少しだけ、
@unah
第1話
死にたいなんて、あるはずがないんだ。
きっと、ただの厨二くさい思い込みで。
落ち着くまで書かせてほしい。
私は、なんたって他にいないような、とても好い両親に、慕ってくれる弟たち、聡明でユーモアある友人たちに、可愛がってくれる親戚たち、そして塾や、習い事、学校も、なに不自由ない暮らしをしている。
だから、死にたいなんて思い得るはずなんてないんだ。
この辛いのを言い表すのに一番簡単な言葉ってだけで、本当じゃない。
だって、死にたい、って心で思っても一層の痛みもなく、ただ変わらない。
だけど、昨夜、布団にくるまって、一瞬前まで何もなかった思考が溢れてくる様な時間に、
どうして生まれてきたんだろう
そう、心に漏れ出た。
謀ったように肺は息をさせまいとキツく縛り付け、食ったものを糧にすんなと嗚咽が食道を昇ってきた。体が軋む。
そして気づく、あぁ、俺は本当にこう思っているんだ
死にたいなんて戯言に、慰めの価値なんて
辛いです。
この頃はよく、不意に、目玉の裏から丹田の下の先っぽまで、気道を突き刺しながら稲妻状に痛みが走り続けます。
理由は簡単で、単に自分のせいで。
高三になったら受験勉強の佳境だよ。
〇〇の行きたいところはもうやらないとダメだよ。
わかってた、理解していた。だけどできなかった。
勉強に少し遅れても、定期テストで順位が下がっても、まだ大丈夫、私は試験範囲外の勉強をしてたから。最終的に追いつけば良いから。
自分の言ってることも正しいし、結果が出れば何の文句もなかった。
出るはずだった。
顧みれば当たり前。
試験範囲外の勉強と言って自分は何をやっていた?
ユーチューブ?
ゲーム?
夢想、妄想?
重要度低い古典?
将来やりたいことは確実にある。そのために大学に行くんだから漫然と勉強するわけじゃない。
絶望的な楽観主義者だったんでしょうか。
思えば一度も挫折はなかった気がします。忘れてるだけかもしれないけど。
つまり、あってもその程度。なんでもやりたい!と思ったもので挫折はありませんでした。
でも
もしかしたら、チャレンジしてなかっただけかもしれない。
将来は医者やって、音楽もかじって、小説書いて、SNSでも活動して、
でも、
キラキラな世界に憧れるって それだけで自分もなれるだろって自信はあろうが何もしなくて。だから、今、ただ腐ってって。ほんとの自分の力量もしれずに、
自分の力がわかってれば、適切に行動できたろうか。
今この時間は無駄だろう。さっさと勉強したほうが得だろう。なんせ夢のための通過点の一つは大学に入らないと、どうしたって仕様がない。
今日、模試があった。
別に昔はなんのこともなかった。
ただ時間内に問題を解くだけで、いつもより早く家に帰れる日くらいのもだったんだけれど、
今、
僕は志望校を記入するとき、思うように書けないことに気がついた。
横市、琉大、帝京、弘前医大、
手当たり次第に書くのは別にできる、物理的にはもちろん。
ただ、昔から書いていたものが、どうしても書けない。
たった4文字の、
東大理Ⅲ
全く、全くもってふざけてない。本当に。
昔は書いたってのも、別に、昔は真剣に事を捉えてなかったかか書けたわけじゃなくて。
嘘じゃないんです。嫌なことに。
本当に、本気で行けると思ってましたし、行けるような子でした。
まぁ、中三、高一の話だし、その頃からなんて、みんな頑張れば行けるだろうけど、少なくとも当時の俺は、頭一つ、完全にまるまる一つとは言わないでも、確実に抜けてた子で。
でも、今は?
書こうとすると、
人目を気にしてしまう様になった事も
ひたすらに悲しい。
つらい。
辛い。
申し訳なくなる。
どうしたって肺をグチャグチャにされてしまう。
時計を見れば、一時間半くらい経っている。
この間に私は勉強できただろうか。
しかしまぁ、この直近を後悔しているんだから、今に目が向くように、落ち着いて来たのかもしれない。
どうか、俺の事を見捨てた自分が帰ってこれますように。
僕にはきっとやり遂げてほしい。失望を補完できるように。
もう書くことの無いよう祈って。
少しだけ、 @unah
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