第3話 出かけた先に、氷と雪の街
モスマンの襲撃から辛くも逃げ出し、自分たちがいずれは元の場所に帰らなくてはならない、ということを忘れてしまったかのように道を走り続けていた。
言葉も休憩も忘れ、ただ背中に背負う小さな身体を守るために。
それは自らの視界に違う景色が見えてくるまで止まらず、堰の切れた濁流のように脚は止まらなかった。
あの時のことを思い出す、モスマンはあの時から変わっていなかった。
いいや、変わってしまっていたからこそ、拳が出てしまったのかもしれない。
「う、ウルフ?大丈夫なの?」
右の拳に罪の意識を感じながら、それはひとまず置いておこうとした。
いまはとにかく、走り続ける。
狼が半人半狼でいられる暇はもうなかった。
「がっ…はあっ、はあ…!」
身体から毛が消え、代わりに衣服が舞い戻る。
そこでようやく、三人の歩みは止まっていく。
「きゃっ…ちょ、大丈夫!?」
「はあっ…はあ……」
「ここまで逃げればもう大丈夫ですよ」
「っ…そう、願いたいわね…」
立ち止まった折に、お互いの無事を喜び合う三人。
あの時モスマンが何を企んでいたか、いくらでも想像はついたが、確証に触れる余地はなかった。
今はそれよりも休息が望まれた。
「ほら、持ってきたジャパまん!食べれる?」
「ありがとう…」
渡された食料を受け取って、一心不乱に食べていく。
いつものばい美味しく感じられる。ただそれだけの差で、次同じような状況になったとしても走れるだろうとすら思えた。
「あんだけ走った後なのによく食べれるよね」
「ふう……」
「あっ、ワタシにも一個くださいよセンパイ」
「分かったー」
静かな地面の上に座りながら、ひとときの食事が始まる。
今いる場所はどこなのか…ジャパまんを頬張りながら、少女は思考した。
吹いてくる風は、どこかいつもの場所より冷たく感じられた。
「それにしても、アイツはなんで羽に執着してたんですかね」
「さっぱりわからないけれど、早く持ち主に返した方が良さそう」
「でも抜け落ちた羽は鳥からしても別に…って感じですし」
「だとしても返してみようと思う。持ち主さんがそれで嬉しいか分からないけど、ひとまずはそうしてみる」
「センパイが決めたんならそれで良いと思いますよ」
「うん。パパとママも心配するから、早めに帰るつもり」
「…良い判断よ」
「…この場はなんとかなりそうだけど、食料はいつまでも続くモノじゃないでしょう?」
「早めに戻れるなら別だけれど…今日は十分な食事と寝床を探さないと」
「そういうことならこの子に聞いてみましょ!」
ぴょこん、と鞄の中から出てきたラッキービーストを前に、瑠奈が揚々と尋ねた。
「ラッキー!この近くに街とかホテルはあるの?」
『ここの近くには、アイスキャニオンがあるよ』
『ホテルにカフェ、お洋服やさんがあるよ』
「アイスキャニオン!もうそんなところまで来てたんだ」
「いいじゃないですか。あそこ行ったことありますけどもう最高でしたよ!」
「ひとまずは…そこで一泊した方がいいわね」
「ついでだから青い羽の情報も手に入ると良いですねえ」
「決まりね!」
次の目的地が決まって、止まっていた歩みは再び動き始めた。
これからの旅路がどのようなモノであれ、目指すべき場所、というものはいつだって光をもたらしてくれた。
暗い海の中に街を示す灯台のように。
* * *
そして、アイスキャニオン。
深雪が降り積もった雪の街、とも言える様相の場所が視界に飛び込んでくる。
それは驚きとともに寒さを持って脳に刻み込まれ始めた。
「先ほどまでは温暖な世界が続いていたのだが、ここに近づいた途端に極寒の世界が三人を出迎えてきたのだ。
「うわわわ…奥のあの氷山、氷なのに荒野にありそうな見た目してる…!!」
