お姉ちゃんのおっぱい

「分かった。じゃあ遠慮なく揉ませて貰うからな」


「おうよ。じゃんじゃん揉んじゃっていいよ」


 三人のおっぱいの大きさの順番は大体分かるので、俺は勝ちを確信する。しかし奏美お姉ちゃんも余裕そうな顔で、こちらにおっぱいを突き出した。

 奏美お姉ちゃんのおっぱいは、見た感じだと三人の中で一番大きい。


 そのたわわに実ったおっぱいを、両手で鷲掴みにしてみる。むにっと指先が食い込み、水着越しだが人肌の温かさとスベスベ感が分かる。


「あん♡」


 すると余裕そうな顔をしている奏美お姉ちゃんが、わざとらしい喘ぎ声を上げた。


「変な声出さないでよ。揉みづらい」


「あれ、声出した方が気分も上がってこない?」


「上がらないな。逆に集中出来ないから」


「え〜。もっとアタシのおっぱいを楽しんでよ」


 奏美お姉ちゃんのからかうような声を無視しながら、俺は懸命に目の前のおっぱいを揉む。

 マシュマロのようにフワフワとしているが、下から持ち上げると重みもある。指先を食い込ませると、そのまま飲み込まれそうになる。おっぱいって不思議だ。


「瑞稀くん。目が怖い」


「おっぱい揉む時の顔じゃないよね。なんか研究してるみたい」


 俺が奏美お姉ちゃんのおっぱいを揉んでいるところを、衣緒お姉ちゃんと鈴乃お姉ちゃんが見学している。謎なゲームの上に、謎の光景だ。


 奏美お姉ちゃんのおっぱいを堪能し尽くし、手を離した。


「奏美お姉ちゃんのおっぱいは大体分かったよ」


 まだ手の中に残るおっぱいの感触を思い出しながら言うと、奏美お姉ちゃんはぷはっと吹き出して笑った。

 それに釣られるようにして、鈴乃お姉ちゃんもコロコロと喉を鳴らして笑い出した。


「瑞稀くん面白すぎるでしょ。おっぱい博士みたいなこと言うじゃーん」


 奏美お姉ちゃんはそう言って、俺の肩をバシバシと叩いた。上半身は裸なので、ちょっとだけ痛い。


 でも奏美お姉ちゃんの胸を揉んでみて、やはりデカいということだけは分かった。この手の中の大きさを覚えていれば、二人のおっぱいと比べるための指標となる。


「博士じゃないよ。おっぱい触ったの初めてだから」


「お、そうなんだ。じゃあアタシのおっぱいが初なんだ」


「そういうことになるな」


「初めてのおっぱいはどうだった?」


「なんというか……触ったことのない感触だった。もっとズッシリしてるのを想像してたけど、意外とフワフワしてた」


「あはは。それはどうも。悪くはなかった感じだね」


「ああ。触り心地はよかった」


 俺が素直にそう言うと、奏美お姉ちゃんは一度視線を下げて何かを確認してから、もう一度こちらを向いた。


「で、肝心の性欲はどう?」


 その奏美お姉ちゃんの質問に、衣緒お姉ちゃんと鈴乃お姉ちゃんも俺のあるところに視線を向けた。

 いったい三姉妹は何に視線を向けているのかと思ったが、どうやら俺の息子の様子を確認していたらしい。


「いや。特に変わりないな」


 奏美お姉ちゃんのおっぱいを揉んでも、俺の息子は無反応だった。

 おっぱいを揉んでも興奮できない男子高校生なんて、世界で俺くらいなんじゃないだろうか。


「やっぱりかー。分かってたことだけど悔しいなー。おっぱいには自信あったのに」


 奏美お姉ちゃんは肩をすくめると、衣緒お姉ちゃんと鈴乃お姉ちゃんの方を向いてから、俺と目を合わせた。


「んじゃ、答え合わせは皆のおっぱいを揉んでからってことで。アタシの仇は衣緒お姉ちゃんに託すよ」


 奏美お姉ちゃんがハニカムと、衣緒お姉ちゃんが「任せて」と立ち上がった。

 奏美お姉ちゃんと入れ替わるようにして、衣緒お姉ちゃんが俺の目の前に座った。こちらも奏美お姉ちゃんと同様に、座ったと同時におっぱいがプルンと揺れた。


「今度は私のおっぱいのカップを当てて。そして興奮して」


「頑張ります」


