第6話

なんやなんやあった髪乾かしも落ち着き‥うん、ホントになんやかんやあったのだがその話はいつかに置いといて。

時刻は夜23時頃。


「寝ちゃったね」

「‥寝ちゃいましたね」


僕と咲葉ちゃんの前には、クッションで眠る心露ちゃん。

家に来た直後は、はしゃぎ回っていたが流石にダウンのようだ。


「咲葉ちゃんは大丈夫?眠くない?」

「‥大丈夫です。いつもこの時間は家事したり宿題したりで起きてますから」

「そっか」


小学生が起きているには遅過ぎる時間だと思うがまあ触れないでおこう。

ちなみに五恋は夕飯を食べたら眠くなる。

あんな傍若無人だが中身は可愛い姪っ子なのだ。


寝ている心露をお姫様だっこで抱えあげる。

心露ちゃんの口から溢れたよだれが腕に付くが、ありがとうございますと謎の感情になりつつ咲葉ちゃんの方を向く。


「ベッドまで案内するよ。ついておいで」

「‥は、はい」


案内と言っても一度廊下に出て近くの部屋に入るだけだ。

そこが僕の部屋になる。


「おっさんの部屋で悪いけど。もう一部屋は物置になってて家具も何もないから勘弁な」

「‥はい」

「家のものは自由に使っていいからね。包丁とか危ない物はやめて欲しいけど」

「‥はい」


なぜか"はい"しか返さない咲葉ちゃんに疑問を持ちつつも、心露ちゃんをベッドに寝かす。

暖かく柔らかい感触が無くなり途轍もない寂しさを感じるがそれはさておき。


「じゃあ僕はリビング戻るから。咲葉ちゃんも好きに‥」

「あのっ!」


突然大声を上げる咲葉ちゃん。

びっくりして彼女を見つめると、彼女もまた僕をジッと見つめていた。


「‥ありがとうございます」


そのありがとうに込められた意味はなんだろう。

ご飯をご馳走したことだろうか。

家に泊めたことだろうか。

はたまた───何も聞かなかったことだろうか。


「‥もう夜も遅い。ゆっくり休むんだよ」


彼女の頭を2回軽く撫でる。

気持ち良さそうな顔をし撫でられると、小さく礼をする。


「‥おやすみなさい、波切さん」

「おやすみ、咲葉ちゃん」


部屋を出てリビングに戻る。

ちなみに今日はここが僕の寝室だ。


温くなったビールを煽って飲み切ると、スマホを取り出しベランダへ。

ある電話番号に掛けると1コールで出る。


『あれ、珍しいねみっちゃんが連絡してくるなんて』

「悪い、寝てたか?」

『冗談。ゲームは今からが本番なんだよっ!今日は24時間耐久FPSちう!』

「‥ほどほどにな」


電話をしながらも聞こえてくる銃撃音。

およそダメ人間な相手だとは察しがつくだろう。

だが───今回は彼女の力を借りたかった。


「調べて欲しいことがある。お前にしか頼めない頼みだ」


と、銃撃音どころか全ての音が消えた。

何事かと耳を澄ますと小さな声が聞こえてきた。


「‥今のもっかい」

「は?」

「今のっ!お前にしか、ってやつ!」

「‥お前にしか頼めないんだ」

「‥ん〜♡」


悶えるような声を出してバタバタと暴れる音が電話の向こうで響く。

‥コイツは何をやっているんだろう。


「はぁはぁ‥今夜は最高のディナーになりそうだよ。じゃあ私はハッスルしてくるからおやす‥」

「おい」

「‥冗談だって〜。で、なんだい?」


今ので一気に頼むのが不安になったが、知ってる中じゃコイツが1番信頼できる。

一抹の不安を押し殺し依頼の話をする。


「実はな‥」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る