「感覚がバグりそうね…」
「こんな寒いとこにホテルやギフトショップ、それにカフェもあるなんて…ヒトも根性ありますよねえ」
「じゃあ加帕里夜市みたいにご飯食べられるんだ」
「ひとまずは…あそこでチェックインを済ませましょう」
「おー!」
ホテルの文字がでかでかと飾られた、四角い人工の建物。
その中に急いで駆け込むと、広々としたロビーが三人を暖かさを持って出迎える。
設置されたソファに座って過ごすフレンズ、一階のカフェを出入りするフレンズたちと、中はそれなりに賑わいを見せていた。
初めて訪れるこの光景、どこを見ても何時間でも見れると思えるほどに、脳が楽しさを認識していたのだ。
「あの、予約してないのだけど部屋は空いているかしら」
「ここって初めてきたんですか?」
「うんうん。お土産に写真撮っちゃお」
旅先の思い出が端末に記録されていく。
こうしたものの一枚や二枚、撮っておかねば損だろう。
「二階のツインが空いているそうよ」
「りょーかーい」
「さて、私は先に部屋を確認してくるけれど」
「ワタシは今のうちに食料買ってきますよ」
「じゃあ瑠奈、アイスキャニオンで遊んでくる!一度ここには来てみたかったの!」
「だったら…私と合流してからにしましょう」
「ウルフはさっき体力使ったでしょ?無理しなくても…!」
「そうですよ。それにワタシがセンパイの事みれると思うんで…休んでてください」
「…」
「…分かったわ…」
「よろしい!いいこいいこ!」
「ん…」
「あー!センパイちょっとワタシも撫でてくださいよ」
「はいはいーよしよしよし」
「…ん?」
ふとロビーの真ん中を見ると、一人の気品溢れる白髪の客人がやってきていた。
彼が牽引するカゴの上には、人一人分はありそうなサイズの何かが布に隠されているものがあった。
「あの人の荷物…デカくない?何あれ」
「さあ…一悶着はありそうな大きさね」
その大きな荷物をめぐって、客人とスタッフが何か話し合いを始めていた。
どこか揉めているのか、少なくとも何やら普通の会話はしていないであろうことが、雰囲気から察せられてしまう。
その布に被せられたものの中身は、推して知るべしといったところか。
「…あんま関わらない方が良さそうかも」
「そうね…あの人が話してる今のうちに行ってくるわ」
そそくさと部屋に向かっていくウルフを見送る。
後ろ姿はいつもの調子で、尻尾も何か元気がなさそうだった。
何かお土産を買った方がいいかも知れない。
「それじゃ、こっちも早いとこいこっか」
「了解です、センパイ」
扉を開けた途端、二度目の寒さが建物の外から襲ってくる。このしろい、大地が凍りついたようなふわふわの大地はやはり偽物ではないと、空気が存分に分からせようとしているほどの寒さだった。
「うー、さぶい…!」
「センパイが買うべきはあったかい上着じゃないですか?」
「そうね…今日は晴れてるけど、すごく寒い…」
「あそこにほら、お洋服のお店ありますよ」
「ありがと、行ってくる!」
「むっ、あそこは…おにぎりを売っているんですか」
「はいはいはーい!一つくださいな!」
* * *
ウキウキの気分で上着とマフラーを手に入れた少女が、再び寒空の下に躍り出てくる。
他に買った戦利品を示す手提げ袋がないあたり、本当に上着だけ買ってきたのが誰の目にも明らかだった。
「ほかほかも装備したし、しばらくここにお泊まりしても安心ね!」
知らない土地、知らない土地での一人の買い物に、テンションが上がっていた彼女に油断がなかったとは言えない。
その油断とは。
「ぎゃんっ!」
「きゃあ!」
見知らぬ人間の子供と、真正面からぶつかり合ってしまったのだ。
ぶつかった相手とは果たしてどのような人物なのか?
