第74話 お客さん? と提案
川辺でボート遊びをした後、みんなで50メートルほど離れたワタシのお家に戻ってきました
そしてワタシはお家の1階の広々テラススペースに
【アルミ製ガーデンテーブルセット 丸机1脚 椅子4脚】
を2セット取り出し、
「ちょっと一休み一休みなのです」
ん?
すきすきすきすきすきっすき?
あいしてる?
そう言って、以前用意しておいた【ロックアイス】入りの【クーラーボックス】を取り出します
そして冷たく冷やしてあるペットボトル飲料たちをみんなに配ります
「どれでもお好きなモノをど~ぞ?」
ということで、みんなで水分補給しながらまったり休憩していると、
朝、渡し舟で来た採取者さんと思われる女性が庭先から話しかけてきました
採取者さん「なあ、あんたたち、ここは何なんだい?」
「ここはですね、ワタシのお家兼、食べ物を提供するお店です」
採取者さん「食べ物店? こんな場所で?」
「ですです」
「まあ、今はお試し期間中みたいな? そんな感じですけど」
採取者さん「へぇ~、変わってるね、あんたら」
採取者さん「ちなみに、どんなモノ売ってるんだい?」
そう言いながら、採取者さんも広々テラスに入ってきました
「それはまだ決まっていないのです」
「でも、ワタシ的には、時間帯で商品を変えようと思っているのです」
そう言って、ワタシはお昼に提供しようと構想中だった商品を取り出します
【焼き芋 紅あ〇ま 50円】
これはアレです。すでに実戦投入済みの実力者です
昨夕、お姉ちゃんズ3人にもご提供済みのヤツです
(お昼にお食事をする文化がないですからね、ここ)
(まずはおやつ的な軽いものから、攻めてみたいんですよね~)
そんなことを考えならがら、クロちゃんに話しかけます
「クロちゃん、このお芋さん、4等分してほしいのです」
クロエ「ん? 4つに分けるの?」
「ですです」
「クロちゃんと、ケイちゃんと、プリさま、そしてお客さんの分で4つね?」
「みんなでお味見してくださいな?」
クロエ「え? いいの?」
ケイト「お芋! 甘いお芋!」
プリシラ「え? なんで私だけ「さま」づけですの?」
採取者さん「味見させてくれるのかい? それはありがたいね」
そんなこんなで試食タイム
(まあ、お姉ちゃんズ3人は、昨晩お芋さん食べてるからアレだけど・・・)
お姉ちゃんズ「「「はふはふはふ」」」
お姉ちゃんズ「「「ん~ん! あっま~~い!」」」
採取者さん「はふはふ、うわっ、ホント甘いっ」
採取者さん「なんだいコレ? 普通じゃないよね?」
「ふっふっふっ。お客さん、美味しいでしょでしょ? コレ」
採取者さん「ああ、信じられないほど美味いよ」
「これだけじゃないんですよ? もう一つの、こちらもど~ぞ?」
そう言って取り出したのは、
【焼きとうもろこし 50円】
これはアレです。こちらもすでに実戦投入済みの古強者です
この【焼きとうもろこし】は、ジェニー姐さんお初の時に提供したヤツです
「クロちゃん、これも、4等分してほしいのです」
クロエ「りょーかい!」
ケイト「いい匂い~」
プリシラ「なんだかすごく、香ばしいですわ」
採取者さん「なんだい? やけに食欲をそそるニオイじゃない?」
そしてまたまた実食です
クロエ「美味っ、これも美味っ」
ケイト「しょっぱい味付けなのに、甘いですっ」
プリシラ「これは野菜なの? 果物なの? わかりませんわ」
採取者さん「これは後引くね~、これだけじゃ物足りないよ~」
「でしょでしょ?」
「ということで、ここから先は、有料です」
採取者さん「で? いくらなんだい?」
そんな採取者さんの声を聞いて、待ってましたとばかりに営業開始なワタシです
(お金も大事だけど、ワタシ的にはチャージ魔力量も確保しておきたいんですよね~)
ということで、
「実はワタシ、ちょっと事情がありましてですね?」
「どんなモノでもいいんで、魔石が欲しいんですよ」
「それでですね? ご提案なんですけどね?」
「【ジェリッシュ】の魔石10個と、このお芋さんかとうもろこし、どちらか1本」
「こんな交換条件なんて、どうです?」
お昼はお金ではなくてチャージ魔力量を稼ぐことにしたワタシ
【ジェリッシュ】の魔石10個で、
【焼き芋 紅あ〇ま 50円】
【焼きとうもろこし 50円】
どちらか1本と交換、ということにしてみました
(50円の出費で1000円稼ぐみたいな感じ?)
(ちょっと儲け過ぎかもだけど、いいよね?)
