蝋で出来た羽で翔んだ妹は空だけを見ていたら羽が消えた、元から羽のある姉は地を見ていたら叩き落された

知らぬは罪〜【サラ】は夢幻と現実の狭間でようやく人を知る

 人より優れた姉 努力が必要な妹

 誰しもが見る姉 誰も見てない妹

 父に似て美しく 心が純粋で性格の良い姉 

 母に似て凡人で 見栄っ張りで根が暗い妹


 日本で売れないファッションデザイナー兼スタイリストだった母は、ヨーロッパで活躍していたモデルの父と結婚した。そして離婚した。

 とてもきらびやかな世界の話。

 そんな世界での離婚話、つまりよくある話。

 母が父と別れた原因、父に出来た新しい女、母の態度、私が思う最も大きなすれ違いは、母が姉を芸能の世界に入れようとした事だと思う。

 ちなみにそこに才能の無い妹の姿は無い。

 

 父は男だったら自分と同じ道に入るのもやむなしと考えていたそうだが、2人の女の子が出来て考えが変わったそうだ。


 直接父には聞いていないが、もし姉だけが突出して、妹が外見の才能で差別されたらどうすると。

 父はモデルをしていたが不思議な人で、私に似て内向的でゲームや漫画を好むオタクだった。

 それに自分の事がとても嫌いだったそうで、行動力があり野心家で常に人が周りに集まる派手な母に憧れた。

 つまり妹は既に父の中で姉に負けていた。


 父はよく勘違いされていたという。

 たまたま外見だけでモデルになれた…と思われる事が殆どだが、小さい時からハリウッドに出入りするような俳優の親に連れられ、様々なブランドや雑誌から仕事が来るようになるまで本当に大変だったそうだ。それはまさに格差と陰謀の世界。

 父は本当はプログラマーや脚本家の世界に行きたかったが、悔しい事に才能が全く無かった。

 だから自分の外見と興味の無いファッションを学んだ。

 子供には、そのような苦労とは無縁でいてほしいと考えるようになったそうだ。

 才能に振り回されず好きな世界で…苦しむとしても好きな事で。

 そして…せめて自分で考えられる日まで。

 その話に妹は該当しなかった。


 母は、真逆であった。

 とにかくきらびやかな世界に入りたいと野望を持って九州から上京…有名なアパレルの会社に入るべく都内の専門に入ったが…才能、容姿、コネ、金、全てが足りずスタイリストのバイトで生計を立てていた。

 スタイリストのアルバイトで海外からの新進気鋭のモデルと来日していた父と出会い、結婚してから暫くして現実を知り仕事をやめた、静かに子育てとヨガ教室を営んでいた。

 しかし姉が生まれた時に変わった…正確には野望が再燃した。

 父親が有名なモデル、結婚当初は父のコネで多少なりとも名前を売ったが、自分の実力は理想の遥かに手前であった事が心残りであった。

 そして、父の力を借りても届かなかった…きらびやかな夢。


 しかし生まれてきた娘が…姉が両親を遥に超える外見と中身、美貌と才能を持っていたら?

 これも、またよくある話だと思う。

 結果、母は娘…姉に成功者としての自分を投影させる。

 母は姉の才能に嫉妬し、姉の才能に溺れ、道を示し続けた。

 結果は…残念ながら、姉は拒否した。

 姉の野望は…執着は…その才能は全く活かされない運命の人へ全力で向かった。

 中学時代はもめに揉めた。姉は家に帰らなくなった。

 そしてそこにも妹の姿は無い。


 

 その妹はずっと両親を見ていたが…離婚する寸前まで妹を見る事は無かった。


 妹は…私は知っていたよ。

 パッとしない外見は母似、ウジウジと無口で嘘つきな性格は父親似、姉と真逆の私は手のかからない…じゃない、お互い目を背けたい部分の負の遺産。

 勿論そんな家庭環境で性格だ、学校に行っても存在感は無かった。

 学校には行ったり行かなかったり。


 ふと、父の持っていた小説を見ていた。

 ある日、書いてみようと小説を書いたが意味不明なものになった。

 今度は挿絵の模写を始めた。上手く描けなかった。自分で描くのはやめた。

 その後、漫画を見るようになった。

 普通はその後、漫画を書き始めると思う…だが私にはストーリーを作る事が出来なかった。

 自分の物語すら始まっていないのだから。

 他人の気持ちが分からないのだから。

 他者に関わっていない者が何のストーリーを作れるというのか?

