第2話
「これで講義を終わります。出席カードに名前を書いて提出してくださいね。」
先生の声で我に帰ると、講義が終わっていた。カードに『筑波慎二』と書いて食堂へ向かおうと席を立った、そのとき。
「あの、つくしさん、ですよね……?」
一人の女性に声をかけられた。
「え。」
「よく配信見てるんです。」
驚いた。友達にも配信活動の話はしたことがないのに。
「ありがとうございます。」
しかし、別に隠しているわけではないので、礼だけ言っておく。
「私たちどこかで会ったことないですか?」
「へ?」
無いと思う。ブロンドの髪を一つにまとめて、四角いフレームの黒縁メガネをかけた女性。人の顔を覚えるのは得意ではないから、もしかしたら忘れているだけかもしれないけど。
すると彼女は特徴的なメガネを外して、どうですかと言わんばかりの表情を浮かべる。
少し屈んで顔をまじまじとみる。ぱっちりとした二重瞼、長いまつ毛、マシュマロみたいな肌をしている。
「……何か思い出しました?」
「あ、いや、すみません、ちょっと覚えてないですね。」
「いえいえ、こちらこそ急に話しかけてごめんなさい! 人違いかもしれませんし、これで失礼します。」
彼女は勢いよく体を二つに折って束ねた髪を激しく揺らしながら去ってしまった。
「かわいかったな。」
もう少し話したかった。残念な気持ちを抱えて一人食堂に向かった。
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