第15話 ひとり反省会


馬車との接触に気を取られ過ぎて忘れていたが、気づけば今のが異世界人との初コミュニケーション

スキル【言語理解】は良い仕事をしたようで、会話自体に何ら支障はなかった


(会話はできたけど、会話の目的は達成できなかったな・・・)


そんなことを思いつつ、今の自分に足りないモノを考える


(まずはこの世界(国?)のお金が必要だよね)


地獄の沙汰も金次第

金がものをいうのは、異世界でも道理のはず

そうであれば、早めにお金を手にする算段を考える必要がありそうだ


(あと、ワタシの服装も、どげんかせんといかん)

(ジャージはないよね、異世界人丸出しすぎ!)


どこかの知事が言いそうなセリフで不満を表明するワタシ

さすがにジャージ姿でうろうろしている女の子は、この世界では悪目立ちしてしまうだろう(たぶん)


(そして、ワタシ自身の設定も必要かな?)

(今後身元を聞かれたときとか、咄嗟に出てこないと怪しまれちゃうかもだし・・・)


ひとりで歩いて旅している女の子、

それなりの説明ができるヒストリーが必要だと思うワタシだった



そして最後に最重要案件


(それよりなにより、獣人のお嬢さんって、ドユコト? もしかして、ワタシのこと?)


そう、これが一番重要な問題

あの馬車の御者さんは言ったのだ、

別れ際に、

私に向かって


(これは、どうにかして確認しなくっちゃでしょ?)


そう考えていると、目の前に勝手に現れる【買い物履歴】画面

どうやら、【買い物履歴】のレベルアップに伴い、自動的に色々サービスしてくれるようになったようだ


(お? 何かこの状況にピッタリの商品でもあるのかな?)

(【買い物履歴】め、やるようになった! by S・アズナブルさん)



【買い物履歴】画面中央の[あなたにお勧め]に表示されている商品

先程までの【殺虫スプレー】とは異なり、

今は、



【手鏡 150円】



(あぁ~、これはアレだ、100円ショップの100円じゃない商品だ)


あれ?

100円ショップって?


そんないつもの疑問をすぐに払しょくし、お勧めの手鏡をすぐさま購入するワタシ

そして【インベントリ】から取り出して手鏡をのぞき込む・・・


するとそこには、驚きに目を見開いた少女の姿が・・・

銀髪のセミロングで青い瞳のネコミミ美少女が映し出されていたのだった・・・



(・・・やだ、・・・めっちゃカワイイんですけど!)


自画自賛

手前味噌

このまま放置すると、軽くナルシー入りそうな勢いで自分を見つめるワタシ


(うふふん、ワタシってば、いわゆるひとつの、【勝ち組】なのではなくって?)


手鏡を扇子の代わりに見立てて口元を隠し、なぜかお嬢様口調で、またもや知らない単語が勝手に口を衝くワタシ


あれ?

勝ち組って何?


しかしこれは、きっと褒め言葉

だから全く気にしない


(はぁ~、サプライズが過ぎて、ちょっと悩ましいですわ!)

(カワイイは正義って言うけど、実は罪なんじゃない? なんつってね!)

(よっし、落ち着けるところに着いたら、カワイイ服でも買っちゃうぞい!)

(そしてカワイイお洋服なんか装備しちゃった暁には・・・、何ということでしょう!)


知らないはずの単語を織り交ぜながらの妄想


浮かれていた

「なんつってね!」がナチュラルに飛び出すぐらいには

語尾に「ぞい!」をつけちゃうほどには

そして、

リフォーム番組のナレーションのモノマネをしてしまうくらいには・・・

まるで、件の番組の山場に流れる独特のメロディが聞こえているかのように・・・



先程までの暗い雰囲気がウソのよう

ひとり未舗装道路を歩くネコミミ美少女は、今はニマニマ笑顔

悦に入りながらの妄想状態が良かったのか、先程までの精神的な重さは霧散していた


それでもなお、

肉体疲労による物理的な足取りの重さは如何ともしがたく、

その歩みは遅々として進まなかったけれど・・・

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