 小説は最初の始まりすら書けなかった。

 だから挿絵の時と同じ様に漫画のキャラクターを書き続けた。

 残酷な事に絵の才能も乏しかった。

 だから今回は何十枚も書いて消して…やっと普通の子供のレベルだった。

 姉は造形も芸術も音楽も才能があった。漫画のキャラクターを書くにしても1回か2回書いたらすぐ書けるようになる。詩も賞を取り歌も上手かった。


 その姉が自分の友人達に「妹は絵の才能があるんだよ」と自慢気に言った。


 悔しかった…私は悔しかったんだ。

 他の誰よりも…姉に言われた事が。

 その時はダンマリ、後で部屋で隠れて泣いた。

 それでも才能の無い自分はただ、悔しくて情けなくて繰り返し描くだけだった。

 


 私は自分の世界という小さな箱のような部屋で、じっと同じことを繰り返す事しか出来なかった。



 そんな毎日が続いたある日、姉が男の子を連れてきた。彼は言った。


「シア、これは絵の才能じゃないよ。サラちゃんは1人でもやり続けられる、強い心と努力出来る子なんだよ。誰にも何にも言われず繰り返し描くなんて凄い…だって絵の事が分からない僕でも分かる凄い絵だもの。僕もそんな努力が出来たらなぁ」


 才能じゃないもの…ただ、目的もなく延々と描き続ける事の意味。努力というの?

 私の暗い…歪な小部屋に光が射した。

 始めて自分を見てもらえた気がした。

 嬉しかったな…

 それも、才能の塊である姉が尊敬し憧れている人に。


 それから、関東を離れ九州に…両親の離婚は秒読みらしいが、そんな事は知らない。

 理由はしらない、興味も無い。

 私は元々無口で、無表情。意見も聞かれず何か提案も望まれもしない。

 勉強は最低限した、と言ってもあの人に褒められた私の唯一の長所、努力という部分が勉強もそれなりの成績をキープしていた。

 そして、学校にも行かず絵ばかり書いていた。


 姉は相変わらずフラフラ、自分勝手にしていた。

 しかし、ろくに勉強しなくても平均より上を行く、そんな姉が羨ましかった。

 姉はいつも、黙って山の中に入っていった。

 

 「憧れの人は本当の私を見てくれた、だから私は忘れないようにするの…野を走り山を駆け自然を知る…それが本当の私だって言ってくれたから」

 

