第37話:ダブルブッキング
新たな山賊の登場に一番不意をつかれたのは
「あなた達は、いったいどれだけ多くの人の恨みをかっているんだ」
「残念ながらこの二人の荷物は我々が予約済だ。お前らは次の旅商人を襲って自分の稼ぎを確保するがいい」
「そうはいかない。我々も、そこの女とそこの女が持っている荷物を絶対に手に入れなければならないんだ。譲る事はできない」
私を絶対に手に入れなきゃならないんだって、きゃー、私モテてる。この点だけでも
「待て」と短く
「ここで俺達が潰しあっても意味がない。この女とこの二人が持っている金はすべてお前たちに渡そう。そして俺たちは荷物をいただく。この条件で折り合うことはできないか?」
私たちそっちのけで
「それはできない。俺もお前たちと同じで、この女が持っている先物証書が狙いだ。こいつらが持っている端金なんぞに興味はない」
「先物証書?」
「とぼけるな。この女が持っている木材二十万トン分の先物証書のことだ。我々はその荷馬車にある青い箱に入っている先物証書にしか興味がない」
そう
「おい、リツ、二十万トンてなんだよ。まだ木材はあるって、確かにそう言っていたと思うが、いくらなんでも二十万トンは多すぎるだろう。そんな量の木材どうするんだ」
「どうするって、安かったからまとめて買っておいただけよ。ほら、今、高く売れるし、いい買い物でしょ?」
そう私が答えるとタルワールは呆れ顔で天を仰ぐ。
「そりゃドミオン商業ギルドに嫌な顔をされるわけだ。どこの街に二十万トンの木材を保管できる倉庫があるっていうんだよ」
どうやらタルワールは、私がドミオン商業ギルドで邪険に扱われていた理由のすべてを悟ったようであった。
「ごちゃごちゃうるさい。はやく二十万トン分の先物証書をよこせ」と
さて、永遠に続くと思われた無駄な時間を打ち切ったのは、
「もし二十万トン分の先物証書がこの荷馬車にあるとすれば、我々は引くことができない。なぜなら我々が受けた命令は、木材に関わるすべての物を持ってこいというものだからだ。当然、この命令には先物証書も含まれる。すまないが、この場は我々を立てて先物証書と木材のすべてを譲ってほしい。そのかわり後日になってしまうが、それに相当する金銭をあなた達に提供することをお約束しよう。これが我々のできる最大の譲歩だ。もしそれが受け入れられないというのであれば、我々は力に訴えるしかなくなる」
この
「あなたたちの事情は理解したが、我々の事情も理解してほしい。我々が交わした契約は、この女の生死を問わずスムカイトに連れて帰る事と、この女がもつ二十万トン分の先物証書を手に入れる事だ。元々、我々が二十万トン分の先物証書の話をしなければ、あなたたちは木材を手に入れるだけの任務であったはずだ。だからあなた達は我々から先物証書の話を聞かなかったものとして木材のみを持ち帰り、我々は先物証書とこの女を持ち帰る。これでいいのではないか」
私の命と私の荷物が奪われることは横に置いておいて、この
「確かにあなたの言う通り、先物証書の話を知らなかった時点であれば、我々はその妥協案を受け入れることができたであろう。しかし今はそれを知ってしまっている。一度知ってしまったことを都合よく忘れることは騎士道に反する行為だ。私は、私自身の誇りにかけて、その提案を受けいれることはできない」
カッコいいセリフだけど、山賊をやっている人が騎士道とかなにかの冗談かな?と私は笑いを
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