幼馴染の彼女をNTRされても僕は絶対許すマン、しかしもう一人の学園一の美少女である幼馴染が「それが許されるのはサバンナだけ、動物園では許されない」と恫喝する。僕は2人の幼馴染とそっと距離を取るが…?
望まぬ天空〜【シア】の本能が会いたいと鳴いている[過去]
望まぬ天空〜【シア】の本能が会いたいと鳴いている[過去]
2歳ぐらいからの記憶はある。
パパやママに色んな所に連れてかれた…色んな景色が電車の窓みたいに流れていく…見ていた景色を覚えている。記憶力はどうやら良いみたい。
暫くして赤ちゃんが産まれた、私の妹、サラだ。
私はお姉ちゃんか、お姉ちゃんらしく出来るだろうか?
ボンヤリとした景色の中、両親は忙しいらしく、見様見真似でオムツを替えたり着替をさせた。
パパとママが褒めてくれる、とても嬉しかった。
『シャラ!シャラ!わらしがなんでもしてあげる』
サラを可愛がったり面倒を見ていた記憶で埋まる。
幼稚園に入ると他の子と遊ぶ事になった…ずっと妹の面倒を見ていたから、他の子が幼く見えた。
言う事を聞かない、運動も出来ない、歌も歌えない…不思議だった、皆、何も出来ない事に。
私は大体出来たから、理解するのは出来るみたい。
気付けばイベント毎では中心にいた。
先生は「この子なら出来るから」という。
髪の色、眼の色が珍しいからという理由なのか、何なのか分からないが、とにかく幼稚園のパンフレットには出るし、イベントの挨拶からピアノの演奏まで全部やった。
小学校に入って違和感を感じた。
先生の教え方や考え方が違うのか、私にとって有利な事が幼稚園の時より増えた。
また、どうやら同年代に比べて頭と身体の成長が速かった、その事で違和感は強まった。
私はこのまま時を速めていく事に、知識や常識という情報をどんどん詰め込んで行くことに不安を感じた。
自分ではない周りの理想・誰かの為の理想の私…になる気がした、それは自分が無くなる感覚だった。
何となく、これではいけないという曖昧な感覚。
しかし、母親は生きる速度をより速めようとした。
この不安はなんだろうと思って本を沢山読んだ。
それでも結論は出ないせいで、難しい言葉を無駄に使って大人に質問を繰り返す、今で言う厨二病的な小学生になってしまった。
ある時、運命的な言葉との出会いをする。
動物の本で知る…【本能】そして【野生】という言葉と性質。
私の本能ってなんだろう?と考えていた。
小学生低学年…まだグループもあやふやな年頃。
地域の女子グループに入れられそうだったが変な感じがしたので上手く逃げた。
登校だけ一緒にする、何だか違う気がしたから。
そして近い内に動物園に行く遠足があるという。
動物の本に書いてある【本能】【野生】を知りたいと思った。
当日、コースは決まっていたが正直広場で遊ぶとかはどうでも良かった。
私は動物園に入ると…人間とは別の生き物…身近な犬や猫とは違う、我々から大きく外れた生き物達。
自由にしているとはいえ檻の中…されど、その動物達の虜になった。
圧倒的な生命力や逸脱した生態、種が違うという事。
目に映るモノを追いかけ続けるうちに、私は進み続けた。コースを外れ動物達を追い続けた。
初めて正しい事や常識、大人の指示から外れた事をした。
気付けば迷っていた…結局、独りきりを自覚したら不安に襲われた…動物しか居ない所…何も分からない…誰もいない…そして怖くて悲しくて泣いた。
私の【本能】はどこまでも人間だった。
私に【野生】はどこにもなかった。
不安で塗りつぶされていると、何かに覗き込まれた…一瞬恐怖したが同じ年頃の人間だった。
そこで、タロァに出会った。見た事あるような気がする…同じ学校?向こうは私を知っているようだった。
「僕…よく、ここ来るからさ…普通に回っても面白くなくて…だから自分で勝手にコース作って回ってたんだ…たからここにいた事は内緒に…だから…あ…えーっと…大丈夫、大丈夫だから!ね?…」
この人は気付いたんだ…私が不安な事、私が泣いてる事…本当は……とても弱い事。
他の人より何倍も先に行ったつもりで、何でも出来るつもりで、私は他の人間とは違うからといって見下していた事…
誰の助けも要らないと言いながら勝手に進み人より出来る事を鼻にかけた結果、迷子で泣く無様…
それが怖くて、情け無くて、何処までも人間で、寂しがり…なのに強がる事。
言われた事は出来るから。でも…私を見てくれていればすぐ気付く事に、タロァは気付いた。
「あ、あの…名前は!?い、一緒に回ろうか?僕は犬山太郎!ここよく来ているから、ガイド出来るよ!まず…このウンコ知ってる?模型なんだ!このわざわざ石の上に置いている、何のウンコか知ってる?プレート見てよ!【動物の糞の化石】ど・う・ぶ・つだって!それが知りたいよ!でもどう見ても人間のウンコだよね(笑)」
この人だ…この人なんだよ…本当の私が見える人…掴まなきゃ…
本能が囁く…不安だった…安心して…嬉しくなった。
そのまま…今考えれば…多分、好きになった…
緊張した!か、考えられない!?喋らなきゃ!
