私立森林之木学園特別高等学校生徒会執行役員達の日常
酸化酸素 @skryth
第1話 逃さない ~ Don't let Morizono escape ~
「木を隠すなら森に隠せ」
校則の中にそんな文言が収められている、私立森林之木学園特別高等学校。
この学園に「特別」の文字が付けられているのには理由がある。
それは……
「ねぇ、か~いちょッ。来週から始まる例のアレ、どうするの?」
「なんだ、森園さん。そんなコトを気にしているの?」
「だって一年に一回起きるこの学園のメインイベントじゃない!それに、勝ち抜けば欲しいモノが手に入るんでしょ?」
「森園書記、会長がイヤがってるのではなくて?そもそも、欲しいモノは自分の力で手に入れるモノですわよッ」
「まぁまぁ、小森副会長。メインイベントで勝つコトも自分の力で手に入れた事になると思いますよ」
ここは森林之木学園高等学校生徒会室である。
会長、
副会長、小森
副会長、中森
書記、森園
会計、大森
以上この五名から成立する生徒会執行役員は、来週から始まる学園主催のメインイベントの話しで盛り上がっていた。
この森林之木学園(以下略)は、私立であり「特別」なのだ。生徒は全員、学園に勤める
そして、その推薦はある特殊な条件でのみ発行されるのだ。
――そうして集められた総勢540名の生徒のトップに君臨するのが、私立森林之木学園特別高等学校生徒会執行役員五名なのである。
「ねぇ、二年B組の木村さんの話しを聞きまして?」
「えぇ、二年C組の中村くんと付き合っているのでしょう」
「ねぇねぇ、知ってる?一年A組の森さんと、三年D組の林センパイって付き合ってるらしいわよ?」
メインイベントが開催される時期になると、この手の恋バナで学園全体が盛り上がって来る。そしてその点に関して学園側が、「不順異性交遊」だとか「恋愛禁止」だとかを言い出す事は無い。
従って、生徒会でその手の話題を振り撒きたいのは書記の森園である。副会長の小森は気になってはいるが森園書記が先に言い出してしまうので、真っ向から反対するし、あとの男子三名はその手の話しに実に
「ねぇ、か~いちょッ。付き合いたい女のコっていないの?」
「ぶふぉっ」
「森園書記!ななな、突然何を言い出すんですの!!かかか、会長が困ってらっしゃいますわッ!」
「ええぇ、小森副会長は気にならないんですかぁ?会長の心を射止めるかもしれない女のコの話しですよ?」
「そ、それはモチロンき、きっ、気になりませんわッ」
「あ、会長、この会計案なんですが、これで大丈夫でしょうか?」
「有り難う大森くん。後で目を通しておくよ。ところで森園さん、ボクのそんな話しを聞いても面白くなんてないでしょ?ボクは勉強だけが恋人だからね。もし、好みのタイプがあるとするならば、ボクより頭のいい人……かな」
「へぇ、そうなんですねぇ。良かったじゃないですか、小森副会長。小森副会長に、かいちょおは興味無いそうですよ?」
「そ、そんなコトは森園書紀に言われなくたっても分かってますわッ!それに貴女だって、会長に学力は敵わないのではなくて?」
「へっへ~ん。じ・つ・は・ッ。この前の学年選抜試験でかいちょおに勝ったモノがあるんです!ふっふっふ、この不肖森園梓、かいちょおに勝った女のコなんですよ!えっへん」
「森園さん、それってこの前の体育の試験の話しでしょ?体育の実技と合わせての試験なんですから、勝ったうちに入るんですか?」
「ちっちっちっ。中森副かいちょお、勝利は勝利です。運も実力の内なら、実技なんて実力の中の実力。実力オブ実力です。だからこそ、かいちょおに勝ったと言えるのです」
「はぁ、何バカなコト言ってるの?会長は頭がいい子って言ったんだよ?実技だけ良くて、筆記がそこそこな森園書記を会長が好きになるワケないじゃん」
「大森会計!!ぐぬぬ、言わせておけば痛いところを……」
「いいザマですわね、森園書記。これに懲りたら、会長に馴れ馴れしく近寄らないコトですわね」
「あはははは、みんなは仲がいいねぇ。生徒会はそうでなくっちゃ」
「「「「木之下先生」」」」
「木之下先生、わざわざご足労頂いて有り難う御座います」
盛り上がっている生徒会室にやって来たのは、生徒会顧問の木之下
だから、この学園にいる全員が今も26歳だと思っているし、数年前から26歳のままだって事も知っている。要するに永遠の26歳だ。
担当教科は数学で、熱が入ると見境なく色気を振り撒く事から男子生徒の情欲の的であり、女子生徒からは千差万別上から下まで様々なお悩み相談も、的確にアドバイスしてくれる事から羨望の眼差しを向けられている教師である。
「森之木生徒会長、それで聞きたいコトってのは、来週から始まる例の件か?」
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