 憧れの人…きっとあの男の子だろうな…良いな…

 私もいつか会いたいな…また、褒めてもらいたいな…そんな事を思いながら描き続ける…

 母がパソコンを買ってきた。

 これからはパソコンの時代だという…が、母も姉も触らず私だけがパソコンで遊んでいた。


 あるアートデザイナーの絵が目につく、少ない線でデフォルメされたポップな絵…これならと思い、描いて書いて描いてイラストサイトに投稿をし続けた。

 コメントがあれば素直に取り入れまた描いた。


 最初に見たアートデザイナーのポプラさんという大人…その人からDMを貰い、私の中学生活が変わった。あの人と同じ…この人も褒めてくれた。


 私にイラストを、ポプラさんの事務所から仕事として依頼したいと。

 自分のキャラクターが、何かの電車か何かのイメージキャラクターに使われたらしい。

 寝耳に水とはこの事だ。そのキャラクターが使われるたび、微々たるものだがお金が入ってきた。


『もっと描いてほしい、君の絵は光るものがある』


 私には才能なんて花は無く、開花はしなかったが、代わりに努力が実った。

 余計な事は考えずに、一心不乱に描いた。

 少しでも名前が売れてゆく、評価される、悪評も付くがファンも付く。

 ペンネームを決めた…

 私はペンを滑らせる音がシャカシャカするから。

 私はいつも家族の掌の上だった。

 そしていつか才能の蓮華が開くように。

 それが『釈華shaka』

 思えば傲慢なペンネームだ、今となっては私はいつか自分の掌で周りを転がそうと思っていたのかも知れない…傲慢の片鱗がそこにあった。


 姉は先に神奈川に行き、私も2年遅れで行く事になった。

 描き続けたこの数年、ファンが出来た、仕事もした、自信はあった。

 父はどこに行ったか知らない、だけど母と姉に今度こそ私という存在を見せる。

 そして思い知る事になる。姉…図浦シアという化け物を…


 姉は…私が受験の準備をしながら、ネットで調べ物をしている時にいきなり出てきた。

『美し過ぎる女子高生、陸上高校記録更新へ』

『記録を出したら即引退!?モデルの道へ』

『10代のカリスマ!』『初のリアライズ専属モデル』『憧れの同年代№1』『今年のアイコン』


 怒り?怯え?とにかく動悸が止まらなかった…ネット広告では姉の姿を見ない日は無い、コンビニに行けば必ず姉が表紙の雑誌を見かける。

 向こうに行って1年足らずで…こんな事ってあるの?

 テレビを付けたら姉が出ている。

 こんな九州の片田舎でもシア、シア、シア、シア。


 そして『リアライズ』…父のアパレル業界の親友がデザイナーの超有名ブランド…姉は母も父も手に入れ、とうとう世界を手に入れた。

 私の絵…使ってくれるのは小さい田舎の鉄道会社、電車の擬人化キャラクター…かないっこないんだよ…あんな化け物…

 私の中に出来た小さな誇りは姉に叩き壊され、完全に自信を失った。


 そして中3の夏に神奈川に行った、何やら皆忙しいらしく、家族で会って話せるのは1日だけ、その後会えるのは、当分先になりそうだ。

 書類の手続きもあるし、姉は久しぶりに休みだからと父以外の家族が揃ってお寿司を頼んだ。


 まともに話したのは2年…いや、もっとか。久しぶりに会った姉は綺麗だった…まるで女神かのような佇まい、外見…立ち振舞…だけど憔悴している?


「お姉ちゃん、なんか辛そうだけど…仕事大変?」


 思ってもいない事を言うが…意外な返事が返ってきた。


「サラ…ごめんね、せっかく来たのに…仕事は大変じゃない、どうでも良いもの…ただ…お母さんには内緒ね…犬山太郎君、覚えてる?そのね、タロァにふられたの…もうタロァに会えないの…話せないのがつらいの…タロァ…会いたいよ…タロァ…」


 メソメソして…何だよタロァって…あぁ、憧れの人か…最近忙しくて忘れてたけど…え!?フった!?この姉を!?


 全てを手に入れられる才能と力を持つ姉が手に入らない人。憧れの人。どんな人になったんだろう?

 まず、もしかしたら今の様子を見れるかもと姉を騙し、犬山先輩の住所を聞いた。

 そして家に行った時に、先輩の母親にバイト先をちゃっかり聞いた。善は急げだ!