「アハハ!太郎太郎か?太郎はばかだ!シアは!私はシア!この動物の糞の化石が好き!だって!動物が不明!意味不明っ凄いっ!化石だって!糞の!アハハ!アハハハハハ!」
自分でも分からなかった…何も考えられない、ただ思いつくままに喋る。
何も分からない…運命には全力で!変な汗が出る!でも!そうしないと!伝わらない気がしたから!
泣いてたのに、涙の種類が悲しいから楽しいに変わった。全力で!泣きながら笑った、楽しい!
緊張していたのかな、それともタロァに近づきたかったのかな?言葉遣いも変わった。国語で学ぶ日本語ではなく、本能のままに会話した。
それにタロァはフラリフラリ、一緒に行く!と行ったら…じゃついてきて!と言い、フラリフラリと動物園を歩く。
タロァは私に自由に話しかける…
楽しく明るく屈託無く無垢に、そして心から正直に話す。私の目指す【野生】だった。
あぁ…私が小学生に上がって暫くした時…獣から人に変わっていく過程に感じた違和感に気付いた。
私がいる所、そして速足で人より先に向かっている所…それは人同士が群れ、複雑難解な言葉を使い騙し利用する。あらゆる道具を自分を実力以上に見せ、自分の力の無さを他者という偶像により解決する。
そしてこんな事をグズグズ思っている私は、何処までも人間で、タロァの行く道、自分の世界を真っ直ぐ歩くタロァの孤独はどこまでも眩しかった。
それから小学校は私にとって、タロァと私の動物園になった。
タロァと遊んだ!タロァと遊んだ!タロァとタロァのパパと動物園に行った。繰返し繰返し。
もう何もいらない、タロァと一緒!
小学校高学年になれば流石に気付く。自分の気持ちに名前をつけるなら…恋愛だ。
タロァは野生に近い…でも私は人間だ。
独占欲や様々な欲望が渦巻いていた。
ずっと一緒にいる約束をし続けてた。
お別れで泣いた、半身が消えるのだから…当たり前の事。
いつか帰る約束をした。熱い抱擁をした。
ちゃっかり…チューした♥
そして、高校生1年で帰って来たときとうとう爆発した。
私は太郎が好き、自覚している、認めている。
好き過ぎて!おかしくなる!誰にも負けない!
運命を感じた。例えそれがウンコの模型でも!
普通の人に話せば…そんな馬鹿な運命があるかと言う。
だけど、この星に生まれて、同じ年に生まれ、同じタイミングで、同じ場所で、同じ事を疑問に思い、同じ生きがいを感じ、同じ物で笑った。
これ以上の運命を感じる要素があるというの?
高校一年の夏前に編入してきてから、ひたすら太郎にアプローチした!
ずっと待っていた3年間、期待通り太郎と遊んでいるのは楽しかった。嫌なことも、考えたくない事も全て頭から消滅した。私の運命の人!
