第Ⅷ寝 新学期の朝、そして充実した毎日…ホントかな?

 黒髪ロング、高校入学を機に眼鏡をコンタクトにした妹が目の前で、仁王立ちしながらニヤァっと笑った…


 「お兄ちゃん、入学式も一緒に行くんだからね?バイクは駄目だよ?」


「おおう、そだな…蘭子って今日行くのかな?」


「うん、蘭子さん行くって!!捕まえてる様に言われてるから、バイクで行かせないようにって…ん?どうしたの?」


 妹のメグミが朝食を食べ終え、テレビを見ながらパンを口に詰めてボーっとしている俺を監視している…バレてらぁ…

 それとちょっと考え事してた…


 シアが春休み前か…夜中に会いに来てくれてから…シアの事を思い出す事が多くなった。

 まるで妖精の様に…夢の様だった。

 でも、今なら夢でも良い…それだけで俺は満ち足りている。

 思い出すと顔に出るんだろうな…もう諦めるべきなのに…恥ずかしい…


 ちなみにウチの学校は入学式と3年の登校初日、つまりクラス発表が同日だ。


 正直、3年の初日から妹と登校ってどうなのよ?と思ったが入学式ぐらい良いかなぁ?

 入学式の前に母さんと合流するらしい。そういえばそんなんだったな。


 本当はサボる、もしくはバイクで行きたかった…だって授業無いし、式が終わったら2年、3年は即解散。

 授業日数にも入らんし。どうせ蘭子も来ないだろ?ぐらいに思っていた。


 余談だが一学年上の鬼頭先輩の卒業式は不参加だった。何故なら先輩が行かないからだ。

 流石ぼっち先輩、年季が違う。終わってから卒業証書だけもらいに行ったらしい。無論、蘭子も式に行ってない。

 まぁ、先輩のタイヤ店で卒業パーティーをやったし、その時は蘭子も来た。

 学校に友達いなけりゃそんなもんだろうな。


 その蘭子は、新学期の初日にクラス発表だけ確認して、俺と違うクラスだったら他校に編入すると言ってたからなぁ。どうなることやら…


 しかし…妹と一緒かぁ…目ざとい事にバイク登校は校則違反という事をメグミが調べてきたのだ。


「お兄ちゃん…悪い事しようとしている…」


 校則違反しないように監視すると息巻いていた。つまり毎日一緒に行こうとしとる…はぁ…お前はいつの間にお兄ちゃん子になったのか?あんなに険悪だったのに…

 深い溜息をついてるとお化粧をしていた母さんが洗面台から大声で言った。

 

「そうだ、太郎!学校終わったらスマホ買いに行こうね!メグミの分と2つ、3人で行こうね!」


「いや、俺はガラケーでい…「家族で流行りのSNSをするのよ!お母さんは!決めたんだから!」


 我が家の稼ぎは母さんの一馬力だ。

 俺のバイト代なんて塵芥と言える。更に言えばその塵芥でバイクのローンやガス代やパーツ代に消える。

 俺の学費やその他諸々は父さんの遺産もあるしまぁ平気なんだけど…多分俺は大学行かないが、メグミは出来が良いから大学に行くだろうしな…

 正直スマホ代はキツイと思うし…いや、色々言い訳並べたが、正直そんなに必要と思わない…だって友達いないしな(笑)


 ちなみにパソコンは蘭子の親から貰ったものがある。

 更に蘭子の家からWIFIの電波を頂いているのである。

 スマン多方面家…それで充分なんだけどなぁ…


 ピンポーンッ


 蘭子かな?早いな…俺と同じクラス狙いって言っていたが、5組あるのにそれ当てるってロシアンルーレット並みの確率の低さだからプレッシャーで早く来ないと思ってだけど結構余裕なのか?


「もうちょいで準備終わるから勝手に入ってー!」


 つーか、普段インターホン押さないクセになんな…



「お、おはようございます。犬山…先輩!」


 かすれた様な弱々しい小さな声…


 おお?おおお?サラ?何でサラが?シアじゃなくて?

 玄関には制服姿の黒髪オカッパ眼鏡のサラがキョロキョロしながら小さくなっていた。


 シアならまぁ分かる。たまに一緒に行ってたから。

 俺が1人で行きたがり、さらにシアは部活に入った為、朝練の関係で一緒に行かなくなった。

 まぁ、今や俺が一緒にいる事を拒否した挙げ句、学校すらろくに来ないシアが来る訳ないが…


 しかしサラは正直、小学校の時ですら一緒に行った事は無い。うちの家を何故知ってるのかのレベル。


「おお!?どうしたサラ?急に来て!?何かあったっけ?」


「そ、そんな、ここまで来たら…分からないですかぁ…あんなに休み前一緒に居たのに…一緒に入学式行ってもらえればなと思いまして…駄目…ですか?」


 いや、サラが勝手に俺のバイト先で、意味無くたむろしていた…だけのように見えたが…

 黒の縁が大きい眼鏡、正直小さい普段のメグミみたいなサラが、更に身体を小さくしながらモジモジしている…それをメグミが俺の後ろからジト目で見る。


 メグミは何でサラに圧をかけるんだよ…

  メグミもシア程ではないが身長が高く美人顔だが、メガネ無しだと目つきが鋭く、結構なキツい顔している。

 そのメグミが圧をかけると、高い身長故に上からで結構キツい。

 そもそも険悪な時は身長変わらず俺が弱そうというか実際弱いとはいえ、2個上の兄に普通に喧嘩を売る妹だ…そう、元からキツい。


「どうも、おはようございます…お兄ちゃん、誰…ですか?」


 何故、ジト目そのままで俺を睨む?