 久しぶりに会った憧れの人は少しやさぐれていた。どこにでもいそうな普通の人。

 でも覚えていてくれた。イラストレーターで多少なりとも名が売れた私を『あの分厚い小説が好きなサラ』と言った。


 ネット界隈とはいえ、釈華shakaといえば多少は…とも思ったけど…全く知らなかった。

 小説が好きだったが書けなくて見るのやめていた私の過去を知る人。

 何だかまた読みたくなった。


 私の過去を知り、今を知らない人。

 子供の時に一度会った事のある蘭子さんに偶然会った時に聞いた…姉を背中を押し、学校では孤立し、それでなお…優しく、姉を応援し独りの道を行く変わり者。

 そして、姉と話した私としては、誰しもが羨み欲しがる姉を突き放した人。


 とても興味を持った…憧れの人…私の人生に…照らす何か…見えた気がした。


 夏休み、受験勉強をしつつ、イラストレーターの仕事の打ち合わせをしながら、先輩に会いに行く。


 楽しかった…ただダラダラ話すお客さんと店員…初めて同年代と同じ事、普通の事をした気がする。

 青春を感じ色、私の感性に色がついた。

 その経験はイラスト、創作全てに活かされた

 躍動感、色味、感情…キャラクターに生命が吹き込まれた。

 キャラクターも私自身も、表情が活き活きして来たと褒められた。

 夏休みが終わり九州に帰ってからも先輩の事が気になった。

 連絡先聞いとけば良かったとか、手紙を書こうかとか、色々考えた。

 次の休み…冬休みが待ち遠しく、高校生活が楽しみになった。


 そして…冬休みも先輩の家に入りびたり…私の人生を変えた出来事が起きる。



「お前、人の女に、なに手ぇを出してんの?」



 姉のストーカーらしき人がうろついるのは知ってた。

 だけどまさか、私に声をかけてくるとは思ってなかった。

 先輩には冗談のつもりで言っていた…実際に起きるとは思わず…恐怖した。

 姉と同じ様に、姉も撮影したから今度写真を撮らしてほしいと…き、気持ち悪い…


 知らない人に声をかけられる…私は本来、人見知りで怖がりだ。

 先輩に声かけるのも清水寺から飛び降りる思いだった。

 怖い、怖い、この人怖い!誰か助けて!

 足が竦んで動けず、やめて下さいとしか言えない時に…その人はけたたましい音を出した鉄の馬に乗って…現れた…


「お前、人の女に、なに手ぇを出してんの?」


 聞き覚えのある声、先程まで一緒にいた人の声、何故彼がそう言ったか分からない。

 そして名前も名乗らず、ただ逃げろと手で指示された。

 姉が言っていた…この人の為ならなんだって出来る人がいると。

 それは容姿や性格、行動や心では無く、運命の人だと直感が教えてくれると。

 鉄の馬に乗り、私を救ってくれた人。

 犬山太郎さんの声をした人に…運命を感じた。


 私のすくんでいる足が動き出した。

 この人の言うとおりにすれば…この人の為なら動かない足も動く!

 私は脱兎の如く走り、家の中に逃げ出した。


 そしてバイクの音が家に近付いて来た…逃げられたか確認しに来たのか、たまたま向かう方向なのかは分からない…いや、無事を確認しに来たに決まっている!

 だってこの人は…私の王子様だから…


「先輩っ!ねぇっ!先輩でしょっ!?」

「昨日助けてくれたのは先輩ですよね?」


 分かっていて…知らないふりをする…

 先に繋げる意図も無く、下心も何も無く…彼から見ればただ幼馴染みの妹というだけで助けてくれる…


 そして、この人のおかげで…私の想像していた暗く冴えないものである筈の高校生活は光り輝くものとして始まった…


 生涯を共に出来る様な親友、メグミちゃん。


 アーティストとしての成功、墜ちた姉を越える。


 無縁であった、時に暖かく、ドキドキの止まらなくなる気持ち…恋をする。


 全ては彼が与えてくれた…颯爽と現れた王子様が与えてくれた… 好きです…先輩…大好きです…


 個人的に…私だけの…先輩の絵を沢山描いた…先輩と私の物語の文章も沢山書いた…

 だけど先輩との毎日は…私の想像を常に越えていた。

 これが恋であり、人を愛する事なのかと…


 …眩い王子様が、醜く暗く、壁の花であった私をお姫様にしてくれた…


『姉の歌う架空のキャラの演出依頼が来たんです』


 …より高みを目指し王子様に見てほしかった…


『忙しくなりますけど…絶対こまめに連絡取りましょうね!』


 …姫に群がる大人。善意の皮を被った悪魔達…

 …そしてやってしまった…止められなかった…

 …少し考えれば分かる?…私は知らないから…


『今の私じゃ見えないものを…これなら沢山見えるから…もっと高く翔ぶために…何でも良いから…より高く…深く…もっと…もっと欲しい…』


 …そして姫になった私の傲慢が世界を壊した…

 …先輩と未来の為…そう自分に言い聞かせて…

 