 衣緒お姉ちゃんは無表情のままこちらをじーっと見つめてくるので、なんだかやりずらい。


「じゃあ、揉むよ」


「うん。いつでも」


 でも三千円は欲しいので、衣緒お姉ちゃんの胸に手を伸ばして──恐る恐る揉んでみると、衝撃が走った。


「なんだこれ……奏美お姉ちゃんのおっぱいとは全然違うんだけど……」


 衣緒お姉ちゃんのおっぱいは弾力があった。奏美お姉ちゃんのフワフワのおっぱいとは違って、モチモチ感もある。

 何度も揉んで、揉んで、揉んでみても、やはり弾力があった。俺の指を押し返すような、ハリのあるおっぱいだ。

 無言でおっぱいを揉んでいると、なぜか衣緒お姉ちゃんは俺の頭を撫で始めた。


「瑞稀くん可愛い。必死におっぱい揉んで赤ちゃんみたい」


 そう言われると、なんだか急に恥ずかしくなってくる。でもまだ手を離すワケにはいかない。


 奏美お姉ちゃんのおっぱいが一番大きいのは確定だ。でも実際におっぱいを触ってみて、奏美お姉ちゃんと衣緒お姉ちゃんの間にはそれほど差がないように思える。

 そして二人ともおっぱいは大きめな方だと思う。AカップやBカップは小さい方だとマンガやアニメで聞いたことがあるので、二人はCカップ以上だろう。

 それを加味して考えると、奏美お姉ちゃんがDカップと仮定して、衣緒お姉ちゃんはCカップだろうか。いや、もしかしたら二人ともDカップの可能性が……。


 そんなことを頭の中で考えながらおっぱいを揉み続けて、ようやく手を離す。すると俺を撫でていた衣緒お姉ちゃんの手も止まった。


「私のおっぱいはどうだった?」


 眠たそうな目を丸くさせながら、衣緒お姉ちゃんは首を傾げた。


「奏美お姉ちゃんのはフワフワだったけど、衣緒お姉ちゃんのおっぱいは弾力があったな」


「おー、よく気がついたね。私のおっぱいは弾力があってズッシリしてるけど、奏美のおっぱいはフワフワしてマシュマロみたいなの」


「人それぞれのおっぱいがあるんだな」


「そう。このあと鈴乃のおっぱいも触ってみるといいよ」


 衣緒お姉ちゃんは俺の頭をポンポンと撫でて立ち上がると、奏美お姉ちゃんの隣りに腰を降ろした。


 奏美お姉ちゃんと衣緒お姉ちゃんのおっぱいの感触が手に残るなか、俺の目の前には鈴乃お姉ちゃんが足を崩して座った。

 しかし鈴乃お姉ちゃんのおっぱいは、少ししか揺れなかった。


「次はわたし! お姉ちゃんたちみたいな立派なおっぱいじゃないけど!」


 なぜか誇らしげな顔をしながら、鈴乃お姉ちゃんは胸を張った。少しでも大きく見せたいのだろうか。

 鈴乃お姉ちゃんの胸はお世辞にも大きいとは言えないが、だからと言って絶壁というワケでもない。

 これは揉んで確かめるしかないな……すでに二人のおっぱいを揉んでいるので、今更なんの躊躇いもない。


「じゃ、揉むぞ」


「あ、うん」


 無心のままで鈴乃お姉ちゃんのおっぱいを触る。ふっくらとした胸は手に余らず、頑張れば包み込むことが出来そうだ。


「ど、どう? わたしのおっぱいは」


 あまり自分のおっぱいに自信がないのか、鈴乃お姉ちゃんはおずおずといった様子で尋ねた。

 鈴乃お姉ちゃんのおっぱいは大きさこそ控えめだが、衣緒お姉ちゃんと奏美お姉ちゃんのとは違いムニムニとしている。柔らかなグミを揉んでいるかのようだ。


「なんて言うか、可愛いな」


「お、おっぱいが可愛いの?」


「ああ。衣緒お姉ちゃんと奏美お姉ちゃんのおっぱいは圧があったけど、鈴乃お姉ちゃんのおっぱいは圧を感じない。大きさの問題かな」


 自分なりに分析をしてみると、鈴乃お姉ちゃんは途端に顔を真っ赤に染め上げた。

 また何か変なことを言ってしまっただろうかと思った直後、鈴乃お姉ちゃんは俺のことを突き飛ばした。

 そのせいで鈴乃お姉ちゃんのおっぱいから手が離れてしまう。


「お、終わり! 弟におっぱいを分析されるの恥ずかしいから!」


