小話 少女二人の雪遊び
アントチホー、パークセントラル近くにある巨大な実験場もとい観光地、アイスキャニオン。
訳あってそこにたどり着いた瑠奈が、一度別れたトウゾクカモメ、ウェアウルフと合流する前の事。
彼女は一人の少女、ミナとの出会いを果たしてから子供同士の遊びに明け暮れていた。
「ほらほら!隙だらけだよー!」
「ちょ…きゃあ!もおっ!」
駅前の広々とした場所で雪玉が跳ねるように飛び交っていた。
人間の少女の瑠奈とミナが、二人で雪合戦を楽しんでいる証拠だ。
「えーい!」
「なんのっ、この速球をくらいなさーい!」
「わぶっ…やったなー!」
雪玉を投げる手が止まり、ミナが元気そうに走り寄っていく。
お互いの顔をみて、笑顔を向け合う。
「誰かと遊ぶってたのしーわね!ルナ!」
「ふふっ、今度は瑠奈が勝つもんね!」
まだ出会って間もない二人だが、たった短い遊びを経てすぐさま打ち解けあえている。
パークが本格的に開園すれば、これがごく普通の光景になるのかも知れない。
「次、何して遊ぼっか?」
「じゃあさじゃあさ、一度雪だるま作ってみたいの!」
「雪だるま?あれよね!雪を転がすやつ!」
「せっかくこんなに雪で溢れてるんだものっ、雪だるまふたつ作っちゃいましょっ!」
「やろやろー!私たちの手で可愛くつくろう!」
「その意気やよし!」
第三の女の子の声に二人が振り向くと、そこにはもこもことした上着を着込んだ、驚くほど白い髪の毛の少女…いや、アニマルガールが仁王立ちをしていた。
「誰?!」
「あっ、えーと…白いランタン!」
「ちがーう!!ジャック・オー・フロスト!ランタンちゃんはわたしの友達!!」
白い雪の精霊のフレンズは、二人に指を刺して熱弁した。
「雪だるまを作りたい!あなた達はそう言ったわね」
「言った言った!」
「しかーし!でっかい綺麗な雪だるまを作るのはかなり時間がいるの!」
「そういえばよく見かける雪だるまって…大体でっかいよね」
「ま、これだけ雪が積もってれば大丈夫だと思うけど」
「どのぐらいでっかい方がいいかなあ」
「そりゃルナ!夢は大きく私たちサイズの雪だるまよっ」
「あのねミナ。瑠奈たちはまだ小さいんだよ」
「なんですって?!どこがチビなのよ!」
「いやあの子見てよ!私たちより背が高いの!いわゆるおねーちゃんよ」
「つまりあの子はノッポさんって訳ね」
「よしっ!!あの子と同じ身長のゆきだるまを目指すわよっ!!」
(えっ、それでいいの??)
二人が雪玉作りを始めて1時間が経過した。
見るも立派な大きな雪玉が、頭・胴体と完成し、残すは設置作業だけだった。
「いやでっかくない?」
「でっかいよねこれ」
「身体のサイズをフロストと同じにしてどーすんのよ」
「それだけ私たちがでかい雪だるまを作りたかったってコトよっ」
物はいいようだな、と冷たく白い息を外に解放する。
あとは頭を乗せるだけだが、これがかなり苦労しそうだった。
「流石に乗せるのは手伝うから、ちょっとまってて!」
「おねがい!」
こうしてフロストも加わり三人で持ち上げながら、なんとか二つの雪だるまが完成した!
「やったあ!」
「あとはお顔とおててを作ってあげましょっ」
その場にあった石や木の枝を顔と手に見立て、シンプルながらも大きな大きな雪だるまが出来上がった。
自分の背丈ほどある雪だるまが自分たちの手で出来上がったことに、二人は感慨一入、お互いにハイタッチしながら喜び合うのだった。
「ニャハ!とっても可愛い!エクセレントよ!!」
「頬擦りしたくなっちゃうっ。していい?」
「やめたげてよ!そっとしてあげなきゃ」
「次何するのかしらっ。ねえねえ!」
「待って待って!次は…そうだ、瑠奈の友達紹介しよっか」
「まあっ、なんて素敵な響きなの!」
遊び終えた二人は、まだまだ元気そうに走り出していく。
子供同士の彼女達にとって、些細な見た目の違いや、住む場所の違いなど、本当に取るに足らないものなのだろう。
それこそが、人間の目指すべき姿なのかもしれない。
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