『先輩の為に…私は色んな世界を見るんだ…良いも悪いも…でも、私だけが知ってれば良いんです。私が…先輩に伝えれば良いんです』


『本当に好きなのは先輩です これはあくまでアートの為 高く翔ぶ為 そして、二人の為 私なら出来ます 先輩なら分かってくれます 伝えなくても、繋がってますから』

 

 知らなかった…自分なら上手くやれると思った

 芸術、アート、創作、美しいものには毒がある

 世界は広がる…ドラッグ、SEX、様々な欲望


「…サラは父さんと母さんが離婚した原因分かってないの?…口に出さないと伝わらないの!大人だからって皆信用はできないの!こんなグチャグチャ!親を見ても…私を見てもまだ分からないの!?何のためにタロァを…」


 嘘だよ…離婚の原因も!先輩と上手く行かなかったのも!原因はお姉ちゃんでしょ!?全部お姉ちゃんが悪いんでしょ!?私ちゃんと聞いてないもん!私の何が悪い!?誰が信頼出来るなんて分かる訳ない!


「確かに、大きく見ればした事は同じかも知れない…でも…私と太郎の関係はサラが考えているようなものじゃないんだよ…でも、分からないよね…勘違いさせた…かもね…ゴメンね…」


 何で!?そんなの分からないよ!?先輩が唯一付き合って…今でも親友の人なんだから何でも知ってるんじゃないの!?心が繋がっていれば…先輩は…


「親友だと思っていたわ…貴女達姉妹特にアンタの裏切りは兄から人生を奪い私から兄を奪った…死んで詫びるなんて許さない…兄を想うなら一生懺悔し続けろ…見ているからな…ずっと…ずっと…ずっと!」


 応援するって言ってたのに!?どっちが上手くいってもいかなくてもずっと友達だって…何が間違えていたのか教えてよ!?私…私…本当に…知らなかったんだよぉ…


 いつしか…元々の勘違いが重なり…手に入れた者の余裕…そして無知な余り…また矮小な者が成功した故の傲慢が…姉と同じ…許しを請う事も罪を償う事も出来ず…いや、姉よりも、誰よりも…

 私は自ら王子様を最も悪質な方法で裏切った。

 私は…そして私の周りは王子様を苦しめた。


 

 …それでも…皆が私を責める中…先輩は許してくれた。教えてくれた。背中を押してくれた。

 姉も、同じだったのだろうか…この胸の痛み…


「俺の事は考えなくて良い、1人でも描き続けられるだろ?それがサラなんだよ。振り返っても良い、止まっても良い。でも…作り続けろよ?自分の世界を愛し続けろよ!俺はいつでも応援してるからさ」


 先輩は知らない…私も知らなかった。

 絵の影響は、影響を受けた人間の元を離れても進化する。離れ、過去の技術を殺し、自分を心を吹き込む事でより進化する。

 ましてや私を裏切った師だ、心置き無く葬れる。


 だけど、自分の心や魂が影響を受けた人、心を進化させてくれた人間から離れる事は…技術の死と心の死は全くの別物だと…今更ながら知る。

 悲しい…寂しい…ごめんなさい…懺悔した所でもう遅い。

 心を裏切った人間に何が出来る?後から知ったところで何ができる?償いは永遠に終わらない。


 その人は私より先、遥か彼方に高く翔んだ


 気付いた時には遅く、この手はもう届かず

 

 昨日も描いた、今日も描く、明日も描こう


 先輩と過ごした幸せの先、空想だけを描く


 それしか描けない、想像の翼はもげたから


 狭い箱の中で、空に向かい描き続ける償い


 醜い仮の恋人、別れるは必然、それでも…


 別れは永遠に来ない、その前に翔んだから


 ハッピーもバットもエンドは永遠に来ない


 先輩 王子様 助けて 救けて タスケテ


 今日も甘えが私をキャンバスに向かわせる

 

 釈華…シャカシャカ…しゃかしゃかしゃか…


 常に悪魔の目が睨む…死ぬまで描き続けろと








 

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