第1話

 ——常夜灯とデスクトップが光る部屋で、キャスターつきの椅子に座りながら1人話している。

 机にはエナジードリンクの空き缶と、スピーカーやマイクなどの器材が所狭しと並んでいる。埋もれてしまいそうな小さな置き時計の短針は十二を指している。

「じゃあそろそろ終わろうかなー。今日もみんなありがとう。お疲れ様でした。おやすみなさーい。」

 モニターに表示されたミュートボタンを押す。配信を終了して、ヘッドフォンを外す。

「今日は同接五〇〇人。まあまあこんなもんか。スパチャも前より増えてるし。」

 パソコンのタブを切り替えて同時接続数と表示された画面には五〇八人と四二七〇円の数字があった。

「でも八画面は超えないかー。」

 八画面配信、動画サイトのおすすめで紹介されたのか、これまで活動してきて一番コメントが多かった。もう少しでTwitterのトレンドも狙えたかもしれない。

 ここまでくるのにもう既に三年ほど費やしているが、リスナーが一桁だった頃に比べたら、安定した再生回数にもなった。

 三年前、大学に進学し、一人暮らしをするとともに、お小遣い稼ぎのつもりで、『つくし』という名前で配信を始めた。ただ、楽に稼げるわけもなく、機材を買うのに十数万かかり、もはや取り戻すために続けているようだった。それと——

「つくしのお話もっと聞きたいな。」

 ぼんやりとした幼い頃の記憶。

 わかってる。連絡先も知らないあいつに届けるためにも、俺は毎日配信をする。本心はこちらだ。

「さて、明日の内容はどうしようかな。」

 大きく伸びをしたあとにため息をつく。配信者も楽じゃないな。

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