第8話
───これはどういう状況なのだろうか。
昨日泊めた姉妹の姉の方が起きてきたから朝ご飯の準備をしていた。
と、彼女からの視線が気になり尋ねた瞬間だった。
「おっはよ〜!おにーさま!」
何かが飛びかかったと思った瞬間、顔面全体にプニプニした感触と肩と頭に掛かる重さ。
それが姉妹の妹の方──心露ちゃんだと気付いたのは今だった。
それも裸。全裸だ。ノー‥服って英語でなんて言うんだっけ。
「‥おはよう、心露ちゃん。質問なんだけど、なんで服を着てないんだい?」
「脱げちゃった♪」
「脱げちゃったかぁ」
脱げちゃったなら仕方ない、元の原因は代わりの子供服を調達するのを面倒くさがり自分のTシャツを渡した僕にある。
それにしても柔らかい感触だ。
小さな子供の肌はモチモチしてると五恋が生まれたばかりの頃知ったが、さすがに顔全体にそれを味わったことはない。
思わずずっと感じていたくなるが、彼女の姉の前だということと、この光景がどう考えても犯罪にしか思えないことを察する。
彼女の腋に手を入れて床に下ろす。
「心露ちゃん、料理中の人に飛び掛かったらダメだよ」
「あぅ‥ごめんなさ〜い」
「うんうん、お利口さん」
ナデナデと心露ちゃんの髪を撫でる。
気持ちよさそうな顔をする全裸の幼女というアレ過ぎる光景だがそれはさておき。
‥さておかないと現実の自分の状態を直視できないからだが。
「もうすぐ出来上がるから2人とも着替えておいで。服は畳んで脱衣所に置いてあるから」
「‥あっ!は、はい!」
自分があられも無い格好をしているのを思い出したのか、咲葉ちゃんは慌てて椅子から飛び降りて階段へと走って行く。
「あっ、おねぇちゃん待ってよぉ〜」
心露ちゃんも後からついて行く。
それを見送り、僕は朝食作りに戻る。
それにしても。
「姉妹ってそこまで似るんだなぁ‥」
チラッと見えた部分の感想を終え、目の前の料理に集中するのだった。
「はい、お待たせ。クツロ特製とろとろオムライスだ」
「「わぁぁ!」」
カウンターに置いた料理を輝いた目で見る2人。
特製、とは言ったが実はこれは正式なメニューではなく賄いメニューなのだ。
五恋がバイトで入った時限定で彼女のために作る料理がこれだ。
土日だったらお昼に出すのだが放課後のバイトの時でもオヤツ代わりのミニサイズを作らされるから地味に困る。
喫茶店の定番だしメニューに載せたいのだが、『味がまだまだだから正式採用にはまだ早い』と五恋が許可してくれないのだ。
というわけで姉妹には昨日出してないため初めて食べるのだが。
「おいし〜い♪」
「すごく美味しいです‥!」
どうやら好評のようだ。
嬉しそうに食べる2人を見て僕もコーヒーを啜った。
───特売の1袋200円のやつを。
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