第2話 逃します ~ Komori will let you escape ~
「学生の本文は勉学であり、質実剛健な肉体に精神は宿る。しかし、勉学のスパイスとして恋愛をするのであればハメを外し、ハメなければ良いものとする」
校則の中にそんな文言が収められている、私立森林之木学園特別高等学校。
この学園に「特別」の文字が付けられているのには理由がある。
それは……
この学園の創設者、
結局、当時その恋は実らなかったが、妻・真珠枝が結婚後数年で早逝した事で後妻に入ったのが
学生当時、守蔵は
「中森副会長、この文章誤字脱字が激しいですわよ?これじゃ、会長に提出出来ませんわ」
「どれどれぇ?あーホントだッ!中森副かいちょおは、梓よりも勉強出来たのにどうしたのぉ?恋の悩み?恋の悩みで頭が悪くなっちゃったの?それなら梓が恋のお悩み相談乗ってあげよっか?」
「森園書記!アナタはいつもそう、ぬけぬけしゃーしゃーと割り込んで来ますわねッ。なんて節操がないのかしら?」
森園書記は生徒会きっての耳年増であり噂話には目が無いし、どこから仕入れて来たか分からない情報なども持っていたりする。
壁に耳あり障子にメアリー……いや、目ありと言うコトワザがあるが、森園書記の場合はもう壁というか建物全体が耳のようなモノと言える。噂話には「無い」目が建物全体に「有る」のだろう。よって、興味が乗るとどこにいても駆け付けてくるし、狭い生徒会室ならば尚更の事だった。
だからこそ、壁に耳あり壁が森園と言えるかもしれない。
「いえ、恋のお悩み相談はまたの機会にお願いするとします。それにその、こ、小森副会長、誤字脱字はすすす、すいません。ちょちょちょ、ちょっとお花を積んで頭を冷やしてきます」
ガララ
「ねぇねぇ、絶対アレ、中森副かいちょおって、小森副会長に気があるよね?」
「何をバカな事を仰ってるの?向こうがその気でも、こっちにはこれっぽっちもそんな気はありませんわッ」
「にしし。まぁ、そうだよね?だって、小森副会長は……」
「ね、ねぇ、そんなコトより森園書記。金曜日に木之下先生から聞いた内容の文字起こしは終わってますの?」
「あっ、そうだったそうだった。やらなきゃやらなきゃ、かいちょおに怒られちゃうっ」
今日は5月16日の月曜日。拠って今週の金曜日5月20日のセレモニーの後から一週間掛けて行われる予定の、この学園のメインイベントに向けて生徒会室の中は今日も騒がしかったのだった。
「森之木生徒会長、それで聞きたいコトってのは、来週から始まる例の件か?」
「はい、その事で幾つか確認がありまして、宜しいでしょうか?」
「まぁ、話せる内容なら話してやれるが、皆が聞いていてもいいのか?
「そうですね。それでは、森園さんには書記として木之下先生が仰った内容を記録してもらいます。中森くん、森園さんだけだと書き漏らしがあるかもしれないからサポートを頼むね」
「会長!わたくしには、何かありますの?」
「小森さんは木之下先生の話しを聞いて、自分なりに疑問や質問があったら纏めて欲しいかな。まぁ、その場で言ってくれても全然いいよ。大森くんも一緒にお願い出来る?」
「いや、森之木生徒会長……聞いていたか?
「まぁ、いいじゃないですか、木之下先生。確かにボクが聞きたいコトですけど、皆に聞かれて困るものじゃありませんし。生徒会の皆で情報共有はあって然るべきじゃないですか?」
「まぁ、それでキミが納得しているのなら構わないし、キミが損をする結果になっても恨まないでくれよ?」
「えぇ、勝負は正々堂々が森之木家の家訓ですから」
「そうか、それならいい。では、キミは何が聞きたいんだ?話してもらえるか?」
これが先週金曜日の放課後にあった遣り取りだ。その後、生徒会長である森之木から、自称美人教師の木之下に幾つかの「確認したい事」が投げられ、他の生徒会メンバーは森之木に頼まれた事を成し遂げるべく、必死にカリカリ音を立てていた。
途中で、副会長の小森
森之木生徒会長から木之下への確認内容の中には幾つか、森之木が損をするような内容が含まれおり、その確認がされた時に目の色が変わった者が生徒会メンバーの中にいたが、その事を森之木は知らなかった。
「それじゃあ、メインイベントの確認ってのは、これで終わりか?」
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