第73話 水辺でのエトセトラ


朝食という名の、ワタシによるお店の商品プレゼンは無事終了


皆さんから合格点をいただけたようです


(とりあえず、第一関門突破ですね~)


そんなことを考えながら、とりあえず、みんなでお外に出てみます


1階に降りて玄関を開けると、中洲に向かってくる舟影がいくつか目に入ってきました


すると、


クロエ「ちょっと確認してくる!」


そう言って、お姉ちゃんズ3人が浜辺に走っていきます


ワタシとジェニー姐さんも3人の後を追います


まあ、ワタシはまだ体調がすぐれないので、ゆっくり歩いてですけど・・・


そしてワタシが浜辺に着くと、お姉ちゃんズ3人は、


渡し舟の舟頭さんや乗って来た採取者さんたちに、手分けして聞き込みをしていました


どうやら昨日の荷物の置き引き犯を探しているみたいです


(さすがに昨日の今日で犯人が姿を現すとは思えないんですけど・・・)

(でも、犯人は現場に戻るって聞いたこともあるかも)

(それにしても、ホントに女性ばっかりですね~、採取者さん)


そんなことを考えながら、ワタシはお姉ちゃんズ3人を見守るのでした



結局、お姉ちゃんズ3人は小一時間アレコレと聞き込みをしていましたが、


荷物泥棒の舟は見つからず、手がかりすらも入手できなかったようです


しばらくすると、渡し舟もいなくなり、乗って来た採取者さんたちも各々の目的地に行ってしまいました


お姉ちゃんズは舟がいたところから少し離れ、3人そろって波打ち際でがっくりうなだれています


(まあ、かわいそうですけど、しょうがないですよね・・・)

(でも、お姉ちゃんズ3人を励ますというか、元気づけてあげたいですね)



そんなことを考えていたら、すっかりお馴染み営業のスズキさんの声が聞こえてきました


『お客様すいませ~ん』

『スキルのレベルアップに伴いまして、手前どもに便利な新機能がございま~す』

『ぜひぜひ、お試しくださ~い』


そんなセリフと共に目の前に現れる、【買い物履歴】画面


その左側のメニューツリーに、【NEW】の飾り文字と共にあったのは、


[レンタル]という項目


そして【買い物履歴】画面、その中央[あなたにお勧め]には、




【レンタル 足漕ぎスワン 横3人乗り 30分 400円】



【レンタル スポーツサイクルボート 縦2人乗り 30分500円】



これはアレです。昔乗ったことがある、観光地でよく目にする足漕ぎのボートです


自宅から最寄りの超有名で大きな湖、そこで知人らと乗ったことがあるヤツです


(そういえばあの湖の英語の名前、昔からシックリこなかったんですよね~)

(現地の観光案内に【LAKE ASHINOKO】って書いてあって、なんだか違和感だったんですよね~)

(それって【湖】成分過多じゃない? って思っちゃうんですよね~)

(ちょっと【頭痛が痛い】に近くない? って思っちゃうんですよね~)

(でも、【LAKE ASI】って言われても、【足】? それだけ? って感じで・・・)



そんなどうでもいいことを考えながら、営業のスズキさんに質問です


(レンタルって、購入とどう違うんです?)


『お客様すいませ~ん』

『レンタルはご購入とは異なりまして、一定時間だけご利用が可能なサービスで~す』

『もちろんレンタルできるモノは、お客様が過去にレンタルしたことがあるモノだけで~す』

『ちなみにレンタルは、期限が来ると例え使用中でも消えてしまいま~す』


(え? 使っている途中でも消えちゃうの? それって危なくない?)


『お客様すいませ~ん』

『なので注意が必要になりま~す』


(それって、ずっと借り続けることはできないのです?)


