とある少女の記憶
親の顔は、覚えてない。物心つく頃には、もう教会にいた。
この教会には孤児院があり、子を育てれない親がよく捨てに来るらしい。私もその一人だろう。
私は他の子より力が強く、率先して薪割りや買い物、たまに冒険者の荷物持ちをして孤児院の足しにしていた。
木が紅くなる頃、冒険者の一員が来た。ベテランパーティーだと、年下の子たちが噂していた。私はこの町では力自慢としてそこそこ有名だから、おそらくいつもの荷物持ちの依頼だろう。まだ薪を集め終わってないから、冬が来る前に終わるといいんだけど…。
「やぁお嬢さん。君はソレを無意識でやっているのかい?」
孤児院近くの森で木を集めていると、ローブの人が話しかけてきた。ソレとは一体なんなのだろう
「ダメよグラちゃん、ソレって言われてもわからないわ。ねぇ、あなた他の子より力が強いんじゃない?」
その後ろから、変な口調の筋肉が凄い人が現れた。力は強いけど、それがどうかしたのだろうか。
「オイガキ。働キスギタ時、急二眠クナラネェカ」
私の背後から急にくぐもった声がした。振り替えると変な仮面をした人が木の後ろにいた。頭がクラクラするときはあるけど、滅多にないから気にしていない。
「おじさん達、わけのわからない話はしないでよ。ホカの人と同じで、荷物持ちの依頼でしょ。何処まで運べばいいの?1回あたり10G貰うからね。」
「いや、ワシらは荷物運びの依頼をしに来たんじゃないぞ。」
「ここは孤児が多いでしょう?何人か見繕って鍛えてみようかと思ったの。」
「ドウダ?俺等ガ師匠トナッテ、オマエヲ冒険者ニシテヤロウ。」
「皆はいいかもしれないけれど、私はいやよ。人手が足りなくなっちゃうわ。それに私の姿を見てわからない?薪を買うお金すら孤児院にはないからこうやって拾いに来てるのよ?」
「……ちなみにワシらが依頼人だ。君たちの時間を貰ってワシらのために使って貰うんだからな。
報酬は一人当たり1日50G「やるわ」え?」
「私も鍛えなさいって言ってるのよ。その代わり、日給制にしてちょうだい。」
「中々やる気じゃないか。よし、ワシの出す課題をこなす度に50G増額してやろう。」
「のぞむところよ。」
こうして、私は変なオジサン達…ううん。冒険者パーティー
ところで、ソレって何だったのかしら?
話が終わり、孤児院へ少女が帰って行くのを見届け、冒険者達も宿に帰って行く。
「さて、これから忙しくなるな。給料払うには全然足りないしな!」
「勝手二シロ。俺ハ指導以外手伝ワンゾ。」
「今回はワタシもちょっと…。意見には賛成だけどわざわざお金を払ってまでやらなくてもよかったんじゃないかしら?」
「さぁな、年寄りの道楽とでも思ってくれよ。だが無意識に練技を使っていたのは驚いたな。あれは伸びるぞ。」
「えぇそうね。ところで、仕事のあてはあるの?」
「それは考えてあるさ。」
「オマエガソウイウ時ハ大体何モ考エテ無イ時ダ。」
日が沈み、冒険者達は夜の喧騒に紛れていった。
勝利の剣のウラバナシ(sw2.5) ルージュ @rikkun_rouge
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