第5話
「ふぅ‥」
風呂から出ると、僕はビールと作り置きのおつまみで晩酌を始めた。
姉妹は僕と入れ替わりに風呂へと向かった。
楽しそうな声がこっちまで聞こえて来て思わず笑顔になる。
「タバコ‥は流石にやめた方がいいよな」
風呂上がりのタバコも日課なのだが、姉妹がいることも考え諦める。
ヘビースモーカーというわけでは無いが、タバコの味と香りが好きで朝と夜は欠かさず吸っている。
昼間はバイトの五恋がいるから吸ってないし、思い返せば朝から吸ってない。
そんなどうでもいいことを考えていると、リビングのドアが開く。
「おにーさま、おふろでたよ〜!」
「うぉっと!?」
ソファの上をピョンと跳ねると右腕に抱きついてくる心露ちゃん。
いつの間にこんなに懐かれたのだろうと思いつつ、彼女に零さないようにビールの缶をテーブルに置く。
すると、廊下を歩く小さな足音が聞こえる。
「ココっ!まだ髪乾かして無いでしょ!」
さっきまで、ハーフアップ(って言うんだっけ?)にしていた髪を解き、長い髪になった咲葉ちゃんがリビングに入ってくる。
こうして見ると、僕に負けず劣らずの癖っ毛なのはよくわかる。
「咲葉ちゃん、そんなに走るとシャツが落ちちゃうよ」
「あっ!?み、見ちゃダメですよ!?」
「いや、見ないけど」
独身彼女無しの家には当然子供服など無いので、2人は着替え代わりに僕のTシャツを着てもらっている。
平均体型の僕だが流石に小学生には大き過ぎてシャツワンピースのようになっている。
心露ちゃんに至っては、ほぼ着ている意味が無いぐらいはだけて肌色面積が偉いことになっている。
「お酒飲んでいたんですか?」
「ん、ちょっと小腹が空いてね」
いつもならカフェの残った食材で簡単に済ませるのだが、姉妹にほとんど食べられてしまったので明日の営業を考えたら食べるものは無かった。
と、いつのまに居なくなっていた心露ちゃんがリビングに駆け込んでくる。
「おにーさま、髪乾かして〜!」
ドライヤー片手に膝に飛び乗ってくる。
ショートヘアの彼女だが、タオルでもほとんど拭いていないのかグッショリ濡れていた。
「はいはい。あ、そこのコンセントに挿してくれるかい?」
「はーい!」
コードをつなぐとまたすぐに膝に戻ってくる。
まだ五恋が幼稚園児だった頃に髪を乾かした経験を思い出しながらドライヤーをかける。
「ん〜♫おにーさまじょうず♫」
「ははっ、そうかな?」
気持ちよさそうな顔をする心露ちゃん。
ショートの髪はあっという間に乾いた。
「はい、おしまい」
「おにーさま、ありがと!」
僕に軽く抱きついて膝を降りると、お気に入りになったらしいクッションに飛び込んでいく。
さて、ドライヤーを片付けるかと立ちあがろうとした瞬間───膝にまた重さが。
それもさっきよりちょっとだけ重い感触。
「あ、あの‥私もやってもらえませんか?」
控えめで照れたように、咲葉ちゃんもお願いしてくるのだった。
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