第14話 第一次接近遭遇


「止まって止まって~! ストーップ!」


道のド真ん中で両腕を広げ、馬車を止めるワタシ

そして馬車が止まると、すかさず御者台に近づき、声をかける


「すみません!」


「おいおい、危ないなお嬢さん、馬車の前に出るもんじゃないよ!」


「ごめんなさい、でもどうしても聞きたいことがあって・・・」


「聞きたいこと? なんだってんだい?」


「あの、この馬車は街に行くんですよね?」


「あぁ、ミランダの街までの定期便だよ」


「すいませんが、その、ワタシも乗せてくれませんか?」


「ん? あぁ、お客さんね。料金は中途乗車でも満額もらうことになるけど、いいかい?」


「え? お金が必要なんですか?」


「おいおい、お嬢さん、当前だろぉ? こっちも仕事でやってんだよ」


「・・・そりゃそうですよね、失礼しました」


「それで、どうするんだい? 金を払うのかい?」


「すいません、今、その、持ち合わせがなくって・・・」


「ん? それじゃ、乗らないんだね?」


「・・・はい、すいませんです・・・」


乗らない(料金を払えない)のに馬車を止めたことに対して謝罪しつつ、馬車に道を譲るワタシ


「それじゃぁな、変わった格好の獣人のお嬢さん」

「馬車は急に止まれないんだ、今後は馬車の前に出るんじゃないよ」


「・・・ごめんなさいでした、お邪魔しました・・・」



ゆっくりと走りゆく馬車を見送るワタシ

初めて目にする馬車の運行、その余りにものんびりとした速度に驚くワタシ

(えぇ~? 馬車って、あんなに遅いんだ・・・)

(あれじゃぁ、歩いていくのとそんなに大差ないかも・・・)


それと同時に、別の思いもよぎる


(ちょっとショックなんですけど・・・)

乗りたかった馬車に乗れなかったという現実に、気が滅入る


そして、自身のとった行動についても考える

(ちょっと考えなしに馬車に飛びつきすぎちゃったよね・・・)

(そりゃ、タダで乗せてはもらえないよね・・・)

(だってそうだよね・・・)

(バスやタクシーに無銭乗車させてくださいって言ってるようなもんだしね・・・)


ん?

バスって何?

タクシーって?


これはいつもの疑問

だからあまり気にしないことにする


それよりなにより、気になって仕方がないことがある


さっき、御者さんの口から、とっても気になる単語を聞いた気がする

(あれ? 獣人のお嬢さんって・・・、誰?)

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