「っもお…!いったた…」
「あ…ご、ごめんなさい…!瑠奈、前見てなくて…」
「うー…?ああ、気にしてないから。今のは油断した私の責任よっ」
「それよりあなたも大丈夫なの?痛かったでしょ」
「大丈夫よ、こっちにはほかほかもあるし!」
自分とちょうど同じぐらいの女の子だった。
赤い服はシンプルながらも、育ちの良さを予感させる雰囲気を持っていた。
この雪景色に、ブーツに赤い服とくれば、帽子があればサンタクロースになれそうだ、そんな変な考えが頭をよぎった。
そんなこちらとは対照的に、長いスカートの裾をすこし持ち上げて、行儀良さそうに少女は挨拶をしてきた。
「ぶつかっちゃったお詫びに教えてあげる、私はミナよっ。旅するのがスキなの!」
「る、瑠奈は瑠奈。月島瑠奈っていうの」
「今日はトウゾクカモメとウェアウルフと一緒に、訳あってここまで来ちゃったんだよね」
「お月様にライカンスロープ…良いじゃない。運命を感じざるを得ないわっ!」
「あっ、私はミナっていうの。以後宜しくおねがいね?」
「うん!てか、ミナは誰かと一緒じゃないの?」
「私は一人旅よ。でも、こうして街に出たのは初めてだわ」
「ふうん…じゃあ、お洋服屋さんとかカフェとか、知らないでしょ」
「しらないわ!」
「じゃあ、一緒に行こ!ちょうど一人で暇してたし。」
「やったー!」
身体で嬉しさを表現した後、少女は素早く、どこかへと飛んでいくように走り出し始めた。
「脚早ッ?!」
「ルナー!!ぼさっとしてると置いてくからーッ!」
「ちょ…待ちなさいよおー!」
真っ先に飛んで跳ねていく少女が、次々に長い足跡のレールを雪原に敷いていく。
こんな寒い中でも、彼女は驚くべきことに元気な様子を見せていた。
ゆきふる場所を庭のように駆け回る彼女は、確かに外国からきた風貌をしていた。
「もお!迷子になったらどうするのよ!」
「そんときはルナのこと探してあげるわっ」
「ミナが迷子になった時の話してるの!」
「この私に迷子なんて文字は存在しないわっ。私が行く道、其れ即ち王道よ!」
「何の王道なのよ、もう!」
「それにほら、ちゃんと地図もバケツリストも持ってきてるんだからっ」
「えらいー!でもバケツリストって何?」
「ふっふっふ。教えて差し上げるわね」
「死ぬまでに絶対にやりたいことを100個書き連ねるの。全部やり終わったら、そこからまた新しい未来が待ってるの」
「私、やりたいことだけはいっぱい浮かんだからしらみ潰しにやってみようって思ったの」
「だから一人でここまできたんだ?」
「うん」
「このリストの達成は、私の人生の導なの」
「私、世界のこと何も分からないから。これが世界地図代わりよ」
「面白い冒険が、きっとできると思うの」
「…一緒に、やる?」
「えっ?」
「ほら、まだ昼過ぎで時間もあるし、瑠奈も夜までは暇だし」
「全部埋めちゃう勢いで、ね!」
「ルナ…」
「…ふんっ、そんなこと言うからには、しっかり付き合ってもらうんだからっ」
「もっちろん!」
「でもっ、人生の楽しみはしっかり味わうものよっ。故に全部はかじらないから!」
思わぬ出会いに、心もどこか浮かれてしまっていたのだろう。
足取りも雪を感じさせないぐらいに、軽く体を動かしていく。
元気な子供二人が、雪の街に解き放たれていった瞬間だった。
* * *
キャニオンにある、ホテルのカフェ。
そのカウンター席で、狼は一人新鮮な水をグラスに揺らしていた。
パークに存在する飲食店の水はどれも新鮮で、野生の頃に見た水と遜色のない純粋さを保っている。
それをゆっくりと喉にくだす度、心が落ち着いていくのを感じた。
「…もー大丈夫そうですか、ウルフさん」
「ええ。すっかりね。…ルナは?」
「外で他の子供と遊んでましたよ。もう少しかかるかも」
「一応ここ集合でって言っといたんで」
「そう…一人じゃないのなら、いいわ」
