 帰ってから八代さんの話をするとメグミが「あぁ、店員の人ね」と何も覚えていない感じだったのが何とも…やはり気持ちというのは一方通行な事が多いんだなぁと思った。

 あんなに心配してくれてるのになぁ…


「いや、何かすっごい心配してくれてたよ?…だからまぁそれだけなんだけどね。とりあえず風呂にでも入れよ、俺トイレ」


「え?お兄ちゃんさ…まさかその人と私が何があると思ってる?ねぇ聞いてる?お兄ちゃん?ねぇ?」


 とりあえずウンコしたいから無視してトイレに歩いて行くと、後ろからずっと「ねぇ?そういうの良くないよ?ハッキリしないと、ねぇ…」と何か言ってるが、別にいちいちそこまで気にしてないし、急にウンコしたくなってきた。

 生返事をしてもしつこく追ってきた。


「メグミー!脱ぎながらお風呂に行くのやめなさーい!」


 母さんが何か言ってるが、無視するメグミ…俺もメグミを無視しながらトイレに入りそのままズボン脱いで洋式便器に座る。『ガチャ』


 あれ、おかしい。俺は便座に座ってから鍵を閉めるタイプなのに何故か座ったら直後に鍵がしまった。

 いやいや、それより何故か全裸のメグミが俺の座っている洋式便所に前向きで座ってきた。

 コイツ、洋式トイレ前向きタイプか…ずっと和式って言ってたもんな…じゃなくて!?


「勝手にさ、好きな人を決めつけるのは、良くないと思うよ?よいしょ、お兄ちゃん、聞いてる?おに…え?…あれ?…」


 シャアアアアアアア!!…ぽっちゃーん!


「イヤアアアアアア!?駄目っ!お兄ちゃん見ちゃ駄目っ!な、何でトイレにいるのっ!?止まら!止まっ!?駄目!馬鹿ぁ!」


 それは俺の台詞だが!?メグミは完全に俺の上にまたがり、正面から抱き合った状態で俺の股間にぶっかけやがった。その勢いで俺の本来の用も出た。

 パニックになったメグミが見えないように抱きしめてくる!苦しい!


「いやいや!トイレって言ったろ!?お前風呂って言って何で入ってくるんだよ!?」


「私はお風呂に入る前に出すの!いつもしてるじゃん!」


 お前の生活様式なんか知らんがな!?


「とりあえず出る!これは!洒落にならん!」


「動かないでっ!私が先にで!ちょっ待っ♥何やって!?♥しょこっ!?♥ふかにゃいでっ!ちぎゃう!?ぎぃ♥ハングゥっ♥鬼いっ♥鬼いっちゃっ!♥」


「アレ?おかしいっ!?拭いてるの拭いてる感覚しない!?何で?アレ?何だ?柔らかいし濡れ…」


 ギューっ!ガタタタガタガタッガタガタっ!


「オアァッ!?♥おにいっ!♥ニイッイッ♥イギッ!♥わじゃとでじょ!?♥鬼ッ!♥」


 俺は大が出てしまったので足を開いて素早く拭いて出ようとしたが、よくよく考えたらメグミがまたがっている訳で、前から拭いて手が届く訳もなくパカーっと開いたメグミのアレとアレの穴を、激しく拭いてしまった…


 拭いてしまった…じゃないわな、ヤベ。どうしよう…すると後ろに手を伸ばし鍵を開けたメグミ…何か勢いを付けて脱出しようとしてるのか、前後に激しく揺れる…が、その都度ブルルっと身震いするだけ…ヤベ、ちょっと生理現象が…


「おに!?硬っ!?駄目!ちがっ!♥違う!♥ちっがっはいっちゃ♥グギィッ!!!♥いやっさっ♥♥見ちゃらめへっ!♥」


 するとドアを開けながらそのまま一人バックドロップの様に廊下に飛び出るメグミ…上半身は廊下に飛び出て下半身は大股開きでこちらを向いている…


「かあさーん!たすけてくれえー!」


 俺は無様に内股で助けを呼んだ…変に見られるより大っぴらにしたほうが良い。間違い無い。


「何バタバタやってん…ギャーッ!?メグミ何やってんの!?」


 その後、メグミは引きずられながら風呂に向かって行った…


 そして無言で入れ代わり風呂に入る俺…記憶からなるべく消去しようと湯船で努力していたが…お風呂の入口…曇りガラス越しにメグミの影が見える。


「お兄ちゃん…わざと?見た?どう思った?」


「まず、『わざと』とか、そういう話じゃない。そして見たけど記憶から消す努力をしている…だからどうも思わない。可愛い妹だなぁと思っている…」


「そう…でもアレが硬く…いや、なんでも無いから」


 俺は好意聞こえないマンじゃない、だからメグミの言いたい事も…分かるが…妹だし…てゆーかこんなんばっかりは不味いだろう…説得力零だ…しかもラッキースケベじゃない、ただのスケベじゃねーか、これじゃ…誰とも付き合えないじゃん…



―――――――――――――――――――――――


※おまけのメグミ視点


 待ってよ、ちょっと待ってよ!?何アレ?絶対ありなやつじゃんさ!なんかさ!?私ばっかり我慢してない!?

 シアさんは彼氏出来てるし?蘭子さんは何か男沢山いるし?サラとは付き合ってないっぽいし?


 良いの?私で良いの?私で良いんじゃないの?血が繋がってないし!ハッキリしてくれないの!?

 お風呂から出て外から聞こうと思った…何で硬くなったのか?私に女としての魅力を感じたから?妹じゃないの?じゃあ…ちょっと入った事については?………………ンフーーーーーッゥ♥!!!!


 スタスタスタ…タッタッタッバタン!


「うああ嗚呼ああ!!!♥ヴァアアアっっ!!♥」


 下着姿で兄の部屋に侵入し、布団を抱きしめベッドに身体を擦り付ける。枕をハムハムする。

 風呂に入ってる僅かの時間…私の時間…


「何やってんだ、私は…こんな事して…」


 冷静に…なる訳が無かった。


「母さーん、洗濯のタイマー、私やっとくよ!」


 あのパンツ…あのパンツ…あのパンツ…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る