採取者さん「え? 【ジェリッシュ】の魔石なんかでいいのかい?」
採取者さん「【ジェリッシュ】なんて、丘に上げて放置しておけば、数分で勝手に死んじゃうのに?」
「いいんです。それがいいんです!」(某サッカー狂チックに)
採取者さん「変わってるね~、でもウチとしてもありがたいから、早速とってくるよ」
クロエ「アタイも、アタイも!」
ケイト「甘いもの~!」
プリシラ「わたくしたちもいいんですの?」
「もちろんなのです」
ということで、またも砂浜へと向かうワタシたち、そして採取者さん
みんなに【ジェリッシュ】狩りをしてもらいます
砂浜へと行く道すがら、
(でも【ジェリッシュ】って、水中にいるんだよね?)
(水中で1匹1匹捕まえるのも、大変というか、面倒だよね?)
(なんか、投網漁とか巻き網漁みたいにできればいいんだけどな~)
そんなことを考えていると、営業のスズキさんの声がします
『お客様すいませ~ん』
『こんなのいかがでしょ~か』
【防鳥ネット 青色 網目1cm 4×2メートル 四方ハトメ付き 2,980円】
これはアレです。お家のスズメ除けに買ったヤツです
ワタシのお家、場所が山間地なだけに、やたらと野生動物が現れました
その中でも、毎年春先にやってくるのが、まるまるとしたスズメさん
1階のテラス奥の配管の裏や、2階の雨どいとかの隅に巣作りに来るのです
そしてほっとくと、テラスが一面、鳥の糞だらけに
そんな状況は衛生的にもアレだったので、対策として購入したのがこの防鳥ネットなのです
(小鳥さんは見た目はかわいくていいんですけど、糞害がねぇ~)
ということで、このネットを使って、みんなで【ジェリッシュ】網漁をやってもらいましょう
ちなみにワタシは見てるだけのつもりです
体調が戻るまでは、体を動かす作業は自主規制なのです
ちなみにジェニー姐さんはというと、
「ねえねえ、スキニー、アレ貸してちょうだい? 空に飛ばすヤツ」
「ん? どっちです? 【ドローン】です? 【カイト】です?」
「長く遊べる【カイト】でお願い」
ジェニー姐さんはワタシの隣で凧あげとシャレ込むつもりのようです
そんな賑やかな午後がスタートしようとしていた矢先、
(ワタシも水辺で何かしようかな~)
そんなことを考えた時でした
突然、頭の中に、聞いたことがない音声が響き渡ります
『あらヤダ、ちょっと、お客ちゃん? ダメじゃないの~』
『も~、炎天下に何も対策しないだなんて~』
『日差しを甘く見ちゃダメでしょ~』
『特にそこは水辺じゃないの~? 照り返しとかあるでしょ~?』
『紫外線が2倍近くになっちゃうのよ~?』
『って、あらヤダ私ったら。自己紹介がまだだったかしら~?』
『まあ、言わなくても分かると思うんだけどね~?』
『あらヤダ、分からない?』
『もう、おばちゃんよ? おばちゃん。アオヤギのお・ば・ちゃ・んっ♪』
『もう、ずぅ~っと待ってたのに、ちっとも呼んでくれないんだもの~』
『しょうがないから出てきちゃったわ~』
『それにしても、お客ちゃん? ダメじゃないの~』
『今、川辺にいるんでしょ~?』
『もぉ~、ホントダメじゃないの~、そんな格好で~』
『無防備過ぎじゃないの~』
『女の子なんだから、日焼けとか美容とか、気をつけないとダメでしょ~』
『これだからスズキさんに任せっきりにできないのよね~』
『ちょっと今からおばちゃんがいろいろ見繕ってあげるからね~』
『って、あらヤダ。女の子向けの商品がこれだけしかないの?』
『もう、どういうことなのかしらね~』
『でも、あるモノだけでやりくりするのも、おばちゃんっ得意なのよね~』
ワタシが呆けているうちに繰り広げられる、そんなマシンガントーク
ワタシは知っています。このタイプの人間を
自分のことを「おばちゃん」と呼称する人種のことを
それは唯我独尊
それは超越者にして解脱者
それは全てをあきらめ全てを受け入れ、恥や外聞を全く気にしなくなった鋼の精神を持つ、
ある意味【無敵なひと】のことなのです
ワタシ意識が「おばちゃん」の声に行っている間に、目の前に現れた【買い物履歴】画面
その画面の中央[あなたにお勧め]には、
【日焼け止めクリーム SP50 PA++++ 100円】 100円ショップの100円のヤツ コスパ最高
『あらヤダ、これはアレじゃないの~? 姪っ子ちゃんの買ったヤツ』
『コスパがイイのよね~、コレ』
『それに、あんまりべたつかないし』
『それにしても、姪っ子ちゃんったら色気づいちゃって~』
『意中の男子はクラスメイトの若狭君かしら~?』
『あらヤダ、も~、ワカサゆえのアヤマチ? なんちゃってね~』