「それにしてもこのお店、ワタシが睨んだ通りだったでしょう」
「…悪くない味ね」
「ちょっとは心も安らぎますか」
「…」
この店はどうやらトウゾクカモメの知っている場所だったらしい。
小洒落た酒場をイメージした店内が醸し出すアウトローな雰囲気が、彼女の好みのようだ。
「ウルフさん。普段は瑠奈たちと何してるんですか」
「変わったことはしてないわ…審判やったり、かくれんぼの鬼をやったり」
「この間は、スマホから音がなったから近づいたら、スマホだけ…って感じで引っ掛けられたわ」
「それもうかくれんぼじゃなくないですか」
「他にはそうね…私の腕でみんな鉄棒ごっごしてたわ」
「デカイですもんね」
「楽しそうだったわ…」
「ルナはね…よく私の髪の毛に抱きついてくるの」
「ワタシの羽にもよく触ってきますよ。もふもふしたものが好きなんだと思います」
「そう…可愛らしいわね」
「そう、カワイイんですよ」
「青い羽の主に取られないようにしなきゃね?」
「それはもうもちろんですよ。これ以上ぽっと出が増えてたまるか!」
からんころん。軽やかな歌のような鈴の音色が来客を示した。
すぐさま振り向いた先には、少女“達”が立っている。
「雪だるまづくり楽しかったわねっ!」
「でっかいの作っちゃったぁ、また来る時も残ってたらいいなぁ」
「お?早かったですねアナタ方!…ん、アナタ方???」
「…一人増えてる?」
「ほ、ホントだあ!?うわーっ!?」
「ちょっと、二人とも大袈裟すぎよ!」
「ふふっ。こんなに驚いてもらえるなら来てよかったというものね」
「いやだって、連れてくるとは思わないじゃないですか!」
二人の視線が赤い服の女の子に集まる。
特にトウゾクカモメからは、一緒に来ることなど想定してなかったのが一目瞭然だった。
そんなことは知らずのまま、瑠奈の腕に少女は絡み付いていた。
「ま、また新しいライヴァルが…!!」
「大袈裟なんだから…」
「隣いい?」
「え、どうぞどうぞ」
二人の近くのカウンター席によじ登り、すわっていく
しっかりと座り終えるや否や、頬杖をついて辺りを見渡し始めた。
「わぁ…こうしてカウンターのイスに座ると、なんだか大人みたいな気がするっ」
「映画のワンシーンみたいでワクワクしない?ルナ!」
「するする!」
(凄くおしゃべりな子ね…)
「てか、センパイと同じぐらいちっこいですね〜〜〜??よかったらワタシが目一杯面倒みてあげますよぉ」
「あらごめんなさい。先約が居るのよ?」
「私はトウゾクカモメですよ、そんなの知ったことじゃないです」
「ま、まさかのドロボー…?!」
机の上のラッキービーストが目を光らせて、割って入るように音声を放つ。
『トウゾクカモメの仲間には、卵や雛を狙う種類もいるんだよ』
「聞きたくなかったなーそれ」
「わ、ワタシは二人にそんなことしませんからね」
いつも通りにしばし沈黙を貫いていたウェアウルフが、口を開いた。
静かな声色のまま、ミナへ尋ねかけられる。
「あなた…1人でココにきたの?」
「ええもちろんっ!冒険の真っ最中に綺麗な街を見かけたからここでお休みするつもりなの」
「すごいですねえ、危ない事とかなかったんですか?」
「無かったわ。まぁたまたま運が良かっただけよ」
「一番運が良かったのはルナと出会えたことっ。おかげで色んなことできたわ!」
「うわーもうそんなに距離が近くなってまあ」
「とんだ友達たらしね…」
「言い方!!」
「ホント仲良しな三人組ねっ。ねえねぇ、どうしてここまで来たの?」
「実はね…」
そういえばここまでの経緯を詳しく話してはいなかった、そのことに気づいて、すぐさまカバンを弄りながら説明を始める。
途中、証拠となる物品を出すのに手こずりながらも説明を終えて、件の青い羽を見せた。
「ふーんなるほど…私、この羽の持ち主見たことあるかも」
「ほんとに?」
