第2話
木でできたスーパーピーターパンの家の前で、狼はたたずんでいた。そして、大きく息を吸い込み鼻から吐き出した。その勢いで、木っ端微塵に吹き飛んだ木の家の中では、今まさに眠りにつこうとしていたスーパーピーターパンが、目を点にしてその暴挙に及んだ狼のほうを凝視していた。
のっしのっしと近寄る狼が、がばりと大口を開けた瞬間、その場にすっと腰を落としたスーパーピーターパンがまわし蹴りを放つ。
足払いをまともに受けた狼はその場に横様に倒れ、たまたまそこにあった木の椅子の角に頭をぶつけた。失神寸前で持ちこたえてなんとか体を起こそうとする狼へ、すばやく近づいたスーパーピーターパンは、その両足首を自らの両脇に抱えて持ち上げ、ぐるぐるとその場で二周ほど振り回してから放り投げた。
放物線を描いてかなたへ飛んでいった狼は、運よく枯れ木が積まれた場所に落下したために衝撃が緩和され、すぐに立ち上がることができた。命の危険を感じた彼は、ほうほうの体でその場を後にする。
残されたスーパーピーターパンは、真実の強さを求めて、旅に出ることを決意した。
レンガでできたピーターパン・オリジンの家は、狼が何度鼻息を吹きかけてもびくともしなかった。窓を探しても見つからず、屋根を探しても侵入できそうな煙突も見つからなかったため、あきらめて帰りかけた、そのとき、背後から一人の少年が現れた。
狼はなぜか家の中に隠れているはずだと勝手に思い込んでいたのだが、そもそもその日、ピーターパン・オリジンはずっと外出中で、たった今帰ってきたのであった。
目の前の狼が何をしているのか、その瞬間は彼にも理解できなかったが、大口を開けて襲い掛かってくると、反射的に手に持っていた鉄の棒をその口の中に突き入れた。家具の部材にしようと思っていたものだが、適度に強度があり、そして適度に先が尖っていた。
それほど勢い良く突き刺したわけではなかったのだが、狼のほうが勝手に勢い良く突っ込んできたおかげで、その先端は狼の口の中から上あごを突き抜けて脳天へと届き、さらに頭蓋を貫通して、完全に串刺しの状態になった。
ぴくぴく、と何度か体を痙攣させたあと、狼は動きを止めた。口や頭頂からとめどなく流れ出てくる赤黒い血液が、その体毛をぬらしていく。
ピーターパン・オリジンは、死んだ狼の刺さった鉄の棒のもち手のほうを地面に突き刺してオブジェのようにその場に立てる。
彼はしばらくその場にたたずんでいた。いったいなんだったのか、彼には理解不能であった。どう考えてみても、彼の方に落ち度があるとは思えない。ただただその狼が血迷って襲い掛かって来たにすぎず、そこへ彼がちょうど右手に持っていた棒を差し出しただけのことだ。
十分ほど考えて、自分は何も悪くないという結論を得たピーターパン・オリジンは、とりあえずその狼を晩御飯のおかずにするため、焚き火を熾すことにした。
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