【帽子 つば広麦わら帽子 フリーサイズ 300円】 100円ショップのちょっとお高いヤツ
『あらヤダ、これはアレじゃないの~? お庭いじり用に買ったヤツ』
『男性向けなだけにちょっとつばが広めなのがイイのよね~、コレ』
『日焼け対策にはモッテコイよね~』
『それにしても、買ったはいいけどあまり使わなかったんじゃないの? コレ』
『お客ちゃんったら形から入るから、昔から無駄な買い物多いのよね~』
『そのくせ物持ちがイイから、家中モノが溢れかえってるんじゃない?』
【帽子 手編み風ハット フリーサイズ ベージュ 200円】 100円ショップの100円じゃないヤツ
『あらヤダ、これはアレじゃないの~? 義姉ちゃんの買ったヤツ』
『お値段の割に可愛いのがイイのよね~、コレ』
『日焼け対策でオシャレなんて、いいんじゃない?』
『それにしても、義姉ちゃんって、もう40代後半だったんじゃないの?』
『ちょっと無理に若作りし過ぎて痛々しいわよね? そう思わない?』
『あらヤダ、本人にはナイショよ~』
【帽子 バケットハット フリーサイズ 紺色 200円】 100円ショップの100円じゃないヤツ
『あらヤダ、これはアレじゃないの~? 旅行用に買ったヤツ』
『折りたたんでポケットに入るのがイイのよね~、コレ』
『男女兼用で使用者を選ばないのもイイわ~』
『それにしても、お客ちゃん、これもあまり使わなかったんじゃないの?』
『お客ちゃんったら、買ったはいいけど使わなかったモノだけでお部屋が埋まってない?』
『一度アレしたらいいんじゃない? アレ。今流行りの分別と整理のヤツ』
『なんて言うんだったかしら? 断食? 銀シャリ? あらヤダ、海砂利だったかしら?』
【帽子 サンバイザー フリーサイズ 角度調整 UVカット ミラータイプ 200円】 100円ショップの100円じゃないヤツ
『あらヤダ、これはアレじゃないの~? 義姉ちゃんの買ったヤツ』
『顔が隠れるほど大きなつばがイイのよね~、コレ』
『コレとママチャリと長袖手袋で、おばちゃんの三種の神器なのよね~』
『スーパーへの買い物といったらおばちゃん、このスタイルだもの~』
『あらヤダ、義姉ちゃんも、もうすぐこちら側なのかしらね~』
『寄る年波には勝てないって感じなのかしらね~』
【サングラス ダークグレー 100円】 100円ショップの100円のヤツ 強い日差し対策に
『あらヤダ、これはアレじゃないの~? 何かのついでに買ったヤツ』
『そんなに濃い色じゃないグレーだから、使いやすいのよね~ コレ』
『眩しいと水中が見えにくいから、コレ使った方がいいんじゃない?』
『それにしてもお客ちゃん、まだあの病気は治ってなかったの~』
『昔、全身真っ黒の衣装で統一していた時期があったじゃない? グラサンもかけて』
『あらヤダ、またあの病気、ぶり返しちゃった感じ?』
【髪ゴム 小 ピンク(ラメ入り) 4個入り 100円】 100円ショップの100円のヤツ
『あらヤダ、これはアレじゃないの~? 姪っ子ちゃんの買ったヤツ』
『小中学生の女の子に人気なのよね~、コレ』
『ちっちゃい割に太さがあってしっかりしてるし』
『表面は布地だから、髪を変に引っ張らなくてイイのよね~』
『それにしても、ピンクはいいわよね~、乙女って感じで』
『おばちゃんも全身ピンクでコーデしちゃおうかしら~?』
突然始まった、アオヤギのおばちゃんによるワンマンしゃべくりオンステージ
ずっとアオヤギのおばちゃんのターン。そんな感じです
あっけにとられたワタシがリアクションできないでいると、
しまいには[あなたにお勧め]に表示されている商品の解説まで始めてしまいました
ワタシが発言できるような付け入るスキはない、そんな一方通行なマシンガントーク
ワタシが一番苦手とする、そんな絶望的なシチュでしたが、
『お客様すいませ~ん』
『うっかり油断していたら、一時的に主導権を奪われてしましました~』
突如切り替わったいつもの声、営業のスズキさんの声です
この声が聞こえてきたということは、ワタシはおばちゃんトークから解放されたのでしょう
『お客様すいませ~ん』
『手前どもの失態で、ご心配とご迷惑をおかけいたしました~』
どうやら営業のスズキさんが謝罪してくれているようです
でも、おばちゃんの連続口撃によって、軽くパンチドランカー気味になっていたワタシは、
営業のスズキさんのこの弁明に対し、
「お? おぅ・・・」
こんな応答しかできないほど、精神がすっかり消耗していたのでした
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