「え、もう終わり? まだ揉み足りないんだけど」


「性欲ないクセにそんなエッチな言い方しないで! ド変態弟って呼ぶからね」


「おっぱい揉んでいいって言ったのはお姉ちゃんたちなんだけどなあ」


 鈴乃お姉ちゃんのおっぱいの大きさが分からないまま、揉み揉みタイムが終わってしまった。

 こうなったら、ちょっとだけ揉んでみて分かったことと、目視だけでおっぱいの大きさを測るしかない。


 奏美お姉ちゃんがDカップ。衣緒お姉ちゃんがCカップだと仮定すると、鈴乃お姉ちゃんはAかBカップのどちらか。

 奏美お姉ちゃんと衣緒お姉ちゃんのおっぱいの大きさは大して変わらないが、触ってみた感じDとCくらいの差はつくだろうと思った。でも衣緒お姉ちゃんと鈴乃お姉ちゃんの間には、そこそこの差がある気がする。

 となると、鈴乃お姉ちゃんはAカップで間違いない。


「じゃあ瑞稀くん。アタシたちのおっぱいのカップを当てて貰おうか。一人当たるごとに千円。一人でも間違えるとくすぐりの刑だから気を付けてね」


 奏美お姉ちゃんはニヤニヤとしながら、いつの間にか取り出した千円札三枚をヒラヒラとさせた。

 なんとしてでもあの三千円が欲しい。そろそろ今月の小遣いも、底を尽きそうなのだ。


 俺は深呼吸をしてから、姉たち三人に体を向けた。


「大きい順から行くぞ。奏美お姉ちゃんがDカップ。衣緒お姉ちゃんがCカップ。鈴乃お姉ちゃんがAカップ。これでどうだ?」


 俺がそう言うと、お姉ちゃんたち三人は体をピクリとさせて驚いたように思えた。もしかしたら全問正解しているかもしれないという自信が、ふつふつと湧き上がってくる。


「ファイナルアンサー?」


「ああ、ファイナルアンサー」


 衣緒お姉ちゃんが尋ねたので、俺は自信満々に頷いた。

 お姉ちゃんたちは交互に顔を合わせて行くと、三人は同時にニヤリと口角を釣り上げた。

 その顔のまま、三姉妹はこちらに四つん這いのまま近づいてくる。


「瑞稀くん! 寝っ転がれー!」


 すると鈴乃お姉ちゃんが、思い切り俺のことを押し倒してくる。いきなりのことに頭が追いつかず、俺はされるがままにベッドの上で仰向けに寝転がる。

 しかし次の瞬間には、奏美お姉ちゃんが俺の両手の上にお尻を着いて座り、腹の上には衣緒お姉ちゃんが乗った。バンザイの体勢のまま、完全に身動きが取れなくなる。


「ま、待ってくれ。これはどういう状況だ……?」


「残念だけどハズレ。奏美がDカップで私がCカップなのは当たったけど、鈴乃はAカップじゃない」


「えっ……」


 嫌な予感が全身を駆け巡る。

 目だけで鈴乃お姉ちゃんの方を見ると、彼女は怖い笑顔で俺のことを見ていた。


「わたしBカップあるんですけど。そんな小さかったかな?」


 背筋に冷たいものが走る。俺は反射的に、首を横にブンブンと振っていた。


「ち、違うんです! これにはちょっとしたワケが──」


「言い訳はあとで聞くから。まずはくすぐりの刑だよ」


「ま、待ってください! 俺、めちゃくちゃくすぐり弱いんですよ。だからどうか見逃してくれないかなって……」


「弱いならちゃんと罰になるじゃん。とりあえず五分間はくすぐるからね」


 ご、五分間もくすぐられるのか? そんなの耐えられるはずない。

 俺はなんとか逃げようとするも、両手をがっしりと奏美お姉ちゃんに拘束され、腹の上には衣緒お姉ちゃんが乗っかっていて全く身動きが取れない。


「それじゃあ。くすぐりの刑。執行」


 衣緒お姉ちゃんの宣告とともに、三十本の指が俺へと近づいてくる。


 海パンしか履いてない上に両手を拘束された俺は、呆気なく全身へのくすぐりを許してしまう。


 ラブホテルの一室に俺の悲鳴にも近い笑い声が、五分間にも渡って反響することになった。

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