『お客様すいませ~ん』

『借りられる時間は、1日あたり最大12時間でございま~す』



そんな感じでとりあえず、新機能[レンタル]のことは大体分かりました


ワタシが以前レンタルしたことがあるモノを最大半日利用できるサービス


こんな感じなのでしょう



とりあえず面白そうなので、まずはスワンボートをレンタルしてみます


安全を考えて、レンタル時間はちょっと長めの2時間分で借りてみます


そして、暗い雰囲気のお姉ちゃんズ3人の近くの波打ち際に取り出します



「みんな~、今からこれで、遊ぶので~す!」


お姉ちゃんズ「「「え?」」」



お屋根が付いたずんぐりむっくり真っ白な舟体


そしてその舟首には、搭乗者の視界を遮るかの如く、キレイなS字でそびえたつ鳥さんの首


首の上には黄色いくちばしの鳥さんのお顔


その愛嬌のある表情は、スワンのはずなのですが、どう見てもアヒルかガチョウに見えてしまいます



クロエ「なんだ~? 白い水鳥?」


ケイト「おっきな水鳥が舟になってる?」


プリシラ「逆ですわ、舟が水鳥の形をしていますのよ」


そんなお姉ちゃんズに、スワンボートの使い方をざっくり説明します


「これはですね、足で漕いで進むことができるボートなのです」

「操作方法は・・・」



そしてワタシの説明が終わると、


クロエ「アタイ真ん中!」


ケイト「え~、ずるい~」


プリシラ「順番、かわりばんこですわ」


このスワンボートは横3人乗りで、ハンドルが真ん中の席にあるタイプ


その操縦席を巡り、早くも争奪戦が開始されたようです



(でも真ん中の操縦席からじゃ、舟首のオブジェが邪魔で前が見えなんじゃない?)


スワンボートの構造を考察をしつつ、ほのぼのとしたお姉ちゃんズ3人のやり取りを見ていると、


「ねえねえ、スキニー? 私は、私のは?」


ジェニー姐さんも当然、おねだりしてくるわけです


「ジェニー姐さんにはコレをどうぞ?」


そう言って、スワンボートのお隣に、縦列2人乗りのスリムなスポーツサイクルボートを出します


「こっちは2人乗りで、スピードが出るヤツです」

「ワタシと一緒に乗りましょう?」


「うふふっ、ありがと♪」



そんな感じで、みんなでボートに乗って、レッツ川遊び!




♪なぎさへ行こお~ ふんふんふんふ行こお~



ジェニー姐さんが操るスポーツサイクルボート、その後部座席で、


ペダルから足を離して、またもや女性デュオの楽曲を口ずさむワタシ


歌詞がうろ覚えで、ちょっとあやふやなのはご愛敬です


ん?

カニ食べに?

パパパパ〇フィー?




そもそもペダルにちゃんと足が届かないワタシは、ハナから戦力外


乗舟と同時に、ジェニー姐さんの単独走行待ったなしなのでした



お姉ちゃんズもスワンボートできゃぴきゃぴと川遊びをお楽しみのご様子


お荷物盗難による沈んだ雰囲気も一変していて、ホッと一息なワタシなのでした




そんな感じで、スワンボートは操縦席を何度か交代しつつ、


スポーツサイクルボートはジェニー姐さんの独壇場で、


一時間ちょっとの水辺の戯れを楽しんだワタシたち


時間的にはそろそろお昼近くになってきました


「そろそろ終わりなのですよ~」


お姉ちゃんズ「「「は~い!」」」



そして、中洲の砂浜へ上陸しようとしたとき、ワタシの足元の水中に白いモノが


それは白くてふんわりしていて、プカプカ浮いていました



「なんだろう、これ。クラゲかな?」


見た目はまんまクラゲのそれは、よく見るとワタシの足元に数匹いるようです


「コレは何です? このクラゲみたいなの」


既に砂浜に上陸していたお姉ちゃんズに聞いてみます


クロエ「ん? あぁ、コレね?」

クロエ「くらげ? それは知んないけど、コレは【ジェリッシュ】だね」


「【ジェリッシュ】です?」


ケイト「そうそう。水の中にいるスライムって感じですね」

ケイト「でもスライムと違って、役に立たないんです」


クロエ「スライムはゴミ処理とかいろいろ役に立つじゃん?」

クロエ「けど、【ジェリッシュ】はダメ」


プリシラ「フヨフヨ浮いているだけで、使い道がないんですの」

プリシラ「それに1匹見かけると100匹はいると言われるぐらい増えるんですのよ?」


「へぇ~、そうなんですね~」

「ちなみにコレ、魔石はあるんです?」


プリシラ「もちろんですわ。でも、スライムと同じでクズ魔石しか取れませんの」


ケイト「だから、誰も駆除しないんです」


クロエ「でもほっとくと、そこら中【ジェリッシュ】だらけになっちゃうんだ~」


「ふぅ~ん、そうなんですね~」


(へ~ この【ジェリッシュ】って、魔石、あるんだ~)

(でもスライムと同じでクズ魔石?)

(あれ? ワタシが最初にゲットした魔石って、スライムの魔石だったよね?)

(たしか、チャージ魔力量は100だったと思ったけど)

(10匹倒せば1000、100匹なら10000でしょ?)

(誰も倒さないなんて、なんだか勿体ないよね~)

(今のワタシの体調じゃアレだけど、何とかゲットしたいな~)




そんなことを考えならが、お昼休憩の為に一旦お家に戻るワタシたちなのでした


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