でも、小学生の時とは違う…私だって女になった…と思う。自分で言って何だかなと思ったけど。
綺麗になったかな?タロァ好みの女になりたい。
タロァが自慢できる女になりたい。タロァと…一つになりたい♥
だから太郎に伝える、何度も、何度も、何度でも。振られても、嫌がられても、太郎の望むままに、太郎の望みは何かと吠え立てる。
そして行動に出る、思いつく限りのアプローチするうちによく分からなくなって、だんだん変態みたいな事をするようになったけど、
そして高校2年になった。
時間が無い…とにかく時間が。そんな気がする。
何だか分からないけど追いやられている。
周りが私を急き立てる、何故だ?
私は太郎といれるなら何でもするよ!頑張るよ!
太郎は…いつも困り顔…どうすれば良い…どうすれば…
そんな時、噂が噂を呼び、嘘が嘘を塗り替え、私の存在が、変わっていく。
人がいっぱい、早口で喋りかけてくる。
私は日本人だ。だから日本語は分かるけど…そんないっぺんに早口で言われてもわからない…
それに私は…海外なんて行ってない。九州の田舎に…母の田舎に、中学の間だけ居ただけ。
パパの国を聞かれたから…答えたら、外見の印象だけで帰国子女になってた。
太郎との会話は必要最低限の言葉でしてたから、だって太郎には伝わるから。
そのままクラスの人に喋ったら日本語が苦手扱いになってた。
ただ、運動神経は元から良く、中学も野良犬やらと走り回っていた事もあって、陸上なんかはすぐ結果が出た。
九州に行ったのだって、パパとママと妹と、家族一緒に居れる最後の時間の為だった。
パパとママにどこかズレが生じていたのは知っていた。お仕事でパパは色んな所行ったり来たり、九州のお仕事でパパと一緒にいるのは最後。
パパは他に女が出来た。パパとママは冷めた。
それについては何も興味無かった。ただ、ママの気持ちは分かった…同じ事を太郎にされたから悲しいから。
妹はママともパパとも居たくないからママのママ、お婆ちゃんのいる九州に残るとか言い出しママと喧嘩する。その関係でお婆ちゃんとママが喧嘩する。
色んな所で喧嘩が絶えない。パパは仕事で家にいない。帰ってきてもママと喧嘩。普段はサラとママが喧嘩。おばあちゃんとママが喧嘩。
パパとは最後なのに…サラのお姉ちゃんなのに…私は現実逃避した…サラを置いて2年間は九州の山で駆け回った。何も考えたくなかったから。
お婆ちゃんは優しかったから、私が学校に行かず山で遊んでいる事をママに言わなかった。
今では後悔している…もう少し話し合うべきだった。
中学でも友達か出来なかった。そもそも同じ学年の子供がいなかった。全学年で5人の中学。皆、真面目に勉強して、早く街に行きたい人ばかり。
結局…思春期も手伝って同級生に無関心になった。太郎に会いたかった。
太郎と、太郎のパパと、3人で動物園に行った思い出だけが、それを思い出させる野山だけが私を私にしてくれた。
ママについて行けば、また神奈川に戻れると聞いた。ママとはあまり話さなくなっていたけど、2つ返事でOKした。
妹は不満気だったが、高校から行くという事で折れた。2学年下だからさ来年から神奈川に来るらしい。
でも、妹とも良好とは言えない。私は話すのをやめていたから。
神奈川に帰ってきてショックだったのは…太郎のパパはいなくなっていた。
でも、太郎は昔と変わらず、私と昔のように遊んでくれた。
大人になる必要なんてない。太郎が…パパがいなくなっても寂しくない様に…毎日を楽しくするんだ!
学校生活も最低限、支障の無いようにした。
辞めるわけにはいかないし、皆嫌いになったら1人になっちゃうからね。それは太郎に悪いから。
最低限のコミュニケーション、勉強、部活。
そして何だか分からないカメラを向けられる事。それに向かって喋ったりポーズをとったりする事。
とりあえずやっておけば角が立たない。
心も身体も、喧嘩は良くない、好きじゃない。
しかしある時から…何となく不穏な空気は感じていた。
嫌な予感は当たっていた…と思う。
私には分からない様に巧妙に、いや、人の気持ちだから巧妙ではない。全く見えない罠の様な。
気付けば私は足に枷が…身動きが取れなくなっていた。
何かが私を押し上げようとする。
情報が入って来なくなる…ただ少しずつ漏れ出している周りの人間の太郎への感情。
信じたくなかった、だって意味が分からない。
悪意、嫉妬、蔑み、侮蔑、侮り…様々な負の感情。
私に良くしてくれるなら、私の好きな太郎にも良くしてくれるのではないのか?
それは…私に良くしてくれる人ほど…心配してくれる人程、悪意が強い…何で!?
この時、もう少し考えていれば、自分にもある人の持つ悪意や嫉妬…考えていれば…まだこの時なら解決方法はあったと思う。
ある日、太郎から誘われたデート!
嬉しかった…蘭子と付き合っているのは知っている。何も変わらない日常に蘭子が浮気してるだけ。あんなものは恋人じゃない。
友達から親友へ、親友から恋人へ、チャンスが来たと思った。
なんか写真を取られたり、カメラを撮られたりする事は好きじゃないけど、その時に貰った服を着ていった。
流石にティーシャツやジャージじゃまずいと思って…可愛いって、綺麗だねって思われたくて…だって太郎に好きになってもらいたいから…特別に…なりたいから…
しかし結果は最悪だった…いや、悪いという結果すらない。悪いなら直せば良い。
私が受けたのは…直接は言われていないが断絶だったのだから。
それにデートの待ち合わせ場所で知らない人に話しかけられ囲まれた…正直邪魔だから早く消えて欲しい。
でも対応しないと消えないしうるさいから適当にあしらった。
その時から、太郎の様子が少しおかしかった。
そこからは踏んだり蹴ったりだ。
知らない奴らは邪魔をする。
私と太郎の邪魔をする。
私の隣にいる太郎を侮辱する。
私が不快感を露にすると、今一緒にいる太郎に不快感を持っているのだ、もしくは太郎がいるから不快な態度を取るんだと…と聞こえるように言う。
ねぇ…貴方達は人間?人間以下じゃないか?
何故?貴方達は人、考えて生きれるのに…他人なのに…?
人の幸せを願うどころか不幸にする?
世界は太郎と私を離そうとする。
私は…太郎以外あり得ないのに。もう無理だ。
太郎と一緒にどこか遠くに逃げよう…とりあえず私だけでも学校をやめようか?…その為に太郎を説得しよう。説得?どうやって太郎の人生は?
でもやめて…逃げるってどこに?生活は?
モデルでしか仕事をした事ない、高校生の私が?
逃げる事を考えていた所で…そんな夢物語は叶わず…努力するチャンスすら失った。私はコレを知っている。
太郎がそっと私から離れようとしていた私がすがりついたから、太郎は追い払った。
動物が…母が子供を独り立ちさせる時…子供を追い払う。縄張りから出て行けと、追い払う。
太郎は『いつか』という言葉を使っていたが…小学生の時にお別れした時のように『待っている』とは一言も言わなかった。
太郎はもう待っていない…太郎は行けっと言っている。
振り向かず行けと。目の前には別の世界…太郎のいない世界。
嫌だっ!と言った…何度も!何度もっ!
だけど太郎が去っていた…私の行けない…連れて行ってくれないと見る事さえ出来ない暗闇に消えていった。
それに連れていってっ!と叫んだ所で…入れないのだ…私の身体には茨の様な棘が巻き付いていて…入る資格がない…私が彼の所に行こうとすれば、私の棘で逆に僕の様な人間は傷つくんだよと言われたから。
『ゴメンな』って俯いて『頑張れよ』と言って消えていった…太郎!行かないでっ!たろおっ!たろぁッ!
タロアアアァァァァァァァァァァ!!!!
その日…送ってもらったような気がするけど…どうやって帰ったかも覚えていないけど…何故か手に何か持っていた。
分からないけど…とっても大事なものなのは確かだ。タグがある…それを丁寧に取り、机の宝物ボックスにしまった。
『動物の糞の化石キーホルダー 500円』
パッと見ればプラスチックの、ただの石。
これは絶対に失くしてはいけない、紐をチェーンに変えて、首を一周回してから付けた。
洋服の外には出さない。
絶対に失くしてはいけないものだから。
これは、私の一部だから。私の命、心臓だから。
いとも簡単に無くす心臓を手に入れた。
タロァ…どうにかしないと…どうにか…
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