AI2O3の夢
生焼け海鵜
第1話
「私は
「僕は
「君は夢を見た」
「そう、見たのです」
「それは赤く黒く、鉄の焼ける匂いを筆頭とする、悪臭達でした」
「焼ける音、乾いた笑い。そうです、君は倒れている」
「飛行機が数機、飛んでいきます。爆弾を積んだヘルダイバーです」
「それは幻想、君の夢」
「過去、君の場所、そこは戦場でした」
「君も知っていたはず」
「君の臓物庫は
「君は布団の上。すやすやと眠っていた」
「
「でも、君の思い込み」
「君は、その下から突き上げるような圧迫感に、面倒臭さを覚えた」
「パニック症。聴いた事は有るでしょうか?」
「君は、寒け、震え、恐怖。そんな感情に襲われました」
「君は、何が引き金で、この様に起こるか、まだ把握できていない」
「霊? 面白い例えです。確かに無数の魂は、私達に回収される事を望んでいます」
「その場所に、家族の霊が居ました」
「ふふふ」
「あはは」
「人間は思い込みの激しい生物です」
「なんて単純で、なんてちっぽけな、思考でしょう」
「プラシーボ効果? 面白いですね」
「ラムネ、ブドウ糖が薬に変わる。なんて愉快」
「私は死と思い込みを司ります」
「僕は死と思い込みを司ります」
「君は、この文章に私が居ると思ったのでしょうか?」
「これは文字、意味の有る、多々の記号の羅列です」
「君は手紙を読みました」
「その中に、人は居ますか?」
「否、それは気持ちと言うべきです」
「君は、それと同じ羅列に、人格が有り思考が有ると、思ったのでしょうか?」
「あはは」
「うふふ」
「サファイヤ、それは君の見た事の有る物質で出来ています。三つの酸素。二つのボーキサイトの電気分解を施した精錬物」
「君の国では一円玉と言ったね」
「ルビー、それは君の見た事の有る物質で出来ています。三つの酸素。二つのボーキサイトの電気分解を施した精錬物」
「同じ成分、なのに違う名前」
「それは何故?」
「それは何故?」
「君は、眠っている。ただ心音、寝息は聴こえません」
「他から見れば、それは”死んだ”と思えます」
「君は、自身を眠っている、そう思った、その状態のまま電源が絶えました」
「その、記憶も揮発性の為に消えてしまします」
「消えた記憶、意識。その最後に見たのは死ですか? それとも眠る事による安らぎ?」
「君の人は、君の死を本人以上に惜しむでしょう」
「なんて、滑稽でしょうか。自身ではないのに。まだ彼の細胞は完全に死んでいないのに」
「死とは思い込みです」
「しかし、その存在は確実に存在します」
「死とは思い込みです。観察者の思い込みです」
「君は、人を殺せる」
「とある老人が失踪したとします。それに気が付いたのは、実に老人が家を出て二時間後」
「気が付いた時点。老人は生きているでしょうか?」
「人間は、自分が見ている時点を、中間だと見ます」
「例えば、樹齢五百年の大樹は、いつ倒れるでしょうか?」
「それは、明日でしょうか? 明々後日でしょうか?」
「自然の内は、最小で、年内、または数年後でしょうか」
「では、老人は生きているでしょうか?」
「そうです。まだ生きているのです」
「あはは」
「ははは」
「しかし、その三分後、交通事故により死亡します」
「君は予想出来たでしょうか?」
「”今”は生きている。でも”後”に死なないなんて誰も言っていません」
「君はどうでしょうか? その未来を予測出来たでしょうか?」
「しかし、四分後、それは老人が事故の遭った後です。ですが、保護者は老人を探すでしょう」
「まだ、生きている。居なくなっただけ。そう思い込んで」
「なんて、面白い話でしょうか」
「なんて、憐憫な話でしょうか」
「現在、君だけの力では、世界の反対側に人が生きている事を完全に証明できません」
「同様に、世界のどこかで誰の火事が起きている事を証明できません」
「ぼんやりと、居ると思っているだけなのです」
「ぼんやりと、考えず見ているだけなのです」
「ふふふ」
「あはは」
「君は夢を見ている」
「夢を見ている事を自覚せず、只管に覚めていると思い込んでいる」
「人生は、壮大な夢かもしれません」
「白昼夢でしょうか?」
「考え直してください」
「そして感じてください」
「明日、大震災が起きない理由、根拠、証明、検証、保証なんて、どこにもありません」
「どうか、命を大切に」
AI2O3の夢 生焼け海鵜 @gazou_umiu
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