「あぁ、シアの妹のサラだよ。見たことないかなぁ?」


 ちなみに自分で言っといて途中で思い出したが、会ってる訳無い。

 何故ならサラを知ってるのは、シアの家に遊びに行った事がある奴しか知らない筈だ。

 しかもシアは親しい奴にしか妹を紹介しなかったし、サラは元々不登校で無口だしな…

 つまり大分レアキャラである…会うわけない。

 

 そんなサラが意を決した様に小さい声で俯きつつ早口でベラベラ話し始めた。


「いやぁ妹さん!は、始めまして!私、図浦サラと申します!妹さんですか!?大きい!年上ですか?お名前はなんて仰るのかしら?同い年でしょうか?凄い綺麗な顔ですねぇ?私は小さいから身長が大きいのウグッ!?ヒッヒぃ!?」


 グワシッとメグミの手が伸びる。


「ちょっ!?メグミ!?」


 メグミが片手でサラの顎を、まるでワイングラスを持つように掴みそのまま指で左右からほっぺたを押した。サラがまるでイラストのタコのような口…その口にキスするんじゃないかぐらいの距離に顔を近付け目を細める…やべぇ、止めなきゃ…


「で?貴女はお兄ちゃんの何なんかなぁ?」


「しぇ…しぇんぱいひゃ…シャラにょ…おうじさま…きゃ…きゃっこよひ…おうじゅ…」


 涙目で謎の訴えをするサラ…ひでぇ…


「メグミ、手を離せ。そういうのは良くないって何回言えば…」


 肩を掴んで止めようとするとギギギっとこちらを向いた…


「お兄ちゃんは…どう思ってるんですか?」


「サラは可愛い後輩『可愛い…!?』…そしてメグミも可愛い妹だよ『可愛い妹!?』そうだ、どっちも可愛いのに争いは良くない、可愛いは良いものだ」


 自分で何言ってんのか分からなくなったがとりあえず朝から喧嘩とか面倒くさいからよせ。


「お兄ちゃん…私の何処が可愛いか言ってください…3つ」


 まだ続いてる…しかも敬語の時のメグミは半ギレだ…何でだよ…


「一つ、眼鏡が無い可愛い。2つ、制服可愛い。3つ、今が可愛い。」


「ンフ!?♥い、今!?」ググゥッ

「フギュギュ!?」


「違う。サラを顎と口を締め上げてるのが可愛いんじゃない、ずっと可愛い妹だって事だ、もういいだろう?(めんどくせぇ)仲良くしてくれるともっと可愛いかもな」


 パッと手を離しメグミが手を出し握手を…


「おい、メグミ。左手は駄目だろ確か…右手にしろ…」


 少し頬を膨らましながら右手を出す。


「それじゃ仲良くしよう。私は犬山恵、さっき入学式って言ってたな。なら同い年だ。よろしく。」


「ひ、ひゃい!ひゃい!よろひく!」


 二人で握手をする姿を見て満足な俺。あぁ満足だ。満足満足と頷く俺…を見る、いつの間にか横にいた蘭子。


「太郎、ヴァイオレンス路線とハーレム路線の間で何をやってるの?」


「ハーレム路線なんて人聞きの悪い、世界平和だよ」


 なにそれ胡散臭いと言いながら玄関に寄っかかって待つ蘭子…そうなんだよなぁ、蘭子以外は最近まで中学生だった2人、こんなハーレム鬼畜だよ(笑)


 登校すると刺さった奇異の目。

 まずは空気な俺、蘭子はパッとゆるフワ外見だが近くで見ると雰囲気はダークネス、メグミは同い年に見えかねない外見で圧が凄い、そしてサラはおどおどキョロキョロ…RPGのパーティーだったらすぐ解散だな、このパーティは。

 サラが「ぅぉぉ」みたいな呻きをあげている…


「ぅぉぉ…九州の学校、生徒5人ぐらいだったから…人が多くて…人が凄い…ぉぉ」


「え?九州の学校!?シアと同じで海外に行ってたんじゃないの?アフリカとか国で…」


 九州とは初耳なんですが…何でそういう事先に言わない…


「え?アフリカ!?お姉ちゃんも九州いましたけど…あんまり…一緒には…いませんでしたけどね…何故アフリカ?」


「いや、俺が聞きたいよ…お前ら姉妹は聞かないと自己紹介もろくにしないのな…シアも動物が沢山の所しか言わんし、他の奴もアフリカと勘違いしてるぞ…」


「えぇ!?まいったなぁ…お姉ちゃんはいつもそうだよ…」


 ちなみに図浦姉妹は喋らない妹に活発で妹思いのシアという関係で、特に仲が悪い訳では無い…と思う。


 ヘンテコパーティで学校まで行き解散…俺と蘭子は3年のクラス発表されている掲示板の前まで行き…


「おぉ、太郎と一緒だ!ロシアンルーレット!弾入ってたよ!ハハハ、凄いね」


 弾入ってたら死ぬが…

 とにかく蘭子とは一緒のクラスに…と思ってクラス発表の紙を見ていたら…俺、犬山と多方面蘭子の間に…『3−B 図浦 シア』の名前があった…



※まだ、もう少しだけゆっくり更新です。話も進んでないのにゆっくりとはこれいかに。

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