「ええ。といっても、霧と雷に紛れて獲物を狩る姿しか見たことはないわ」
「ええーっ、よりによって肉食動物なの…?」
「ウルフさん、さっきの特徴で思い出したことは?」
「…それは、空から一方的に攻め立てた?」
「ん、そうねっ。私が見たのは変な色の生き物を撃ち落として、そのまま雷に乗って持ち去ったとこ」
「それはフレンズだったの?」
「はっきりとしたことは言えないわ。人型だったのは間違いないけれど」
「ただ、人にしては大きかったわ。子供なんて連れ攫えそうなぐらいっ」
「私が見たのはここに来る途中だから…アイスキャニオンから北のチホーで見たわ」
これ以上は、聞き出せる情報にも限界があるとウルフは判断した。
百回も聞くより、一回はその目で見た方が早いのだ。
その為に、羽の主を探し出すと言う決意は一層強くなっていた。
「…瑠奈。あなたに伝えることがある」
「誰がお金払うかってこと?それとも、旅のこと?」
「後者よ。少し長い旅になるかも」
無邪気に出していた笑顔が、ゆっくりと元の顔になって、ウェアウルフと向き合うように静止した。
自分の考えはどこか甘かったのだろう。今までの自分の希望的観測より、その声は重かった。
それだけ、友の視線は確かだったのだ。
* * *
その日の夜、自分たちの部屋に入るまでの間に考えを整理していた。
青い羽を手に入れようとしたモスマンの目的、その青い羽の主を探し出すのか否か。
親への報告も必須である以上、その返答次第では帰宅も視野に入れなければならない。
真剣に考える必要を考慮するうち、目的の部屋に足を踏み入れた。
(…ダメダメ、いい考え浮かんでこない)
一度、頭をほぐす必要がある。
そう判断して、他の皆に目を向け直していく。
「フフン、私を受け入れてくれたあなたたちの器に敬意を表するわっ」
「…人は多い方がいいもの…それに一人ぼっちじゃ危ないじゃない」
「どの組み合わせで寝るか決めませんとね」
「私は…一人でいいわ。身体が大きいもの…」
「じゃあ、この私をあっためてくださる?」
「それは…構わないけど…」
「瑠奈たちはいつものスタイルで寝ちゃおっか」
「ですね。そのほうが安心するでしょう」
「はー…それにしても、お部屋に入ったらただ寝るだけって勿体無い気がしない?」
「何言ってんの、寝るだけが部屋のイベントじゃないのよ!」
「あら、ルナは楽しみ方を知ってるみたいな言い草ね?」
「旅先でお泊まりと言ったら!お風呂でしょ、ご飯つまみながらテレビ見るでしょ」
「枕投げもあるけど、一番は女子会よ女子会!」
「ジョシカイ?お茶会みたいなもの?」
「そ!女の子同士で眠くなるまで語り明かすの!」
「楽しそう!」
「盛り上がるのも良いですけど、ちゃんと親御さんへの連絡も忘れないでくださいよ?」
「あっ!忘れるとこだった…!」
「ルナのパパママどんな人なのかしらっ。楽しみ〜」
「ちゃっかり同伴する気満々じゃないですか」
「人のこと言えないでしょトウゾクカモメ」
ソファで机のラッキービーストを囲み、電話先の声の主とともに俄に盛り上がる少女たち。
その盛り上がりを見守る傍ら、ふと開きっぱなしになったノートが目に写った。
(これは…ミナのものね)
盛り上がる三人に目をくばせた後、その中身を目視する。
目に写ったその内容は、三つ。
(…パパとママを見つけ出す)
(…人生を好きなように生きる)
(……”親友“を作る)
瑠奈が連れてきた少女ががどういうものを望んでいるのか、そこには描かれていた。
一見、普通の子供のように見えたあの少女には、言えないような過去や背景があるのかも知れない。
それを今追求する気にはなれなかった。
おそらくは永遠に、これからも。
あの笑顔を、壊してしまうと思えば尚更だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます