自分に恋する

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自分に恋する




〔今日は彼氏のためにカレーを作ってあげた!〕


そんな言葉をつけてSNSに写真を投稿する

5分も経たないうちに300件以上のいいねとコメントがついた


「フフッ」


加奈はその光景を見て幸せそうに微笑む

画面には他にもたくさんの手料理や弁当、彼氏にあげたプレゼントの写真が写っている


「何見てるの?」


ニコニコと笑顔を浮かべ、隣から話しかけてきたのは加奈の彼氏

ちょっとダメなところも多いけどそこがなんか可愛らしい

見てると放っておけない、色々してあげたくなってしまう


「今日作ったカレーの写真をSNSにあげたのよ」


「そうなんだ。 今日の加奈のカレーめちゃくちゃ美味しかったよ! 加奈の料理はいつも美味しいけど」


「ありがとう。ちゃんと上手く出来て良かった。あっ、そういえば時間は大丈夫なの?」


急いで時間を確認すると時計の針は10時半を指していた


「ホントだ。もう行かなくちゃ」


「楽しい時間ってすぎるのが早いよね。

本当はもっと一緒にいたいのに......」


「僕ももっと一緒にいたいけど、明日も朝早くから仕事だからしょうがないよ。加奈の家に泊まれれば良いんだけど」


「家に泊まるのはちょっと厳しいの。毎回断っちゃってごめんね」


「謝らなくて良いって、冗談だよ。いつも尽くしてもらってるしそれぐらい気にしないよ」


「そう? ありがとう。帰り気を付けて」


「こちらこそありがとう! また明日ね。おやすみ」


彼氏が加奈の頬にキスをし、ドアを開けて外に出る


「じゃあね!」


彼氏は閉める前の隙間から小さく手を振るとバタンとドアが閉じた


「ふぅ......」


加奈はドアに鍵をかけて部屋にあるソファーに腰をかけた

そこでちょうど横においてあったスマホが鳴る

手にとると友達からの電話だった


「もしも~し、加奈? 今暇?」


「今ちょうど彼氏が帰ったところ。そっちこそどうしたの?」


「私今ヒマだからヒマ潰しに加奈と話したいだけ~相変わらず今日も彼氏とラブラブですな」


「もう、あまり茶化さないで。今日はたまたま家によっただけよ。」


「そんなにラブラブなのに彼氏と同棲とかしないの~? まだ家に泊めた事すらないから無理あるか」


「社会人としてもう少し慣れたらね。それか......彼氏が昇格して給料上がったらにしようかな、なんてね」


「結構厳しいこと言うじゃん。彼氏あんまり仕事出来ないって聞いたけど」


「そうなんだ。じゃあ同棲はまだ先の話になりそう。」


「まったくさ、付き合ってるんだから同棲とかすれば良いのに。 もう大人なんだし 」


「こっちにはこっちの事情ってものがあるの。 あまり口出さないでちょうだい」


「ごめんごめん。にしても加奈って本当彼氏の事大好きだよね。仕事で忙しいのに彼氏によく弁当とか作ってあげてるじゃん? 尽くしまくってるというか」


「そうかな? そんな事ないよ。これぐらい普通普通」


その言葉に加奈の口角が上がる


「これが普通じゃないんだよ。私の友達もみ~んな加奈の事最高の彼女だって言ってるよ。彼氏に尽くして、彼を支えてる加奈がとても健気だって」


「彼を支えてるって別に私はしたいことをしてるだけよ。そんな大層な事じゃないわ。」


「ちなみに彼氏の友達も同じこと言ってた。あんなに良い女、鈍くさいアイツにはもったいないくらいだって。」


「そんなに言われたら照れちゃうわ。ほら私今電話越しで照れ笑いしてる」


みんなから褒められている事を知り、思わず照れ笑いをしてしまう


「そんなの電話越しじゃ分かんないっての。でもみんなの言うとおり確かに鈍くさそうな男ではあるかな。仕事もあんまし出来ないって聞くし、正直なんで付き合ってるんだろうと思ったことはある。加奈なら他にも良い男たくさんいるじゃん?」


「みんなして失礼な事言うわね。あれでも彼に良いところはたくさんあるのよ」


「へぇ~例えばどんなのよ」


「例えばねぇ~」


加奈はソファーを離れ、冷蔵庫からビール缶を一本取り出す

フゥ~と深く息を吐いて再びソファーに腰をかける


「雰囲気がゆったりしてて落ち着くとか、あとは......優しいところとかよ」


「ほぉ~ん。まぁ加奈はそういう男が好きなのかねぇ~」


「ちょっとそれどういう意味よ」


「言うなればダメンズ好きって言うのかな?

流石にそれは失礼か。 」


「流石にじゃなくて全部が失礼なのよ。まったくもう......」


「で、でも加奈みたいな人に尽くされて彼氏さんも幸せだと思うよ!」


「そうね。だったら良いんだけど」


その後も電話し続け、気づいたら12時を過ぎていた


「ん......もう12時過ぎてるし私そろそろ寝るね。」


「確かにもう12時だし私も寝ようかな。今日はヒマ潰しに付き合ってくれてありがと。またね~!」


電話を切った後、ビールを一本あける

グビグビと勢いよく飲んでいると、またスマホが鳴る音がした

見ると彼氏からのメッセージの通知だった


〔明後日休みだからもし空いてたらデート行かない?〕


返信しようか悩んだが、とりあえず通知だけ確認して未読スルーしておく


「デートか~めんどくさいな......」


呟きながら背伸びをし、歯磨きをするため洗面台に向かう


「おっとこれは?」


歯磨きを終え、スマホを見ると大量にSNSからの通知が届いていたことに気がつく



SNSを開くと、先ほど投稿したばっかの写真

いいねやコメントが3000件以上に増えていた

コメントには、


〔こんな彼女俺も欲しい! 彼氏羨ましすぎる!〕


〔忙しい中彼氏に手料理振る舞うなんてカナちゃん優しすぎ❤️💜💙〕


〔私もカナちゃんみたいな彼女になりたい!〕


〔全世界の彼女の手本!〕


などが書かれていた


「フフフッ、もう~みんな私の事褒めすぎだよ~」


そんな事を口に出すも、加奈は喜びが隠せずにクネクネと体を震わせていた


「同棲めんどくさいとか思ったけど、家事とかやればもっと尽くすこと出来るかな? 彼は家事苦手って言ってるしちょうど良いかも」


加奈はチラリと画面の中の『フォロワー』の数字に目を向ける


「明日も彼のために頑張っちゃおっと♪」


明日も頑張っている自分の姿を思い、加奈は眠りについた


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